この記事をまとめると
■クルマの世界には「信者」と呼べるほどの熱烈なファンをもつモデルがある



■それらのファンは特定の駆動方式やエンジンじゃなければ「クルマにあらず」レベルの妄信っぷり



■とくに濃い信者をもつクルマを紹介する



妄信的にハマってしまう魅力がある

政教分離などというのは歴史の教科書に出てくるものとばかり思っていましたが、最近は日本でも頻繁に使われており、ややこしい世の中だとお嘆きの方も少なくないでしょう。



が、ことクルマ好きに関して言えば、車教分離は絶対ムリ! なにしろ、好きなクルマに乗るというのは、ちょっとした宗教信者にも等しく、エンスージアスト=狂信者などという言葉すらあるほど。お布施よろしく壺こそ買わないものの、同じような値段でショック4本交換したとか、カーボンやらアルミ削り出しなんてパーツは無条件で購入とか、やってることはあまり変わりません。

また、世の中にさまざまな宗教があるように、クルマの世界にもいろんな教祖を見つけたので面白半分でご紹介しましょう。



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FR教:AE86 vs FC3S

とにもかくにも後輪駆動でなければ、朝も来なけりゃ夜にもならないって信者。クルマ好きのまわりには必ずやひとりやふたりはいるものです。教祖と呼べるクルマは数々あって、あたかも仏教が真言宗やら曹洞宗といったバリエーションを生んだように、AE86宗やFC宗などさまざまな宗派がありそうです。とりわけ86についてはAEに加えてZNやBRZといった新世代の偶像(走るから純然とした象徴ではありませんね)崇拝者も増加中。



エンブレムを拝むほどの熱愛っぷり! クルマを「神と崇める」レベルの妄信的ファンをもつモデルたち
トヨタ・スプリンタートレノ(AE86)とトヨタ86(ZN6)とスバルBRZ(ZC6)の3台



と思いきや、FCの場合は次世代のFD信者と仲がいいものですから、2車種あわせると信者数も相当な数になるかと。



エンブレムを拝むほどの熱愛っぷり! クルマを「神と崇める」レベルの妄信的ファンをもつモデルたち
マツダRX-7(FC&FD)のフロント



いずれにしろ、FR教の信者たちはビーガンよろしく、かたくなにFRにこだわるあまり、ファミリーカーの選択肢が極端に狭くなるという環境に。ただ、教えのひとつにある「ドリフト」のおかげか、危機回避の腕前は抜群。これはこれで、ご利益と呼べるのではないでしょうか。



R教:GT-R &タイプR

Rの文字でひとくくりにすると、双方から怒られそうですが、信者でない者からしたらどっちもどっちな印象。ならば、一文字で同じ宗派でいいのではないかと(笑)。どちらもニュルブルクリンクのタイムを金科玉条のごとく大切にして、念仏かのようにスペックを唱えてる熱心な信者といえるわけですからね。信者の数についてもタメを張れるはずで、日産は単一車種のシリーズながらルーツは1960年代まで遡れるのに対し、ホンダはシビック、インテグラ、そしてNSXとバリエーションも豊富にあるわけです。



エンブレムを拝むほどの熱愛っぷり! クルマを「神と崇める」レベルの妄信的ファンをもつモデルたち
ホンダのタイプR(EK9、DC2、NA1)の3台



こうなってくると、同じキリスト教の中でもカトリックとプロテスタントの間で起こった宗教戦争(ユグノー戦争)かのような対立を想像しがち。

ですが、実際に格式レースでGT-R対タイプRがガチンコで対戦したのはニュルブルクリンク24時間耐久くらいで、しかも双方ともに公式にはプライベーターだったので戦争と呼ぶには大げさです。



むしろ、R教は日本が誇る2大スポーツカーを信じているわけですから、世界から見たら仏教みたいなメジャー中のメジャーといっても過言ではなさそうです。



エンブレムを拝むほどの熱愛っぷり! クルマを「神と崇める」レベルの妄信的ファンをもつモデルたち
日産GT-R(24年モデル)とホンダ・シビックタイプR(FL5)のフロント



海外に総本山のあるグローバルな宗派も!

911教:ポルシェ911
これまた、クルマ好きのまわりには大勢いそうです。なにを隠そう筆者も一時期かぶれていまして、カレラやヴァイザッハ、あるいはニカシルコーティングなんて「念仏」を耳にすると「ありがたや、ありがたや」と目じりを下げていたものです。



エンブレムを拝むほどの熱愛っぷり! クルマを「神と崇める」レベルの妄信的ファンをもつモデルたち
ポルシェ911カレラ4S(992)のリヤ



ですが、911教ほど宗派の枝分かれが複雑で、またそれぞれが反目しあっているかのようなところはありません。たとえば、911教の原点にして多数派を占めているのが「空冷派」とすると、この中でも「NA宗」と「ターボ宗」に分かれるほか、「タルガ宗」や「全輪駆動宗」なんてややこしい信者もいるという始末。



エンブレムを拝むほどの熱愛っぷり! クルマを「神と崇める」レベルの妄信的ファンをもつモデルたち
ポルシェ911ターボ(930)と911タルガのエンブレム



お察しのとおり「水冷派」というのも「インターミディエイトシャフトの乱」こそあれ、着実に勢力を増しており、「空冷派」を原理主義者などと呼び、隙あらば駆逐せんばかりの構え。しかも、「空冷派」と「水冷派」は、いずれも「RS分派」や「GT分派」といった過激分子が潜んでおり、なかでも「73RS党」などは、911教からの分離独立すら狙っているという噂です(1973年の911RSと呼ばれているクルマ、じつは911が付かず正式車名はRSとされています)。



エンブレムを拝むほどの熱愛っぷり! クルマを「神と崇める」レベルの妄信的ファンをもつモデルたち
ポルシェ911カレラRS(930)の2台並び



しかも、911教は滅多なことでは抜けられないことでも有名です。自分では抜けたと思っていても、なにかの拍子に「そういうの911じゃありえないから」とか「剛性感が911には遠く及ばないね」などと口をついてしまい、周囲は「あ、まだ洗脳が解けてないわ」と密かな憐れみすら感じているわけです(笑)。



ハイドロ教:シトロエン

もともとシトロエンのハイドロニューマチックという独自のサスペンションを崇拝していたはずですが、これまた分派なのか新派なのか旧いアメ車に大型コンプレッサーを載せて、ピョンピョン跳ねたり、妙な車体姿勢で走らせたりする宗派も生まれています。



エンブレムを拝むほどの熱愛っぷり! クルマを「神と崇める」レベルの妄信的ファンをもつモデルたち
ローライダーのイメージ写真



※写真はイメージ



また、ハイドロ教の原典は乗り心地の良さにあるのですが、この教義を追求するあまり、他のエアサスやマグネティックライドシステムへの敵愾心とか不信感はまさに狂信者のそれに等しいかと。



例えば、レンジローバーのハイエンドモデルに搭載されたアクティブ・エアサスペンションは希代の出来栄えかと思うのですが、サラッと「完全に同調のとれたハイドロニューマチックと変わらないね」といった御託を並べ始める始末。



エンブレムを拝むほどの熱愛っぷり! クルマを「神と崇める」レベルの妄信的ファンをもつモデルたち
ランドローバー・レンジローバースポーツのアクティブ・エアサスペンション



それでいて、インパラあたりが飛んだり跳ねたりするのを見て「シトロエンがハイドロ作ってなかったら、ああいうやつらも生まれなかったのだ」などと上からなのか、生温かいのかわからない視線。



ブードゥー教やゾロアスター教など、人々の無知から迫害を受けた宗教もありますが、ハイドロ教は無知に加え、痛烈なほどの唯我独尊でもって迫害されてしまいそう。もっとも、ハイドロ・シトロエン原理主義者はすでに絶滅の危機に瀕していますから、キリスト教のアーミッシュかのように一般社会からは温かく見守られるのかもしれません(笑)。



エンブレムを拝むほどの熱愛っぷり! クルマを「神と崇める」レベルの妄信的ファンをもつモデルたち
シトロエンGSのエクステリア

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