この記事をまとめると
■ホンダ シビック タイプRについて解説■現行型で6代目となる
■歴代モデルも振り返る
6代目の「シビック タイプR」とは
シビックタイプR とは“FF最速”の称号にこだわりニュルブルクリンクのラップタイムを重視した国産スポーツカー。1997年に登場した初代からF1などで培ったホンダの技術を注ぎ込み、一般道はもちろんサーキット走行を楽しむことができる特別なモデルとして多くのファンをかかえています。
6代目となる現行モデルは2022年に登場。
先代からパワーアップを果たしたうえ、足まわりにも手が加えられたことで走行性能は向上。ニュルブルクリンクのラップタイムこそ計測方法が変わった(計測距離が長くなった)ことで先代から1秒遅くなりましたが、走行性能がさらに向上していることは間違いありません。
ただシビックタイプRの特徴はサーキットで速く走行できるだけでなく、ベース車となるシビック5ドアハッチバック同様の居住性や利便性を備えていること。

タイプRは、ベースとなるシビックの5人乗りから、4人乗りに変更されているものの、室内空間やラゲッジ容量はベース車同様、クラストップレベルの広さを実現。室内の収納スペースも豊富に用意されています。
6代目シビックタイプRの特徴
迫力満点! ワイドフェンダー採用のエクステリアデザイン
シビックタイプRといえばエアロパーツを身にまとった、迫力あるエクステリアデザインが特徴。6代目も空力性能を向上させる大型リヤスポイラーなどのエアロパーツが目を引きますが、ベース車との違いはそれだけにとどまりません。
6代目の大きな特徴は専用のワイドフェンダーとリヤドアを備えたことで、レーシーなワイド&ロースタイルを実現したことです。

シビックに対して全高を8mm低くするとともに全幅を90mm拡張。トレッドもフロントが89mm、リヤを49mm広げました。
また先程もお伝えしたようにタイプRらしいアグレッシブなフォルムを実現するため、リヤドアを新設。一見、シビックと同じに見えますがリヤドアからワイドに張り出したリヤフェンダーに続くラインは、タイプR独自のマッチョなフォルムとなっています。
330馬力を発揮するVTECターボエンジン
現行シビックタイプRに搭載されるパワーユニットは先代同様K20C型2リッター直4ターボエンジン。とはいえ改良を加えたことで最高出力は330馬力(先代は320馬力)、最大トルク42.8kg-m(同40.8kg-m)となりました。
改良ポイントとして新設計のターボチャージャーを搭載し、インタークーラーを改良したこと。このほか、細かい改良を施したことで出力アップを実現しています。

新設計されたターボチャージャーは先代と比べて小型化。コンプレッサーの形状を変更したことで慣性モーメントの低減を可能としました。
またターボチャージャーとともに排気系を見直したこともあり、ターボラグが少なくなりレスポンスも向上。いまどきのスポーツカー同様にオーディオ・スピーカーから調整音を出すことで、エンジンサウンドの質感も高めています。
赤い専用シートを備えたインテリア
基本デザインは標準シビックと同じインテリアデザインですが、室内に乗り込むと目を引くのが専用装備。なかでもタイプRらしい赤色の座面が特徴のフロントシートと赤いカーペットに目を奪われます。
フロントシートは先代同様4点式ベルトに対応していますが、バックカバーを縮小。軽量化を実現しました。

またリヤシートも座面は黒をベースにしているものの、赤いステッチでタイプRらしさを表現。
コンソールはシビックの標準仕様とは異なりアルミで加飾し、“らしさ”を強調しています。
走りだけでなく乗り心地も向上したサスペンション
6代目のサスペンションはフロントが(デュアルアクシス)ストラット式、リヤはマルチリンク式とシビックおよび先代タイプRと同じ形式となっています。
ただ330馬力を超えるパワーを誇る6代目タイプRは、シビックおよび先代モデルからリファインされました。
ワイドタイヤを採用したことでフロントサスペンションはキャンバー剛性を向上。リヤサスペンションも同じくキャンバー剛性が高められましたが、いまどきのスポーツカーは日常使用時の乗り心地もこだわる必要があります。

ベース車のシビックにも採用された低フリクション技術や制御技術を取り入れたことでサーキット走行時の高速走行に対応するだけでなく、街乗り時には同乗者から「乗り心地が悪い……」と文句をいわれることのない(?)足まわりを備えました。
多彩なエンタメ演出を映し出すモニター
高い走行性能を備える6代目シビックタイプRは、現在のスポーツカーらしい演出にも対応。とくに自車の走行状況を分析可能なデータロガーに対応したことが大きなトピックスです。
インパネ中央に装備されたディスプレイは、データロガーアプリ“Honda LogR”に対応。一般道では加速や減速、旋回などの項目で自車の走りを採点。一般道だけでなく国内13のサーキットでは自動でラップタイムを計測してくれるほか、コーナリング時の走行データなどを振り返ることができるため走行技術の向上に寄与してくれます。

また専用サーバーにデータをアップロードすることで、ほかのタイプRオーナーとの走行データを比較することもできるなど、ドライバーに嬉しい機能となりました。
ディスプレイだけでなくメーターにも安全支援情報などとともに、インジケーターやGメーターなどサーキット走行時に役立つ情報も表示することができます。
歴代シビックタイプRを振り返る!
初代(1997年)
1992年に登場したNSX タイプRを皮切りにインテグラ タイプRと続いた、ホンダのタイプR戦略。6代目シビックが1997年にマイナーチェンジを施したタイミングで登場したのが初代シビック タイプRです。
6代目シビックのスポーツグレードSiRに搭載されていたB16A型1.6リッター直4DOHCエンジンをベースにチューニングを施した、B16B型1.6リッター直4DOHCエンジンを新たに開発。SiRから15馬力パワーアップし185馬力を実現しました。

エンジンだけでなく外観も専用のフロントアンダースポイラーやリヤアンダースポイラーを装備し、シフトノブはチタン製削り出しを装着。フロントシートは現行モデル同様、赤で仕立てられています。
2代目(2001年)
シビック タイプRの2代目が登場したのは2001年。初代とは異なりイギリス工場で生産される輸入モデルとなります。
国内生産されなかった大きな理由は7代目シビックの国内モデルには3ドアハッチバックが用意されなかったこと。欧州モデルに設定した3ドアハッチバックをベースに開発されたタイプRは、K20A型2リッター直4DOHCエンジンを搭載しました。

同エンジンの最高出力は215馬力。排気量が拡大したことや軽量フライホイールを採用したことなどでパワーアップしたのはもちろん、エンジンレスポンスも大きく向上しています。
3代目(2007年)
“あえて”シビックらしい3ドアハッチバックにこだわった先代からシビック タイプR初となる4ドアセダンとなった3代目。
8代目シビックにハッチバックモデルがなくなってしまったことが大きな要因でしたが、3代目は現行モデルにも通じるサーキットで速いスポーツカーを目指し開発されました。

パワーユニットは先代同様K20A型2リッター直4DOHCエンジンを搭載。ただ圧縮比を高めたことや排気系を見直すなどで最高出力は225馬力まで高められています。
高められたパワーを受け止めるサスペンションも強化されていますが、3代目はガチガチにかためられていたのが特徴。サーキットでは異次元の速さを誇る一方、街乗りでは扱いづらいデメリットも有していました。
タイプRユーロ(2009年)
セダンとなった3代目とともに、8代目シビックをベースとしたタイプRはもう1台ありました。国内投入時期を踏まえると3.5代目ともいえるタイプRユーロとは2代目同様、欧州仕様の3ドアをベースに開発されました。

3代目同様、K20A型エンジンを搭載していましたが、最高出力や最大トルクをおさえたことで走りはマイルド。2010台の限定発売でしたが、しゃかりきに速さを追求した3代目よりスタイリッシュなうえオールマイティに楽しめるスポーツカーとして人気を博しています。
4代目(2015年)
タイプRのベースとなる9代目シビックが国内で販売されなくなったことで、4代目は2代目やタイプRユーロ同様に欧州仕様(5ドアハッチバック)をベースに開発されました。
国内で750台の限定販売となった4代目は先代同様、サーキットでの速さを追求。ニュルブルクリンクで7分50秒63と当時のFF車としては最速のラップタイムを記録しています。

欧州仕様の5ドアハッチバックから、フロントオーバーフェンダーや大型リヤスポイラーなどを装備したエクステリアデザインは迫力満点。装着されたエアロパーツは見た目だけでなく空気抵抗を抑えるなど、高速走行に寄与しました。
パワーユニットはK20C型2リッター直4DOHCターボエンジンを搭載。最高出力310馬力と、先代モデルから大幅にパワーアップされています。
5代目(2017年)
限定販売となった4代目の後継モデルとなった5代目は、ベースのシビックとともに国内で通年販売となりました。
先代同様、5ドアハッチバックとなった5代目は引き続き、K20C型2リッター直4DOHCターボエンジンを搭載。燃焼効率を高めたことなどで、最高出力は320馬力までパワーアップしています。

5代目は先代同様、ニュルブルクリンクのラップタイムにこだわり7分43秒80と大幅にアップすることを実現。電子制御アダプティブダンパーやトリプルエキゾーストシステムを採用したことや、リヤサスペンションをマルチリンク式に変更したことなどが貢献しています。
まとめ
2022年に登場した現行型シビック タイプRは高い人気を博し、現在、新規受注を停止しています。
同車は月産400台と発表されていましたが半導体不足による生産の遅延によることや、2022年末の段階で約2万台の受注があったことが原因。ただ、スポーツカー離れが進むなかこれほどの人気を得ていることが驚きです。

その人気は今回紹介した歴代モデルが長年に渡って培ってきたことは間違いないでしょう。
ミニバンやSUV、軽スーパーハートワゴンが販売の主役となったホンダですが、同社が持つレーシングスピリットを元に妥協を許さず走りを追求したシビック タイプR。他車とは違う至高のFFスポーツとして、ファンから熱狂的に受け入れられています。