この記事をまとめると
■ロータスのCEOだったダニー・バハール氏が設立した「アレス・デザイン・モデナ」



■既存モデルを再解釈して新たなモデルとして提案する手腕に優れている



■「アレス・デザイン・モデナ」はデトマソ・パンテーラをモチーフにしたプロゲット・ウーノで一躍有名となった



フェラーリを去りロータスを解雇された男のスーパーカー

2014年、イタリアン・スーパースポーツの聖地ともいえるモデナの地に、新しいコーチビルダーが誕生した。アレス・デザイン・モデナ社(以下アレス・デザイン)と呼ばれ、古代ギリシャの神が使用したとされるヘルメットをモチーフとしたエンブレムを掲げるこの新興勢力を率いるのは、ダニー・バハール氏。



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記憶のどこかにその名前を憶えている人もきっと多いだろう。

かつてフェラーリからロータスへと移籍。そのリーダーとして一度に5台ものコンセプトカーを発表してみせるなど、きわめて積極的な経営戦略で世界を驚かせたものの、その後さまざまな意見の相違から同社を去ることを強いられた氏だが、世界の富裕層により魅力的なスポーツカーやラグジュアリーカーを提供したいという熱意は変わらず、このアレス・デザインを自ら設立したのが誕生までの背景だ。



ちなみに創業時の従業員はわずかに5名程度だったというが、現在ではすでにその数は100名を大きく超えるまでに至っている。



アレス・デザインの仕事は、ベース車から独自のカスタマイズを行うことが中心だ。つまり、それは最新の、あるいは比較的新しいメカニズムはそのままに、かつてイタリアで隆盛を誇ったカロッツェリアがそうであったように、独自のデザインによるボディやインテリアを作り出していくこと。



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アレスS1のサイドビュー



そうすることでまったく白紙の状態からアレス・デザイン・ブランドのモデルを作り上げるよりも容易に、認証などの問題をクリアすることが可能になるという。



これはバハール氏がロータス時代に、さらに時間をさかのぼればフェラーリに在職していた時代に直面したもっとも面倒でコストのかさむ作業であり、それは当然の結果としてカスタマーが支払う価格へと反映されることになる。実際に、これまでアレス・デザインから発表されたモデルを見ても、それらはどれも魅力的なデザインを実現したものばかりだ。



パンテーラと250GTOを再解釈した新提案で大バズり

たとえば、かつてベントレーの4ドアサルーンの頂点に君臨したミュルザンヌをベースに製作された2ドアモデル、「ブルックランズ2」には、オリジナルのシートアレンジとホイールベースを生かしたまま流麗なクーペデザインが与えられている。



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アレス・デザイン・モデナ社の「ブルックランズ2」のフロントスタイリング



メルセデス・ベンツのG63がベースとなる「デザインXレイド」は、ボディ素材をカーボンファイバーへと改めたことで車重を200kgも低減。



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アレス・デザイン・モデナ社の「デザインXレイド」のフロントスタイリング



また、そのディテールで独自のデザインを採用したことなどで、より都会的な雰囲気を醸し出すSUVへとその姿を変貌させているのが分かる。



ランドローバーのディフェンダーは、イギリスのコヴェントリーに本社がある、JEモーターワークスとのジョイントビジネス。

アレス・デザインではおもに内外装のモディファイが行われ、エンジンなどメカニカルなパートはJEデザインがそのチューニングを担当する仕組みで50台以上が販売された。



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アレス・デザイン・モデナ社のランドローバー・ディフェンダーのカスタムモデルのフロントスタイリング



一方でアレス・デザインは、クラシックモデルの復刻にも積極的な取り組みを見せる。もちろんそれは完全なレプリカ、いわゆるコピーではなく、同社がそれを現代流に解釈したパートを持つ、いわばレトロフィット的なモデル。



これまでにマセラティの1950年代風スパイダーを最新のメカニズムで再解釈してみせた「プロジェクトWami」を始め、フェラーリの「412」やコルベット「C2」など、さまざまなモデルをリリースしてきたが、さらに大きな話題を呼んだのは、デ・トマソ・パンテーラと、フェラーリ250GTOのいずれもレトロフィットモデルだった。



「プロジェクト・パンサー」とネーミングされた前者は、ランボルギーニ・ウラカンのメカニズムを流用したもの。



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アレス・デザイン・モデナ社の「プロジェクト・パンサー」のフロントスタイリング



また後者は、フェラーリ812GTSがベースとなるものの、いずれもそのスタイルはマニアの目にも十分に評価される美しさと刺激を兼ね備えたもので、発表時の話題性は大きく、さらに250GTOではフェラーリから提訴されるなど、そのデビューまでにはまだまだ超えなければならない壁が残っている。バハール氏によれば、それらはすでに企画の段階から想定済みのことだというのだが……。



創立からそろそろ10年という節目を迎えるアレス・デザイン。その存在はすでに世界の富裕層には十分に知られる存在となっているようだ。

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