この記事をまとめると
■環境省は「エコドライブ10のすすめ」をまとめている



■そのなかの「ふんわりアクセル『eスタート』」は渋滞を招くと賛否両論ある



■正しく理解すれば総合的判断でも有効な策であるといえる



ふんわりアクセルにはメリットがないとの論調もある

今年の夏には多くの方が「地球温暖化」を実感したのではないでしょうか。地球規模での気候変動について特定の時期の気温だけで判断するのはミスリードという見方もありますが、カーボンニュートラルを目指すべしというコンセンサスが強くなったといえそうです。



そのため、ハイブリッドを含めたエンジン車に乗っているドライバーは、CO2排出量を減らすためのエコドライブを意識するようになったのでは? 同時に高騰するガソリン価格に対する自衛手段として、省燃費運転が必須となっているのも昨今の状況です。



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そうした「エコドライブ」について、環境省では『10のすすめ』を整理しています。2020年に改定された最新版の内容は次のようになっています。



エコドライブ10のすすめ
●自分の燃費を把握しよう



●ふんわりアクセル「eスタート」



●車間距離にゆとりをもって、加速・減速の少ない運転



●減速時は早めにアクセルを離そう



●エアコンの使用は適切に



●ムダなアイドリングはやめよう



●渋滞を避け、余裕をもって出発しよう



●タイヤの空気圧から始める点検・整備



●不要な荷物はおろそう



●走行の妨げとなる駐車はやめよう



体重を測らないダイエットはあり得ないように、省燃費運転の基本となるのは日頃の燃費を把握することが重要である、ということが一番に来ているのは、まさに正しいエコドライブのすすめという印象です。それ以外にも、加減速の少ない運転、不要な荷物を降ろす、空気圧などの点検などなど、非常にまっとうな内容になっているといえるでしょう。



「ふんわりアクセル」は意味ナシどころかマイナス!? 賛否両論渦巻く施策の真実は?
空気圧を測っている写真



とはいえ「エコドライブ10のすすめ」では重要とされている運転テクニック「ふんわりアクセル『eスタート』」については、その提案が生まれた当初から反対意見が出ています。とくにモータージャーナリストやベテランドライバーなど、運転経験が豊富になるほど「ふんわりアクセルは渋滞を招くし、クルマにもよくない。そもそも省燃費にもつながらない」と指摘する傾向があります。



「ふんわりアクセル」は意味ナシどころかマイナス!? 賛否両論渦巻く施策の真実は?
アクセルペダルを踏んでいる写真



はたして「ふんわりアクセル」は、本当にメリットのない省燃費運転テクニックなのでしょうか。



結論からいえば、ふんわりとアクセルを踏むことは省エネルギーにつがなります。エンジン車、ハイブリッド車、EVのいずれにおいても、発進加速というのはエネルギー消費が大きいシチュエーションであり、マイルドに加速させることは省エネルギー的にはメリットしかないといえます。



「ふんわりアクセル」は意味ナシどころかマイナス!? 賛否両論渦巻く施策の真実は?
青信号の発進のイメージ写真



なかでもハイブリッド車については、低速域でマイルドに加速させれば、エンジンを使わずにモーターだけで走行できることが多く、可能な限りモーターだけを利用して加速することは燃費に有利。そのための運転テクニックとして「ふんわりアクセル」を意識することは有効です。



また、エンジン車では、アクセルオフにしてもエンジン回転がすぐに落ちませんから、アクセルから足を離しても加速が続きます。急加速をしてしまうと、アクセルオフでも目標速度を超えてしまう「オーバーシュート」が起きることが多々あります。当然ながら目標より速度を出すということは、エネルギー消費としては無駄ですから、やはり「ふんわりアクセル」はエコにつながるといえます。



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タコメーターの針が揺れている写真



「ふんわりアクセル=速度を出さないこと」ではない!

ただし、「ふんわりアクセルの目安は、5秒間で20km/hまで加速するような運転操作をすること」という表現が誤解を招いている面もあるでしょう。発進から5秒後に20km/hの目標速度にしようとする場合と、目標速度は40km/hで5秒後に20km/hとなるような加速をする場合では、アクセルワークは異なります。後者のイメージでのふんわりアクセルであれば、違和感なく実行できるのではないでしょうか。



こうした視点を持つと、「ふんわりアクセルは環境によくてもまわりは迷惑!」という批判がナンセンスであることも理解できます。上記の批判は、一般道を20km/hで走るような運転を想定しているのでしょうが、あくまで加速をマイルドにしようというのがふんわりアクセルの狙いであって、制限速度にかかわらず低速で走ろうと言っているわけではありません。



「ふんわりアクセル」は意味ナシどころかマイナス!? 賛否両論渦巻く施策の真実は?
一般道のイメージ写真



信号が青になったらブレーキから足を離し、クリープ現象を利用して動き出したら必要最小限だけアクセルを踏むという運転をしていれば、自然とふんわりアクセルになるものです。もちろん、大排気量エンジンのクルマと軽自動車では、必要なアクセルワークは変わってきます。アクセル開度ではなく加速の目安として5秒で20km/hと提示しているのは、むしろ妥当だといえるわけです。



「ふんわりアクセル」は意味ナシどころかマイナス!? 賛否両論渦巻く施策の真実は?
青信号のイメージ写真



一方、「ふんわりアクセルで走ってばかりいるとエンジンが傷む」という指摘もあります。

たしかに機械的にいえば、アクセルをあまり開けずに走っていると、エンジン各部にカーボンが溜まりやすくなる傾向があるのは事実でしょう。



しかし、特殊なチューニングを受けたエンジンや一部のディーゼルエンジンを除けば、日常的にアクセルを全開にするような加速をしていなければ、カーボンが堆積してエンジンの調子が悪くなる……ということは考えられません。



高速道路の合流など、いつもより急な加速が必要なシーンでは、ふんわりアクセルを忘れて、アクセルを全開に近いレベルで踏み込んでやれば十分でしょう。



「ふんわりアクセル」は意味ナシどころかマイナス!? 賛否両論渦巻く施策の真実は?
高速道路の合流地点のイメージ写真



とくにEVにおいてはカーボンが溜まってしまうような問題は意識する必要がありません。実際に運転してみるとわかるでしょうが、EVでは急加速をするほど電費に不利で、航続距離が短くなりがちです。電動化時代に「ふんわりアクセル『eスタート』」を意識することは有効といえそうです。

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