この記事をまとめると
■9月初旬にドイツ・ミュンヘンでIAA2023が開催されていた■展示内容の多くはBEVやNEVとなっており、日本車メーカーは出展しなかった
■新興国では中国製BEVが存在感を増しており普及率も年々上がっている
IAA2023では日本車メーカーの出展なし!?
9月初旬にドイツ・ミュンヘンでIAA2023(国際モーターショー2023/通称ミュンヘンショー/奇数年の隔年開催)が開催された。2019年までフランクフルトで開催されていた、それまでの通称「フランクフルトショー」から、会場をミュンヘンに移し2021年から開催されているが、展示内容はBEV(バッテリー電気自動車)を中心としたNEV(新エネルギー車)の展示に的を絞ったものとなっている。
2021年に比べると少しはフランクフルトショーのころに展示内容が戻っているとも聞くが、相変わらず主役はNEVなのは変わらない。
そもそも日本車は欧州市場を苦手としており、韓国ヒョンデや起亜のほうが存在感を見せていた。そんななか、2015年にVW(フォルクスワーゲン)によるディーゼルゲート事件が発覚すると、欧州市場でのディーゼル熱は冷め、トヨタを中心とした日本メーカーの優れたHEV(ハイブリッド車)が注目され、いまに至っている。

とはいえ、日本メーカーはNEVを苦手としており、理由はざまざまあるだろうが、IAA2023にも出展することはなかったようである。
日本ではよく「BEVはビジネスとして成り立っているのか」という話が出てくる。単純にBEVだけの販売による収支を見れば成り立っているとはいえないだろう。日本では輸入ブランドのBEVが多数ラインアップされているが、その多くは在庫がダブつき気味のように見えるし、これは世界的傾向のようにも見える。そして、ICE(内燃機関)車に比べれば価格が割高で生産コストもかかるので、仮に販売できても利益自体はICE車ほど期待することはできないようだ。

それでも欧州や中国メーカーが積極的にラインアップを増やす背景には、ICE車では日本メーカーの優秀なハイブリッドユニットや優れた燃費性能と環境性能で技術的に対抗することできないと感じているからにほかならない。そこでBEVで出遅れている日本メーカーをなんとかして排除し、次世代で覇権を握ろうと動いていると見る向きが大きい。
欧州では「EV=お金持ちのステータスシンボル」的なイメージ
アメリカのなかでも環境問題に積極的なカリフォルニア州を走るBEVは圧倒的にテスラ車が多い。アメリカのメーカーであることや、独自の短時間充電などの理由もあるが、結局は現時点での選択肢はテスラしかないともいえるだろう。

欧州メーカーもBEVに積極的とはいうものの、ラインアップしているのは高級ブランドばかりが目立つ。つまり、いわゆる西側諸国では、BEVは金持ちのステータスシンボル的なイメージで売れているように見える。
しかし、アンタッチャブルに近かった欧州での大衆ブランドクラスのBEVとして、中国メーカーが欧州市場での販売を積極的に展開してきて大騒ぎになっているのはすでに多数報道されている。
一方の新興国市場では“テスラ”の存在感はそもそも薄い。代わって目立っているのは韓国や中国のメーカーとなる。つまり、新車自体まだまだ高嶺の花に近いのだが、それでもアジア系メーカー主導での大衆ブランドBEVが普及を後押ししているのである。欧州では地球環境問題など漠然とした理由でBEVが普及しているが、新興国では深刻な大気汚染と原油輸入に使う外貨を抑えたいという現実的な狙いで、BEVに対し各国政府が注目しているようだ。
もちろんBEV生産国としての覇権も握りたいようだが、同じように大気汚染や原油輸入という側面でBEVを普及させてきた中国と新興国のロジックが近いし、中国アレルギーも少ないので、より普及が目立っているようである。

また、BEV単独でのビジネスという視点ではなく、「BEVもありますよ」として、それを苦手とする日本メーカーより先進性をアピールしようとしている側面もあるようだ。事実、インドネシアではその効果が出ているようで、首都ジャカルタ都市圏ではここのところヒョンデ車がよく売れるようになっている。中国メーカーもBEV一辺倒ではなくHEVやガソリンエンジン車もラインアップしている。

「BEVに将来はない」「BEVが次世代ではない」というのは正論かもしれない。