この記事をまとめると
■ディーゼル車が黒い煙を吐き出すことはいまではほとんどなくなった



■いまでもときどき排気ガスが目立つトラックやバスを目にする



■原因はクリーンディーゼルエンジンの故障や部品の損傷だ



一部のトラックが凄まじい煙を出す理由

トラックもバスもディーゼルといえばほんの20年くらい前までは加速時に黒い煙をマフラーから吐き出すのが当たり前だった。しかし、排ガス規制が厳しくなってクリーンディーゼルが導入されて、それらのクルマの排気ガスは本当にキレイになった。



ところが最近になって再び、排気ガスの汚れが目立つトラックやバスが都市部で目に付くようになってきた。

結論をいえば、これはクリーンディーゼルエンジンの故障や部品の損傷を放っておいて、乗りまわしているから。



ディーゼルエンジンは熱効率に優れるものの、排気ガスをキレイにするためには非常に緻密な制御が必要で、ガソリンエンジンより高性能なインジェクターが使われているのはそのためだ。しかし、排気ガスをキレイにしているのは、エンジンの燃焼状態を緻密に制御して最適化しているだけではなく、燃焼後の排気ガスをキレイにする後処理装置の働きも大きい。



ディーゼルトラックはマフラーから煙が出て当たり前……じゃない...の画像はこちら >>



というのもディーゼルは燃焼温度が高いと排気ガス中のNOx(窒素酸化物)が増え、燃料が濃かったり燃焼温度が低いとPM(黒煙の主成分である煤)が増えてしまうので、両方を処理して大気に放出する必要があるからだ。



そんな後処理装置も使用過程や走行中の熱や振動などによって劣化していく。とくに黒煙を処理するDPF(黒煙を回収して再燃焼させるフィルター)はセラミック製で高温にも強いが、再燃焼時に温度が上昇しすぎて壊れてしまったり、振動や衝撃で割れてしまうこともある。そうなると、黒煙を捕集することができなくなって、マフラーから黒煙がそのまま出てしまうのだ。



ターボチャージャーが壊れると白煙が発生

さらに、軽負荷時には燃料消費を減らし、発進時や登坂時などの高負荷時には大トルクを発生させるために、クリーンディーゼルにはターボチャージャーを組み合わせるのが必須となっている。しかし、乗り方やメンテナンスによってはエンジンより先にターボチャージャーが寿命を迎えてしまうこともある。



熱的に厳しい軸受部分の摩耗が多いが、タービンホイール、コンプレッサーホイールが壊れることもある。燃料ポンプやインジェクター、エンジン本体も摩耗が進んだり、部品が破損することもある。しかし即座に走行不能になる故障ばかりではないから、仕事で使う働くクルマはギリギリまで業務に使われる。

そのため、中途半端に壊れた状態のトラックが街を走ることになってしまうのだ。



ディーゼルトラックはマフラーから煙が出て当たり前……じゃない! 加速時に黒煙や白煙を吹くトラックは壊れかけだった!!
排気ガスのイメージ



そうしたトラックは排気ガスを見れば分かる。マフラーから白煙や黒煙を吐きながら加速しているからだ。基本的には黒煙は燃料系かDPFが壊れた状態で、白煙はターボチャージャーか燃料系が壊れた状態が原因で吐き出される。



営業車は1年に1回車検があるので、そのときまでには修理しなければならないが、しばらくは騙し騙し走らせている業者もいる。それらのトラックが街を走っているため、再びトラックの排気ガスが汚れてきたのだ。



白煙、黒煙を吐いているのは、壊れかけているトラックなのである。

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