この記事をまとめると
■ミニバンのシートアレンジによる大容量な荷室スペースは魅力的■3列目席を畳んでもシートの大きさ分は荷室スペースに影響する
■国産車ではシートの脱着を前提で作られたクルマはないが輸入車には存在する
シートアレンジよりも外したほうが荷室の使い勝手はいい
空前のアウトドアブームの今、クルマの使われ方も大きく変わっている。そう、アウトドア派にとっては、より荷物をたっぷり積めるクルマが求められているのだ。そこで注目されるのが、アウトドア=SUVという概念の先にある、アウトドア=ミニバンである。
つまり、3列目席を格納した、SUVに勝る大容量で高さのあるラゲッジルームが重宝される。が、しかし、大容量ミニバンであるボックス型ミニバンのほとんどの3列目席は左右跳ね上げ式格納であり、幅方向が制限され、荷物の積載能力としては効率的とは言えない。
ステップワゴンやオデッセイのような3列目席床下収納式は、3列目席格納時のラゲッジルームの容量は稼げるものの、転がりやすいものの収納や汚れものの一時収納に便利な床下収納がないのが難点。

では、いっそ、ミニバンの3列目席を取り外してしまえばいいじゃん…と思うかも知れないが、そう簡単な話ではない。もし、7人乗りミニバン(2-2-3席)の3列目席を外してしまうと4人乗りになってしまい、乗車人数が変わるため、車検は通らない。どうしても外しっぱなしにしてラゲッジルームを拡大したいというなら、使用者は使用の本拠の位置を管轄する運輸支局などに構造変更後のクルマを提示して構造等変更検査を受けなければならず、つまり「構造変更届」の手続きを行わなければならないのだ。やっかいなのは、今度のドライブでは7人乗るから、3列目席を取り付けて元に戻してしまおう……とはいかないこと。構造変更後の乗車定員は4人だから、7人乗ると違反になってしまうのである。

よって、とくに車検のある国産車では、シートを簡単に取り外せるクルマは見当たらないということになる。もっと言えば、日本の住環境では、外したシートの置き場に困るのも、脱着式シートが市民権を得られない理由かも知れない。
ホンダ・ラグレイトやメルセデス・ベンツVクラスはシートが外せる
が、ちょっと待てよ、かつてあったホンダのミニバン、ラグレイトは3列目席ではなく、2列目席がデタッチャブルシートと呼ばれる脱着可能なシートとなっていた。
①リクライニングレバーを引き、シートバックを前に倒す。
②シート脚部外側下のロックを解除してシート後ろ側を浮かせ、シート前側のツメをフックから外す。
③そのまま後ろにスライドさせ、シートを外す。
という手順で2列目席が外れ(かなり重いが)、さらに3列目席を床下収納すれば、1列目席だけの、まるで商用ワンボックスに匹敵する大きなラゲッジスペースが出現するというわけだ。そんなことができたのは、ラグレイトがホンダ・オブ・アメリカのカナダ製ミニバン、つまり日本とは車検制度が異なる海外からの逆輸入車だったからだろう。

よって、現在でも、シートが外せるミニバンは、輸入車に限って存在する。たとえば、超大容量ラゲッジルームの創出という点では、メルセデスベンツVクラスだ。何しろ豪華な2/3列目席をそっくり取り外すことができ、引っ越しができるほどのラゲッジルームが出現させられるのだ。もっとも、豪華なシートだけに1脚の重量はかなりあり、一人で運ぶのは難儀。もちろん、置いておく場所にもそれなりのスペースが必要になる。

家族と大きな荷物を詰め込んで遠路、バケイションに出かけるのが好きなアメリカ人向けにも、シートが取り外せるミニバンがあった。それがクライスラー・ボイジャーで、セパレートシートの2列目席とベンチシートの3列目席を取り外すことができ、さまざまなシートバリエーション、室内空間のアレンジが可能だった。

ラグレイト、ボイジャーはもはや新車で手に入れることはできない。

どちらも3列目席を簡単に取り外すことができ、その際のラゲッジ容量は最大2693リットル、最大奥行は約2200mmに達するほど。3列目席を取り外すことで大容量のラゲッジルームが手に入り、なおかつオシャレで走りが良く、扱いやすさ、使い勝手に優れる選択としては、この2台(ロング)が現在の現実的かつほぼ唯一の選択となるだろう。独創的なデザインで選ぶならベルランゴ。クロスオーバーテイストで選ぶならリフターで、こちらのほうがアウトドアに一段と似合うはずである。
