この記事をまとめると
■令和6年能登半島地震の際に被災地でEVが電力源として活躍していた



■2011年の東日本大震災をきっかけに日産と三菱はEVの活用をすすめている



■一部モデルを除き輸入EVはVtoH機能を有していない



被災地の電力供給で活躍するEV

正月の能登半島地震を受け、日産自動車は、災害地へ電気自動車(EV)のアリアやリーフ、またポータブルバッテリーfromリーフ(JVCケンウッドとフォー・アール・エナジー、日産の3社で開発)の無償貸与のほか、日産ディーラーの店舗にある急速充電器を無料とする措置をとった。同様に三菱自動車も、ディーラーでの無料充電を実施した。



被災地では停電が発生し、家庭電化製品はもとよりスマートフォンなどの充電にも不自由する状況となり、災害情報などの入手も困難となりかねない。

そうした緊急での電力確保に、EVが移動可能な蓄電池として機能する。電気を車外へ取り出せるのはもちろん、EVへの充電サービスを提供するディーラーには急速充電器があるので、電力を確保できる地域のディーラーでEVを充電し、再び電力供給に向かうこともできる。



EVは単なるエコなクルマで終わらせるべきではない! 災害時の...の画像はこちら >>



もちろん、道路が寸断されるなど、被災状況によって適応しきれない場面はあるはずだが、EVが単に環境適合のためのエンジン車の代替というだけではなく、災害時に停電した際の電源となり得ることが改めて確認されている。



日産と三菱自は、全国各地の自治体と災害協定を結び、災害時の電源確保を視野にした支援を以前から約束してきた。それら協定は、自動車メーカーと自治体だけでなく、地域の販売ディーラーなども関わり、新車試乗体験のために用意されたEVやPHEVを供与することなども考慮されている。



東日本大震災での経験からVtoHを開発

こうした動きの発端は、2011年3月11日に発生した東日本大震災だ。

当時、すでに三菱i-MiEVと日産リーフは発売されており、ガソリンスタンドへのタンクローリーによる燃料補充が道路の寸断で進まないなか、より早く復旧した電気を使い、物資の運搬などにEVが活躍した。



しかし、当時はまだEVから外部へ電力を供給する仕組みがなかった。そこで被災者やそれを支援する人たちから、「せっかく大容量のバッテリーを車載するのだから、EVから電気が手に入ればうれしい」との声が上がり、以後、日産と三菱は、移動可能な電源としてのEVの可能性を探り、開発に乗り出したのだ。



ひとつは、日産がニチコンと共同開発したVtoH(ヴィークル・トゥ・ホーム)だ。三菱自が開発したのは、MiEVパワーボックスで、これはEVから家庭電化製品への電力供給設備である。



EVは単なるエコなクルマで終わらせるべきではない! 災害時の電源として使えることが重要
日産がニチコンと共同開発したVtoH(ヴィークル・トゥ・ホーム)のイメージ



これをきっかけにニチコンではVtoHにとどまらず、さまざまな電気製品への電力供給をEVから可能にするパワームーバーを商品化した。



2016年の熊本地震では、三菱アウトランダーのPHEVから、外部電源を通じて家へ配線を引き込むことで電化製品を使えたという事例もあった。ことにEVは、大容量のバッテリーを車載するので、災害時を含めた外部への電力供給に一役買える優れた可能性を持つ。



EVは単なるエコなクルマで終わらせるべきではない! 災害時の電源として使えることが重要
三菱アウトランダーPHEV(2代目)が電力供給をしている様子



しかしながら、ヒョンデやBYD、メルセデス・ベンツ、テスラ・サイバートラック以外の輸入EVは、車載バッテリーから電力を取り出す機能が設けられていない。気候変動による災害は世界規模であり、スマートフォンなど通信端末を使っての情報収集や救助などの期待が高まっているなか、EVの普及が電源確保に役立つことが世界標準になるといいと思う。