この記事をまとめると
■都市型EVモビリティのトゥイージーをベースにルノーが「トゥイージーF1コンセプト」を製作■「トゥイージーF1コンセプト」はF1用エネルギー回生システム「KERS」を搭載
■「トゥイージーF1コンセプト」フォーミュラ用エアロパーツなどエクステリアも本気度の高いクルマだった
F1の余ったパーツでモンスターを製作するルノーのおバカシリーズ
フランス人はケチというのが定説ですが、「使えるものは何でも使え」という合理性こそ彼らの真理を表している気がします。たとえば、1995年にルノーが作ったエスパスF1は、同社のメガヒットとなったミニバン「エスパス」に、いくつか余っていたF1エンジン(ウィリアムスFW14用)を搭載し、史上まれにみる「F1と並走できるミニバン」に仕立てあげてしまいました。
この倹約精神みたいなものはルノー社内で連綿と続いていたようで、今度は「KERSの在庫あんだけど、どう使う?」ということになったのかもしれません。

そもそもトゥイージーというのは、2011年にデビューしたタンデムスタイルのEVで、長さ約2.4m、幅およそ1.2mという都市型モデル。劣悪なパリの駐車環境でもサバイバルできそうなサイズということ。標準型で17馬力のモーターを搭載し、充電は3時間半で満タンとなり、航続距離は約96kmとされています。ちなみに、フランスではリチウムイオンバッテリーを月額5000円程度でレンタルする仕組みとなっており、リサイクルや環境への影響を十分考慮したものかと。
で、環境といえばエネルギーの回生システム! ルノーはちょうどF1むけにKERSを懸命に作っていたので「これトゥイージーに付けたらイケるんじゃね」と考えたのも無理はありません。
KERSは2009年シーズンからF1に導入されたシステムで、減速時やブレーキング時に浪費されていたエネルギーを回収し、バッテリーに蓄えた後でモーターに還元。通常のエネルギーを補助・ブーストアップしてくれるというわけで、トゥイージーF1コンセプトは、KERSのおかげでおよそ100馬力までパンプアップされてしまいました(笑)。追加のパワーユニットとバッテリーにより、車重が470kgから564kgに増加しましたが、パワーウエイトレシオはちょっとしたスポーツカー並みといっていいでしょう。

そうはいっても、都市型EVをホットなマシンにカスタムするのはさほど簡単なものではなかったようです。電力供給に関するデバイスやソフトウェアなど、エンジニアによればF1よりも課題が多かったとのこと。また、追加されたモーターやバッテリー、そして冷却システムのおかげで、後ろの席は撤去され名実ともにF1みたいなパッケージとならざるを得なかったのです。
やる気満々のスタイリングもどこかファニーで愛らしい
トゥイージーF1コンセプトが魔改造に見える要素として、大径のスリックタイヤや、フロント&リヤウイング、ディフューザーなどが見られますが、これらはすべて機能しているとのことで、単なるコスメティックではないそうです。

グリップや冷却など、さすがレース部門が作っただけあって、きめ細かい性能貢献を実現しているというわけ。ちなみに、タイヤ&ホイールはトゥイージーのサイズからF1でなく、その下のクラス、フォーミュラ・ルノー2.0から流用されています。
また、レース部門ではF1用ステアリングも余っていたのか、トゥイージーF1コンセプトにはタブレットコンピュータ並みの機能が載っけられたステアリングが装着されています。いうまでもなく、KERSの制御、ブーストコントロールを左右のパドルで行えるようになっているほか、LEDのインジケーターが各種の情報を表示。おそらく、このステアリングだけでノーマルのトゥイージーが2、3台は買えるのではないでしょうか(笑)。
実際のパフォーマンスは0-62mph加速7秒、最高速68mph(およそ109km/h)とされていますが、ソフトウェアのセッティングいかんではルノー・メガーヌの速いやつとタメはれるくらいだとか。

まったく、エスパスF1といいトゥイージーF1コンセプトといい、ルノーはこういうものを本気で作るところが偉いというか、シャレが効いています。こうしたマインドや、もったいない精神、我々も見習うべきところが少なくありませんね。