この記事をまとめると
■レクサスでもっともコンパクトなクロスオーバーSUVのLBXに桂 伸一さんが試乗■静粛性にこだわるレクサスにしてはエンジン音やノイズなどが車内に伝わってくる
■操縦性は非常によく直進性とハンドリングに優れている
個性あふれるもっとも小さいレクサス
コンパクトグラマー。LBXを見るたびにそのフレーズが踊る。レクサス最小、BセグメントのクロスオーバーとなるLBXは、ボリューミーに張り出したフェンダーと、曲面と塗装の美しさが際立つグラマーさで、コンパクトながら強い個性と存在感を示す。
スリーサイズ(全長全幅全高)は4190×1825×1545mm、ホイールベース2580mmは、正直2名ないし子どもが小さいファミリー向け。後席は立ち気味の背もたれ角度、足もとスペースはまあまあだが、ゆったり楽ちん姿勢ではない。
レクサスは、トヨタのプレミアムカーブランドで、全世界に衝撃のデビューを果した代表作は1990年誕生のLS(トヨタ名は初代セルシオ)。その凄さをナマで知る還暦世代は、無音の世界観というモノを植え付けられた。エンジンはもちろん走行もほぼ無音で滑らか、無音は高級だということを、まさに世界的にも知らしめたレクサスLSが、プレミアムセダンのひとつの指針を作ったといえる。
それを肌で実感させられたのが34年前の話。だからレクサスは音にこだわらなければならない。もちろんLBXも同様。試乗会でクルマの成り立ちを解説する映像の一端にセルシオが登場する。つまり、自らハードルを思いっきり高見に置いて、「LBXは音にもこだわってますよ」である。
ドアノブに手をかけるとクリック感なくパカッと開く新感触のドア。室内からもノブを押した瞬間、電磁ロックが解除して開く感覚は新しい。
メインスイッチONで、バッテリー残量が半分程度だとエンジンが始動する。4気筒とは違う独特の3気筒ビートが室内に伝わる!? えっ、こうした音の類が伝わらないのがレクサスのハズでは?
高い直進性と自然なハンドリング
加速すればそれなりの音量に振動も加わる。開発主査に伺うと、「このエンジンは燃焼効率も燃費も環境性能も優れていて、アルミブロックでエンジン単体も軽量に作られています」とのこと。音の発生は燃焼音も含めて聞こえやすい特性にあるようだ。
バッテリー残量があるうちは無音のモーター走行になり軽快で滑らかに加速するのだが、そこでは路面からのザラ付いた振動とロードノイズが届く。
ネガティブな話ばかりだが、操縦性そのものはいい。これを観察すると、まず直進性に優れている。首都高速横羽線の路面はお世辞にも良くはない。轍や路面の綱ぎ目による外乱を受けるが、そこを極めてリラックスモードで直進し車線内に留まることが造作ない。加速して速い流れにのり、ツイスティなコーナーにステアリングを沿わせて行くことがじつに自然にできる。
高速巡航は、件のエンジンノイズが打ち消されて快適。シフトは無段変速だが、それをマニュアル操作するパドルがあることはうれしい。
ブレーキはペダルのストロークに対して踏み込む量と速度を正確に減速Gに変え、じつに自然に停止できる。回生と機械式ブレーキの協調制御が素晴らしく、踏力を抜くほうのコントロール性も緻密に正確に行なわれていることがわかる。
街なかではコンパクトなボディサイズと回転半径5.2mが効いて取りまわしのしやすさは女性ユーザーに受けるだろう。
2WDのほか後輪をモーターが駆動するE-FourのAWDもある。フル加速時に「リヤも駆動したかな」程度の感触ではあるが、日常で滑りやすい状況下にあるムキには当然AWD。ただし、車重で80kg軽い2WDがやはり軽快でストレスない走りを展開するので、非降雪地域ならこちらをお薦めする。
Bセグメントとしてはプレミアム価格なだけに、レクサス=音へのこだわりをより強くまとめあげることに期待する。

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