この記事をまとめると
■クルマはフルモデルチェンジを行うとボディサイズが大きくなるモデルが多い



■買い換えるユーザーはボディサイズを大きくしたがる傾向にあるのでそれに応えている



■ボディサイズが大きくなって空いたポジションに新型車を投入することも多い



フルモデルチェンジでボディサイズが大きくなる理由

フルモデルチェンジを行って、ボディがコンパクトになることはほとんどない。大半の車種が従来型を踏襲するか、拡大する。そしてボディを拡大すると、従来型のサイズが空いてしまうから、そこに同等の大きさの新型車を投入するわけだ。



トヨタであれば、1994年に発売された初代RAV4は、5ナンバーサイズに収まるコンパクトSUVだった。それが2000年に登場した2代目で3ナンバー車になり、2005年の3代目では全幅が1800mmを超えた。



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この後、2016年にはC-HRが登場して、その後はヤリスクロスやカローラクロスといったコンパクトなSUVが加わっている。



ホンダでは、シビックが5ナンバーサイズのコンパクトカーとして長期間にわたり高い人気を得ていた。それが2000年に発売された7代目で3ドアハッチバックが廃止され、2005年の8代目では、国内では3ナンバーサイズのセダンのみになった。



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ホンダ8代目シビック



その一方で2001年には初代フィットが発売されている。フィットは、かつてのシビックの位置に設定された。このフィットが売れ行きを伸ばす一方で、シビックは人気を下げている。この影響でシビックは、2010年に国内販売を一度終了させ、改めて2017年に復活した。それでも以前の売れ行きに戻っていない。



ユーザーは乗り替えるときに「上級移行」を望むことが多い

このようなサイズアップとその穴を埋める新型車の投入は、輸入車でも行われてきた。わかりやすいのはフォルクスワーゲンだ。

ゴルフを1974年(日本への輸入開始は1975年)に発売して人気を得たが、その後にサイズアップして、1997年(輸入開始は1998年)の4代目からは全幅が1700mmを超えて3ナンバー専用車になっている。



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フォルクスワーゲン歴代ゴルフ



そこで1996年には、日本でも5ナンバーサイズのポロを本格的に発売した。その直後にゴルフが4代目になって3ナンバーサイズに拡大されると、ポロの売れ行きも伸びた。



以上のようにボディを拡大して、コンパクトな車種を追加する理由をメーカーの開発者に尋ねると、以下のように返答された。



「お客様が新車に乗り替える場合、以前はさらに大きなボディを希望されることが多かった。そのニーズに合わせて、フルモデルチェンジするときにはボディを拡大していた。その結果、以前のサイズが空席になるから、コンパクトな新型車を投入して車種を充実させた」。



最近はボディサイズが限界に近付き、フルモデルチェンジによる拡大は減る傾向にあるが、マツダの開発者は以下のように述べた。



「CX-5は好評だが、従来型から新車に乗り替えるとき、さらに上級の車種を望むお客様もいる。このときにBMWなどの輸入車を購入するケースが増えたため、上級SUVとしてCX-60を用意した事情もある」。



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マツダCX-60



新車に乗り替えるときにボディを拡大するユーザーは減っても、上級移行が求められることは多い。CX-60はこのニーズに応えた。

CX-60の全長はCX-5に比べて165mm伸びたが、車内の広さはほぼ同じで、後輪駆動の採用により最小回転半径は0.1m小さい5.4mになった。つまり、運転のしやすさはCX-5に近いが(それでも全幅の1890mmは辛い)、上級移行を楽しめる。



これは今日的な車種追加だが、CX-5は前輪駆動、CX-60は上級の後輪駆動というような商品の差別化は容易ではない。中途半端な商品を開発すると、従来車種と追加車種が競争して需要を食い合ってしまう。いまのメーカーは難しい判断を迫られている。

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