この記事をまとめると
■愛車に対して「同じ車種ならよい」派と「このクルマじゃなきゃダメ」派が存在する■道具として割り切る人と思い出の1台として扱う人では維持方法や接し方が異なってくる
■衝動的に手放したりすると後で後悔することがほとんどなので、売却は慎重に
あなたは「いまの愛車」派? 「同じ車種ならなんでもいい」派?
メーカーや年代を問わず、さまざまなオーナーさんとその愛車を取材する機会が多いのですが、クルマに対する考え方はまさに人それぞれだと実感します。
最近、ふと気づいたのは「同じ車種ならなんでもいい派」と「このクルマじゃなきゃダメ派」で区分してみると、クルマに対するスタンスや考え方があまりにも違うということ。
果たして、それぞれのスタンスの違いとは? 取材を通じて感じたことをまとめてみました。
■クルマは道具? それとも愛車?
オーナーが「クルマは道具」というスタンスをお持ちの方ほど、良い意味で割り切りができていることは確かです。愛車というよりは道具。道具として酷使して、壊れるまで使い倒す。せっかくのハイスペックマシンでありながら、投機目的として扱われ、ガレージや倉庫の奥でビニール製のボディカバーに覆われて「塩漬けになって」いるスーパースポーツよりよほど健全といえます。
一方で、「クルマは道具というより愛車……」の思考をお持ちのオーナーの場合、その接し方は人それぞれ。猫かわいがりせず酷使する方、天気のよい日にしか乗らない方、予防整備を欠かさない方……などなど。代わりになる存在がないとわかっているだけに、時間とお金と手間を惜しみなくかけている印象があります(これはクルマを道具として扱っている人にも共通する部分ではありますが)。
■「同じ車種ならなんでもいい派」
とくに、モータースポーツなどの競技に参戦している場合、「レースに勝つこと」や「目標のタイムをクリアすること」が目的である以上、あくまでも使用するクルマは道具として割り切らざるを得ない側面もあります。
たとえば、何らかの理由でクルマがクラッシュしてしまった場合、いわゆる「箱替え」には手間と時間とお金がかかる。それであれば別の個体に乗り換え、移植できるものは移植して次のレースまでに仕上げる。あくまでもクルマはレースに勝つための道具である以上、至極まっとうな選択だといえます。

また、レースには出場しないけれど、現在の愛車やクルマそのものに「そこまで思い入れがない」という人も当然ながら存在します。クルマの経年劣化や故障頻度が高まるにつれて、新しいモデルに買い替えるというわけです。
機械である以上、壊れたら修理せずに買い替えるという方向性は、今後さらに加速していくのではないでしょうか。メーター類の表示がすべてデジタルになっている最新モデルが増えましたが、仮にいまから20年後「部品が製造廃止で直したくても直せない」という事態にならなければいいのですが……。

思い出はお金では取り戻せない!
■「このクルマじゃなきゃダメ派」の主張
憧れのクルマを手に入れた、親の形見、人生初の愛車、奧さんとの初デートのときに所有していた愛車……などなど。さまざまな理由でオンリーワンの存在となっている場合、誰に何と言われようとも「このクルマじゃなきゃダメ!」なわけです。
乗り換えなんてありえない、箱替えは最後の手段。修理にいくらかかろうが、復活に年単位の時間を要することになろうが、「このクルマじゃなきゃダメ!」なので、ギリギリまで予算を投じるし、製造廃止の部品はありとあらゆる手段で探すし、壊れて修理ともなっても可能な限り待てるのです。

何しろ一生モノなので、リセールバリューを意識する必要はもちろん、修復歴ありになっても気にする必要もありません。世の中の評価や価値基準など関係なく、大切な愛車の原状復帰・現状維持ができればいいのですから。
乗り換えるという選択肢がない、一生モノとして所有する。いつしか動体保存を優先するようになります。そうなると必要なのが「足車」。オーナーにここまでしてもらえたら、クルマとしても本望でしょう。
■まとめ:シアワセなのは果たしてどちらなのか?
「同じ車種ならなんでもいい」「このクルマじゃなきゃダメ」。
以前、あるメディアのオーナーインタビューのときにこんなことがありました。
「常に最新モデルを所有できても、どれだけクルマを増車してもどこか心が満たされない。運転免許を取ってから最初に手に入れたクルマをもう1度所有したい……」かつてとある取材のとき、そうつぶやいたオーナーさんがいました。

筆者自身、毎年のようにクルマを買い替えたり、次々と増車できるカーライフに憧れがないわけではありません。欲しいと思ったクルマを明日にでも契約できる生活に憧れたことも、正直言って何度もあります(笑)。一時期的に所有欲は満たされても、すぐにまた次のクルマが欲しくなり、お金に余裕があるので買えてしまう。
経験がないのであくまでも想像ですが、時価数億円の世界限定車であっても、ミニカーのようにポンと買えてしまったら……。「うぉぉぉおおお! ついに、ついに買えたぞ!」といった喜びや実感は案外希薄なのかもしれません。

これは余談ですが「このクルマじゃなきゃダメ」な方も、ふと魔が差して「そろそろ手放そうかな」と思う瞬間があります。衝動買いならぬ衝動売りです。この場合、可能な限り所有していた方がいいです。