この記事をまとめると
■BMWは要人警護ドライバー向けのドライビングレッスンを開催している■賊の襲撃や銃撃への対処を訓練している
■悪路でのドライビングレッスンも含まれている
要人を警護するドライバーのためのドライビングレッスン
自動車メーカーが催すドライビングレッスンはカリキュラムが上質で、また自社が展開するクルマにあわせてわりと個性的なものが多いかと。サーキットやテストグラウンドを舞台に、公道では遭遇しないようなシチュエーション、あるいはハイスピードのドリフトなど、ある種の極限状態すら体験できることはご承知のとおり。
また、最近ではプロのショーファー、つまり要人を乗せて運転する方々向けのレッスンというのも増加傾向にあるようです。
そんなセキュリティに特化したドライビングレッスンの筆頭は、なんといってもBMWにとどめを刺します。なにしろ、不意の爆発や脅威を排除するための衝突方法など、トム・クルーズも驚くようなアクションムービーさながらのレッスンなのですから。
BMWがセキュリティドライビング、すなわち要人警護ドライバー向けレッスンを行うのは、とにもかくにもBMWがそうした場面で乗られることが多いからにほかなりません。また、同社は「駆け抜ける歓び」をキーコンセプトに謳うだけあって「危機状態」だって駆け抜けることができるというアピールにもなることでしょう。
会場となるのはヨーロッパでもっとも有名な車両安全試験・検査センター、ベルリン近郊のグロース デルン(Groß Dölln)にあるトレーニングセンター。かつて軍用飛行場だった場所を最先端のテストトラックに改造し、2002年から操業しています。
ここで開催されるBMW警備車両訓練コースの目的はただひとつ、ドライビングテクニック、戦術的知識をマスターすることで、極端な状況でも安全かつ自信を持って行動できるようになること。コースはベーシックとなるレベル1と、より危機的で極限的な状況を想定したレベル2が用意され、全行程は5日間におよぶトレーニング。

レッスンに使用されるクルマはBMW7シリーズ、むろん要人警護向けの特別車両であることはいうまでもありません。防弾・防爆仕様、ランフラットタイヤ、その他の警護デバイスを含めると1トン近くの重量増しとなるため、普通のリムジンとは運転の仕方がだいぶ異なるわけです。
初日のトレーニングには、緊急ブレーキや回避操作といった基礎的な運転で、ここまでは想定内(笑)ですが、夜間に行われる地図が用意されていないルートでの不意の爆発には誰もが度肝を抜かれるはず。

2日目になると、高速ハンドリングに加え、曲がり角でのドリフトを含めた操縦方法を筆頭に、車両への攻撃を想定した脱出手段のレッスンが用意されています。実際、賊のクルマが衝突してくるそうで、回避手段や、衝突される際に安全とされる角度や、ダメージを受けてもクルマが走れるようなぶつかり方を学びます。

くどいようですが、レッスンでは7シリーズの実車を使うわけですから、この体験は貴重なものに違いありません。
要人警護レッスンはオフロードでも行われる
ベーシックコースだけでも十分かと思いきや、BMWはさらなるレベルアップを用意しています。レベル2、上級コースは3日間のカリキュラムとなり、火災下での操縦と車両接触を伴うドライブシミュレーション、花火を用いた模擬銃撃や夜間の待ち伏せなど、より実践(実戦?)的となるのが特徴。

この際、ドライバーのストレス耐性や集中力もテストされるといいますから、ちょっとした海兵隊の訓練並みといったらオーバーでしょうか。
さらに、BMWセキュリティドライブレッスンはオフロードトレーニングまでカバーしています。やはり、脅威は街中なかだけではすまないわけで、砂漠や悪路での攻撃に対するスペシャルなテクニックも必要というわけです。
ここではX5プロテクションVR6と呼ばれる特別な防護装備を施したマシンが用意され、転倒アングルのシミュレーションに始まって、直角に近い上り下り、さらには砂上での緊急回避、起伏の多い路面でのハイスピードレッスンといったカリキュラム。

このスペシャルマシンも1トン近い防護装備が載せられているため、独特なテクニックが求められることはいうまでもないでしょう。
また、BMWはこうしたレッスンで用いるプロテクションカーのアピールも熱心です。

むろん、X5プロテクションVR6も同様で、アダプティブMシャシー、Mスポーツディファレンシャルなどを重量増ししたボディに最適化。最高出力530馬力のV8エンジンと相まって、オフロードでの危機も余裕で駆け抜けられるはず!

個人的にはシャシーの下で爆発→崖っぷちまで吹き飛ばされつつ、片輪走行で切り抜け→高速Jターンを決めた後で敵のクルマに体当たり、なんてレッスンを受けてみたいもの。もっとも、本音をいえばこうした物騒は映画のなかだけにしてほしいですけどね(笑)。