この記事をまとめると
■輸入車が日本に導入される際に1年以上を要することがある



■いまではネットでフルモデルチェンジの報道がされるので従来型の売れ行きにも影響する



■日本車の国内仕様が海外仕様よりも登場が遅れるのには不満が募る



売る地域にあわせたローカライズには時間がかかる

輸入車が本国で発表されてから日本で発売されるまで、たとえばフォルクスワーゲン・ゴルフのような日本国内の人気車でも、だいたい1年程度を要する。長ければ2年以上に達する場合もある。



フルモデルチェンジのタイミングが異なる理由は複数あるが、基本的には、同じ車種でも国や地域に応じて法規などに基づく車両の仕様が異なるからだ。

各市場別の開発や生産に手間がかかり、全世界で同時にフルモデルチェンジを実施することは、メーカーにとって困難が伴う。



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そのために通常は、メーカーにとっての本国、あるいは販売台数の多い国や地域から新型車を投入する。このあと、順次、フルモデルチェンジする市場を拡大していく。そうなると、本国などでフルモデルチェンジが実施されてから日本仕様が新型に変わるまで、長い車種では2年前後を要するわけだ。



いまはインターネットの普及もあり、海外の情報を入手しやすい。本国で新型が登場してニュースになれば、従来型は売りにくくなる。

この点を輸入車ディーラーに尋ねると以下のように返答された。



「熟成の進んだ従来型を希望するお客さまもいるが、その数は少ない。一般的に新型の概要がわかると、従来型は売れ行きが下がる。そこで値引き額を拡大したり、アクセサリーを無料サービスで装着する。メーカーによっては、日本法人を経由して販売会社に報償金を送り、それを原資に設計の古くなった車種を大幅値引きで売ることもある」。



日本車なのに海外が先……どころか数年遅れで発売ってどういうことよ? 新型車の日本導入に大きな時差が発生するワケ
輸入車ディーラーの外観



本国のフルモデルチェンジが報道されると、日本のユーザーも、新型を待ちたいと考えるのは当然だ。

それでも従来型を売るには、値引きを拡大するなど、実質的な値下げを行う必要が生じる。



日本車なのに北米や中国で先にデビューするのもやむなし

日本のユーザーがとくに不満を感じるのは、日本メーカーの国内仕様が、海外仕様に比べてフルモデルチェンジを大幅に遅らせる場合だろう。たとえば先代アコードは、北米では2017年7月に発表されながら、タイ製となる日本仕様の登場は2020年2月であった。



日本車なのに海外が先……どころか数年遅れで発売ってどういうことよ? 新型車の日本導入に大きな時差が発生するワケ
ホンダ・アコード(10代目)



つまり、北米市場の登場と日本国内の発売には、約2年半の時間差が生じた。その間、北米では新型、日本では旧型を売っていた時期もある。新旧モデルを比べると、とくに安全面で差が生じた。

日本のメーカーが作る商品なのに、日本仕様よりも海外仕様のほうが安全という状況が生じていた。



新型アコードも北米仕様は2022年11月に発表されたが、日本仕様の発売は、販売店では「2024年3月7日になる見込みで、価格は544万9400円」と案内していた。先代型ほどではないが、約1年半の時間差が生じたわけだ。



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ホンダ・アコード(11代目)



現行レガシィアウトバックも同様だ。北米では2019年7月に生産を開始したが、日本仕様は、同年9月にフルモデルチェンジではなく一部改良が実施された。そしてフルモデルチェンジは2021年10月であった。

ここでも約2年間の時間差が生じている。



日本車なのに海外が先……どころか数年遅れで発売ってどういうことよ? 新型車の日本導入に大きな時差が発生するワケ
スバル・アウトバック(6代目)



フルモデルチェンジの周期が5~6年になることを考えると、販売台数の多い海外仕様を先行発売するとしても、1年以内に日本仕様を投入すべきだ。いまは安全性に関連した技術進歩が著しいから、2年の差が生じると、日本のメーカーが日本のユーザーに安全性の劣った商品を売ることになってしまう。