この記事をまとめると
■タクシードライバーや自動車ディーラーの現場はかつて過酷な労働環境が問題視されていた



■最近ではタクシーの労働環境は改善しつつあり、稼働率も高いので稼げるようになってきた



■新車ディーラーのセールスマンも働き方改革で労働環境が以前より改善されてきた



乗務員不足でタクシー需要が追いつかない!

“クルマ”が絡む仕事では、“ブラック”と呼べるような仕事も少なくないが、最近はそうでもなくなっているケースも散見できる。



まずはタクシー乗務員。新型コロナウイルス感染拡大による行動自粛要請などで、利用客の減少とともに、乗務回数が激減。

感染リスクの高さもあり離職者が相次いだ。そして、感染拡大が落ち着き需要が戻ってきても、乗務員不足が続き、全国的にタクシーの稼働台数不足が問題となっているのはご存じのとおり。



過酷で知られた「タクシー運転手」と「新車ディーラーマン」の仕...の画像はこちら >>



街なかでは利用者が、稼働台数の少ないタクシーのまさに争奪戦を日々行っている。道端で空車のタクシーを待っていても、いまでは実車率(お客を乗せて走っている率)6割以上ともいわれているので、なかなかやってこない。また、スマホアプリによる配車サービス利用も増えているので、乗務中はまさにフル回転状態になっているといっていいだろう。



「お客を降ろしてドアを閉めようとすると、新しいお客が乗ってきて再び指定された目的地に向かうことは、最大限に効率が良く、”たまに起こるラッキーなこと”ともされていましたが、いまでは珍しいことでもなくなりました」とは事情通。



コロナ禍以降は、深夜時間帯のいわゆるロング(長距離利用客)は戻りきっていないようだが、それに代わるようにインバウンド(訪日外国人観光客)需要が補っているようだ。「日本に長期滞在するインバウンドも多く、手荷物がかなり多いのは皆さんも見ていてわかると思います。都内で聞くと、そのようなインバウンドが都内に滞在している間に、たとえば浅草と新宿など都内での宿泊先を複数転々とすることも目立つようです。たくさんの荷物を抱えて、電車や地下鉄で移動するのは大変だとのことで、結果的にタクシーで移動することが多いですね。都内移動となりますが浅草から新宿のような都心を抜けていくような利用では、料金はそこそこ高くなりますから“おいしい”と話す乗務員もいるようです(事情通)」



過酷で知られた「タクシー運転手」と「新車ディーラーマン」の仕事に変化! ブラック感がすっかり息を潜めたワケ
海外からの旅行客のイメージ写真



また、たとえば首都圏というエリアのスケールがわからないこともあり、都心から東京湾岸部にある世界的に有名なテーマパークへタクシーで向かうインバウンドも意外なほど多いようだ。都県境をまたぐようなロング客は確かに“おいしい”のだが、都心に戻るときに空車となるので効率が良くないとする乗務員もいるが、前述したテーマパークでは、テーマパークへ向かうと、そこから都心へ戻るインバウンドがいたりすることも珍しくないので効率が良いということである。



評判の良い乗務員は稼げる!

欧米やインドなどで利用の多い、配車マッチングアプリ(ライドシェア)サービスと提携しているタクシー事業者の車両では、母国で利用しているインバウンドがそのまま日本でも使うのでかなりおいしいとのこと。さらに、このアプリは海外由来ということもあるのか、配車要請の際に乗務員へのチップを払うかどうかのチェックがある(払う払わないは任意)。数十円単位ぐらいのいくつかの金額から選ぶのだが、小心者の筆者などはついついポチッとタッチしてしまうので、このコーナーの存在も乗務員の収入には意外なほど貢献しているように見える。



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電子決済で配車アプリの代金を支払うイメージ写真



配車要請を受けるときには、そのお客が短距離なのか長距離利用なのかわからないのがアプリ配車サービスの原則だが、前述した海外系サービスでは、利用者のスコア(評価)が連続して良かったりすると、そのような乗務員には特典として配車要請を受けるかどうかというときに、要請している利用予定客の目的地までの距離などが車両画面に表示され、それをもとに配車を受けるかどうか判断できるようになるとのこと。



まさに休む間もなくというのもオーバーではないほど多忙なようだが、少なくともそれに見合ったというか、不満のないレベルの収入が確保できるのが現状となっているようである。待遇面での改善も微速ながら進んでいるようなので、ひと昔前よりはブラック感は減っていると見て取れる。



新車販売のセールスマンもかつては、「夜の仕事」とも呼ばれ拘束時間の長いブラックな仕事の代表格とされていた。訪問販売が主流のころは、夜間に購入見込み客の自宅などを訪れて商談を行うのがおもな仕事ともいわれていたからである。



過酷で知られた「タクシー運転手」と「新車ディーラーマン」の仕事に変化! ブラック感がすっかり息を潜めたワケ
自動車ディーラーの外観



※画像はイメージ



某大手中古車販売店の件が話題となって久しいが、程度の差こそあれ某大手中古車販売店のようなブラック職場的待遇は、昭和及び平成初期当たりの新車販売現場では当たり前であった。



ただ、いまより給与におけるマージン比率が高く、いまよりもはるかに売れば売るほど給与へそのまま反映されており、環境が悪い代わりに稼げるので(人によるが)お金の面で相殺かそれ以上となっていた。



現状では、働き方改革の影響もあり、営業時間が10時から18時という店舗も多く、ほかの小売店に比べると労働環境はかなり改善されているといっていいだろう。夜間にお客の家へ行きたくても、残業は原則禁止となっている。

有給休暇の消化も積極的に行わなければならず、そのなかで店舗自体を週休2日にするところも珍しくなく、とにかくよく休めるようになっている。“●●ハラスメント”といったものへのリスクヘッジから、過去の直接的なブラック待遇も組織的なものはほぼ消え去ったといっていいだろう。



ただし、販売ノルマというものは引き続き残っている。セールスマージンよりも基本給の比率が高まるなか、マージン支給も単純に新車を売っていればもらえるというわけでもなく、複雑な支給基準となってしまい、結果的にもらえないことも多くなっているようである。



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販売ノルマ表のイメージ写真



新車販売業務に限っては、働きやすくなっているが、以前よりは稼ぎにくくなってきているのは間違いない様子。いまの若い世代の人生観にはマッチングしやすいようだが……。



稼げるということよりは、働きやすさが重んじられるという傾向はほかの業種と変わらないものとなっているように見える。

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