この記事をまとめると
■かつてロック解除ボタンを押す必要がなく誤操作を防ぎやすいとして多くのクルマに「ゲート式シフトセレクター」が採用されていた



■現在、パドルシフトと電子制御セレクターの普及によりゲート式シフトセレクターは少数派となっている



■今後はデザイン性でもスペース効率でも優れるレバーレスのATセレクターが当たり前になる



軽自動車にも普及したゲート式シフトセレクターが消えた

少し前まで国産車のATのシフトセレクターは、P、R、N、D……の各ポジションが直線的に並ぶストレート式が多く、メルセデス・ベンツなどは左右にジグザグ動かすゲート式を採用していた。



このゲート式、ロック解除のボタンを押す必要がなく、しかも誤操作を防ぎやすいメリットがあり、使い勝手のいいものだったが、メルセデス・ベンツの特許があったため、採用する車種は限られていた。



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特許の権利が切れたあとは国産車にも普及し、軽自動車でも採用する車種が増えたのだが、その後また下火になりつつある。



どうして再びゲート式は少数派になりつつあるのか?



あのギザギザが使いやすかった! メルセデスを皮切りに軽自動車まで広がった「ゲート式シフト」が消えたワケ
三菱iのゲート式シフトセレクター



主な理由はふたつある。



ひとつはパドルシフトが増えたため。走行中は基本的にDレンジに入れっぱなしで、ギヤのセレクトはパドルシフトで行なうスタイルが定着したから。



あのギザギザが使いやすかった! メルセデスを皮切りに軽自動車まで広がった「ゲート式シフト」が消えたワケ
パドルシフト操作のイメージ



もうひとつは、電子制御式セレクターが幅を利かせてきたため。もともとATのシフトレバーは単なるスイッチで、レバーとミッションが直接つながっているのではなく、レバーを動かすと電気信号がサーボモーターに届き、サーボモーターがミッションを動かす仕組みなので、レバーではなく、ボタンでも問題なかった。



あのギザギザが使いやすかった! メルセデスを皮切りに軽自動車まで広がった「ゲート式シフト」が消えたワケ
日産セレナ e-POWER(6代目)のインパネのボタン類



レバーにしていたのはMT車の名残と操作性の問題だけだったのだが、ここへきてセンターコンソール付近のデザイン度の高い電子制御式セレクターを選ぶ車種が増えてきている。



国産車でいえば、まずプリウス。レバーでの操作は、基本的にR・N・Dだけで、Pはボタン式。レバーは操作後センターに戻る。このプリウス式がもっともメジャーな電子制御式セレクターだ。



あのギザギザが使いやすかった! メルセデスを皮切りに軽自動車まで広がった「ゲート式シフト」が消えたワケ
トヨタ・プリウス(5代目)の電子制御式セレクター



そして、ゲート式の本家だったメルセデス・ベンツは、コラムタイプの電子制御式セレクターに進化。

シンプルで使いやすく、ハンドルを握ったまま指先だけで操作が可能。



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メルセデス・ベンツEクラス(6代目)のハンドルまわり



こうしたものが出てくると、もうゲート式の優位性はない……。



ほかにもホンダのボタン式シフトをはじめ、各社多様な電子制御式セレクターを考えているが、センターコンソールの省スペース化にもつながり、今後は高級車から大衆車まで、電子制御式セレクターが主流になるはず。



やがてゲート式、ストレート式といった問題ではなく、レバーレスのATセレクターになっていくのは間違いないだろう。