この記事をまとめると
■「車両重量」と「車両総重量」の違いを解説



■自動車重量税の指標が「車両重量」、運転可能なクルマに影響する指標が「車両総重量」



■「車両重量」が軽いクルマは税金が安くなることがある



車両重量にはオイルや満タン時のガソリン重量も含まれている

自動車好きが「カタログスペックでは……」とエクスキューズ的に表現するときには、カタログなどの後ろやホームページに掲載されている主要諸元の値というのは、あくまで机上の設計値であって、リアルワールドとはズレがあるという意味合いを込めていることが多い。



自動車に限らず工業製品には、ほとんどのプロダクトにおいて公差と呼ばれる誤差の許容範囲が定められており、公差の範囲内において設計値がズレてくることは当たり前のようにある話だ。そのため、諸元表に載っている数字は、そのまま実車のスペックと完全にイコールであるというわけではない。



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そして、意外かもしれないが、車検証に載っている数値はカタログスペックと同一ではなかったりする。たとえば全長・全幅・全高といったボディサイズについて、たいていのカタログスペックでは5mm単位で表記しているが、車検証ではcm単位となっていたりすることに気付いているだろうか。



また、多くのカタログスペックではクルマの重さを「車両重量」として記載しているが、車検証には「車両重量」と「車両総重量」が併記されている。初めて車検証をまじまじと眺めたのであれば、この似た名前の項目に混乱しているかもしれない。はたして、このふたつの項目には、どんな違いがあるのだろう?



車検証にもカタログにも重さが2つ書いてあるのはナゼ? クルマの「車両重量」と「車両総重量」の違いとは
車検証の「車両重量」と「車両総重量」



結論からいえば、車両重量というのはクルマが走り出せる状態での製品としての重さであり、乗用車における車両総重量はそこに最大乗車定員ぶんの重さをプラスした運用上での最大重量をイメージさせるものとなっている。



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自動車のトランクに荷物が積載されている様子



より細かくいえば、車両重量とはエンジンオイルや冷却水などの油脂類をはじめ、燃料を満タンにした状態での車両だけの重さ。車両総重量といった場合には、乗車定員×55kgの重さを足したものとなっている。乗車定員5名のクルマであれば車両重量+275kg、定員7名であれば車両重量+385kgといった足し算をすることで車両総重量を計算することができる。



衣服をまとった装備重量としてひとり当たり55kgで計算するというのはリアルからかけ離れた想定という気がしないでもないが、そうしたルールで長年に渡って導き出されているのが車両総重量というものだ。



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自動車の後席に乗員が座っている状態



自動車メディアなどでは「このクルマはカタログスペック(車検証)での車両重量が990kgだから」と、いかにも車両重量をクルマが走っているときの重さのように表現する慣習もあるが、車両重量というスペックには乗員がひとりも含まれていない。運転者の装備重量を厳密に計測する必要はないだろうが、少なくともひとり乗車で走っている状態での重さは車両重量+55kgとしてイメージすべきだろう。



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ひとりでドライブしている様子



重量税の課税基準は車両重量

しかしながら、車両重量が軽いことは節税につながるという意味では重要なスペックとなっている。

少なくとも乗用車においては、車両重量が「自動車重量税」の課税基準となっているからだ。もっとも、0.5t単位で区切るという大まかな計算によっている。もっとも現実的には、エコカー減税&旧車増税制度もあるので、重量以外の要素によって税額が変わってくるのだが……。



なお、「車両総重量」を、車両重量+乗車定員(55kg×人数)で計算するのは乗用車に限った話。バンやトラックなど商用車においては車両重量+乗車定員+最大積載量によって車両総重量が導かれる。そして、商用車の自動車重量税は車両総重量を基準に税額が決められていたりする。



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大型トラック



ちなみに、現在の普通運転免許では「車両総重量」でいうと3.5t未満のクルマまでしか運転することができない。準中型免許でも5t未満限定、中型免許では8t未満限定といった条件がついた免許証を持っているドライバーも多いだろうが、いずれも車両総重量による制限であることは留意しておきたい。



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免許証に記載されている「8t未満限定」の表記



今後、たくさんのバッテリーを積んだハイパフォーマンスEVが登場することが予想されている。グローバルモデルが日本の免許制度に配慮するとは限らないため、車両総重量的に普通免許で運転することが際どくなるクルマも出てくるかもしれない。これからは車両総重量を車検証で確認しておく必要がある。車両総重量というスペックをこれまで以上に気にすべき時代になっているといえる。

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