この記事をまとめると
■アメリカを代表する商用バンとしてフルサイズバンがある■いまや生粋のアメリカ製フルサイズバンはシボレー・エクスプレスのみとなった
■古き良きアメリカ車の流れを残すエクスプレスにはできる限り長いラインアップを望む
アメリカらしさを感じさせてくれるフルサイズバン
日本を代表するキャブオーバータイプとなる商用バンといえば、トヨタ・ハイエースといえるだろう。日本だけでなく、新興国を中心に日本から中古車が輸出されるなどしてまで世界でも大活躍している。以前中東のドバイを訪れたとき、日本から仕入れた右ハンドルでATのハイエースバンの左ンドル化とMT化を行う工場を見学する機会に恵まれた。
日本を代表する商用バンがハイエースならば、アメリカを代表するのはシボレー・エクスプレスといえるだろう。
かつてのシボレー・アストロや、いまもアメリカ国内で販売されているクライスラー・パシフィカといったアメリカンミニバンが、あれだけボディサイズが大きいのに“ミニバン”と呼ばれることに違和感を覚えた人もいるだろうが、現行シボレー・エクスプレスで全長が5700~6200mmもある、アメリカンフルサイズバンに対してサイズが小さいので、“ミニバン”と呼ばれているとなれば納得していただけるだろう。

ハイエースよりはるかに大きなボディサイズに大排気量V8エンジンを搭載するのが、フルサイズミニバンの基本。かつてはエクスプレス以外にも、フォード・エコノラインやダッジ・ラムバンがあったのだが、エコノラインはバンが2014年に、ラムバンは2003年に販売を終了している。
その後、欧州で欧州フォードが展開していたLCV(ライト・コマーシャル・ビークル)となる、“トランジット”がエコノラインの後継モデルとしてアメリカ国内でもデビューした。

ラムバンの後継としては、しばらくメルセデスベンツブランドのLCVとなるスプリンターのOEM(相手先ブランド供給)車として、“ダッジ・スプリンター”がラインアップされたが、その後2013年より、フィアットのLCVとなるデュカトのOEMとなる“ラム・プロマスター”がラインアップされている。

筆者としては、欧州LCVに入れかわることにはじめは強く抵抗をしめしていたのだが、そのうちアメリカの風景に溶け込んでくるようになると受け入れるようになった。
シボレー・エクスプレスだけが最後のリアルアメリカンモデル
筆者がアメリカンフルサイズバンに初めて出会ったのは、いまから35年ほど前に初めて学生旅行でアメリカを訪れた時である。東海岸のボルチモアからマイアミをめざしたのだが、手違いからマイアミ近くのフォートローダーデールの空港に降り立った。どうやってマイアミに行けばいいかわからないでいると、近くにいたアフリカ系アメリカ人のお兄さんが声をかけてきたので事情を話すと、マイアミへ向かうフォード・エコノラインのシャトルバスに乗せてくれたのである。

2列目シートの真ん中に座ると、目の前に樹脂製と記憶しているが、カバーが施され車内にはみ出たV8エンジンがあり、驚かされたのを覚えている。
その後は、アメリカのオートショー取材へ出かけ、フルサイズバンが展示してあったら、仕事をひととおり終えたあとじっくり実車に触って楽しむのが至福の時間となっていた。

筆者はいまでもアメリカンフルサイズバンとしてラインアップする、シボレー・エクスプレスを“最後のリアルアメリカンモデル”と表現している。かつてはフルサイズピックアップトラック、そしてそれをベースとするトラックシャシーベースのSUVもリアルアメリカンモデルとしてきたが、近年進化の度合いが激しく少々その印象が薄れているように思えてならない。
そもそも現行エクスプレスは2003年にデビューしているので30年ほどそのスタイルはほぼ変えていない。歴代のフルサイズバンに比べればエンジンのスモール化も進んだので、エンジンの車内へのはみだしはおとなしくなったが、標準では4.3リッターV6になるものの、6.6リッターV8がいまでもラインアップされている。

そして昔のシボレー車らしい握りの少々細いステアリングに、コラムシフトなどななど、インテリアも古き良きシボレー車らしい雰囲気に溢れている。とはいうものの、USBポートやふたつの120V電源、そしてWi-Fiなど時流に合わせた装備もしっかり採用している。
フォード・トランジットでは、BEV(バッテリー電気自動車)仕様までラインナップされるようになってきている。筆者はいつエクスプレスが販売終了になるかハラハラしているのだが、毎年イヤーモデルが更新されるたびにホッとしている。

使い勝手に問題がないから存続しているのだろうが、古き良きアメリカ車の流れを残しているエクスプレスには、できるだけ長くラインアップを続けて欲しいと思っている。