この記事をまとめると
■ジャパンモビリティショーでは市販化目前ともとれるコンセプトカーも展示されていた■従来のモーターショーに通ずるコンセプトカーも多く出展されていた
■コンセプトカーながらも、ユーザーの反響次第では十分に市販される可能性もあり得る
来場者の多くがコンセプトカーたちに釘付け!
東京モーターショーから名前を変え、111万人を超える来場者が訪れたというジャパンモビリティショー。自動車メーカー主体のショーから移動体験全般の未来を示すショーへと生まれ変わりましたが、主催団体が自工会(日本自動車工業会)ということもあり、やはり自動車メーカーが生み出したコンセプトカーがショーの華というのは不変だったという印象です。
ひと言でコンセプトカーといっても、その位置づけはさまざまです。
たとえば、ジャパンモビリティショーの閉幕から4日後の11月9日にフルモデルチェンジが発表されたスズキ・スペーシアは、ジャパンモビリティショーにコンセプトモデルが展示されていました。これこそ、量産モデルをプロトタイプとして先見せさせた典型といえるでしょう。

ジャパンモビリティショーへと改名したことで、自動車メーカーによってコンセプトカーに対するスタンスは異なっていました。はたして、スペーシア・コンセプトのように市販が期待できるコンセプトカーはどれほどあったのでしょうか。
モデルチェンジ発表直前のスペーシアをコンセプトカーとして展示したスズキは、ほかにも人気コンパクトカーのスイフトもコンセプトカーとして披露していましたが、やはり量産目前といえる印象でした。

それも、「かなり販売が近い」という感触を得た人は多かったのではないでしょうか。スイフト・コンセプトについては室内やエンジンも見せるなど、もはや隠すところはないというサービスぶりだったのも、そうした印象を強めたはずです。
逆にいえば、パワートレインなどのメカニズムを見せないコンセプトカーは、そこまで作り込んでいないデザインスタディ的な仕上がりになっていると想像できます。また、細かい部分ではドアミラーやワイパーの有無も量産が近いかどうかの判断基準といえます。

その点に着目すると、ホンダが展示したプレリュード・コンセプトは外観だけのお披露目でしたが、ワイパーやドアミラーがきちんと備わっており、市販前提の仕上がりとなっていると感じられる1台でした。

もっとも、ワイパーの取り付け方向を見ると左ハンドルを想定しているようで、日本で売るかどうかは微妙という意思表示も感じられるところ。
ホンダのプレミアムブランド「アキュラ」は、北米でインテグラという名前を復活させていますが、プレリュードも同様にアキュラ・ブランドで販売するために開発されているクーペと考えたほうが自然なのかもしれません。
反響次第では市販化もあり得る?
ところで、デザインやメカニズムは非現実的であっても、違う意味で実現性が感じられるコンセプトカーもあります。ユーザーの反応を見るためのリサーチ目的のコンセプトカーは、そうした狙いで作られたものです。くだけた表現をすれば、「こんなクルマを作ったら、買ってくれますカー?」といったモデルです。
今回のジャパンモビリティショーで、もっとも「こんなクルマを作りたいんですけど、どうですカー?」という意思が感じられたのは、ダイハツの「ビジョン・コペン」でした。これまで軽自動車唯一の電動トップを持つ2シーターとして2代に渡り愛されてきているコペンですが、このコンセプトカーでは登録車(小型車)サイズに拡大することを提案しています。さらに、パワートレインは純エンジンで、1.3リッターを縦置きしたFRレイアウトを想定しているというコンセプトカーでした。

しかも、ダイハツの方に聞くと、プラットフォームについては新設計が前提で、エンジンについてもなにかの流用を考えているわけではないということでした。つまり、このまま量産するという前提ではないコンセプトカーということです。
これは完全にユーザーの反応をリサーチするためのコンセプトカーということになります。「やっぱりコペンは軽自動車でなきゃ!」という声が多いのか、「FRになるならサイズは関係ない」となるのかなど、ユーザーの生の声を集めることが目的といえます。
ひとつ確実にいえるのは、ダイハツは次期コペンについて柔軟な姿勢で考えているということ。

マツダのコンセプトカー「アイコニックSP」は、経営方針・商品計画の未来を示すコンセプトカーといえます。リトラクタブルヘッドライトを採用した滑らかで美しいフォルムや、2ローターエンジンを積んだPHEVというパワートレインといった想定は非常に魅力的で、「もし量産されたら絶対に買う!」という声も聞こえてきましたが、はっきり言ってこのまま量産というのは不可能でしょう。

ボディは樹脂製で、ほとんど継ぎ目がないことから大きなカウルを載せた設計になっていることが見て取れます。これは量産に使う手法とは思えません。完全にデザインスタディで飾るためのコンセプトカーの典型といえる手法で作られています。
むしろ、「スポーツカーを作り続ける」、「ロータリーエンジンを発展させる」、「プラグインハイブリッドに注力する」というマツダの方針を、あえて1台にまとめて表現したコンセプトカーと理解すべきでしょう。

それぞれの要素が別の市販車に搭載されるかもしれませんし、一台にまとまるかもしれませんが、いずれにしてもアイコニックSPがどんなに好評でも、そのまま量産計画がスタートするような位置づけのコンセプトカーではないと感じられます。
電動化時代になってもスポーツカーは作り続ける、という意思を示したのはマツダだけではありません。トヨタ「FT-Se」や日産「ハイパーフォース」、スバル「スポーツモビリティ コンセプト」はいずれもバッテリーEVのコンセプトカーですが、各社のヘリテージやキャラクターを色濃く感じさせるデザインとなっています。

量産間近のプロトタイプばかりが並ぶ平成のモーターショーは、現実味はあっても「すぐにマネタイズしたいという、どこか世知辛いマインドが強く感じらるものでした。
生まれかわったモビリティショーでは、すぐ手に入りそうなクルマの展示は減ったかもしれませんが、夢と未来を感じさせるショーとしては来場者も満足いくものだったというのが、ショー全体を俯瞰したときの筆者の個人的な印象です。