この記事をまとめると
■EVのトップランナーであるテスラだが、その事業はEVのみにとどまらない■有名なところでは定置型蓄電池「パワーウォール」がある
■EV・定置型蓄電池・太陽光パネルなどの自社開発電力網で電力領域の統制を目指す
EVだけにとどまらないテスラの電力事業
テスラといえば、「モデル3」や「モデルY」など、EV(電気自動車)のメーカーとして知られている。
一方で、EV以外のビジネスについて、日本ではまだまだ認知度が低いと言えるだろう。
そうしたビジネスのなかに、定置型蓄電池「パワーウォール」がある。
定置型蓄電池は、自宅や事業所でのバックアップ電源として日本でも徐々に普及が進んできている商品だ。
とくに、太陽光パネルを装着して発電した電力を定置型蓄電池にためたり、また電力会社に売電する仕組みを利用する家庭が、2010年代から増えた。
これは、国による「再生可能エネルギーの固定価格買取り制度(フィード・イン・タリフ:FIT)」による影響が大きい。
また、FITの契約期間が終わった、いわゆる「卒FIT」の対象家庭では、最新型の定置型蓄電池を購入したり、または軽EVの日産「サクラ」や三菱「eKクロスEV」を購入するケースもある。電池容量で比較すると、各種購入補助金を使って軽EVを購入したほうが、定置型蓄電池の購入より割安の場合もある、という解釈もできるからだ。

こうした、EVと定置用蓄電池、さらには太陽光パネルや風力発電などの再生可能エネルギーの発電装置は本来、ワンパッケージでの販売をすることが、エネルギーマネージメントの観点からはベータチョイスだと言えるだろう。
直営販売方式のテスラだから電力ビジネスを推進できる
ただし、既存の自動車メーカーの場合、自動車メーカーは製造と卸売り業であり、その先は地域の販売と修理を行う企業が担っているため、自動車メーカーとしては、販売の商圏、さらに電気工事事業を含めた事業展開を積極的に進めることが難しい。
一方、テスラの場合、メーカーとしてはEV専業であるため、定置型蓄電池や太陽光パネルの事業をEVと一体化させるビジネスモデルを描きやすい。販売についても、基本的にテスラは直営販売店方式を持つため、テスラ本体が中心となって電力系ビジネスを推進することもできるという組織構造にある。

その上で、テスラが掲げる理想形は、テスラ製のEV、定置型蓄電池、そして太陽光パネルなどの発電と蓄電を、社会全体で総括的に管理・制御・運用するVPP(バーチャル・パワー・プラント)だ。従来のように、火力発電や原子力発電の発電所からの配電だけに頼るのではなく、自社開発する電力網によって電力の領域をコントロールしようという考え方である。

直近では、北米市場での急速充電の規格について、テスラの規格が事実上の標準化であるデファクトスタンダードとなってきており、自動車メーカー各社も対応する構えだ。

果てして、VPPの規格についても、テスラがデファクトスタンダードとなる時代は来るのだろうか?