この記事をまとめると
■シートにはヘッドレストが一体型のものと調整式のものが存在する■ヘッドレストが一体になったシートはスポーツカーやコスト重視の商用車に多い
■ヘッドレストが調整されていないと追突事故時の頸部無傷率が2分の1になる場合もある
ヘッドレストの役割とは
保安基準では「頭部後傾抑止装置等」と呼ばれ、装着義務のあるヘッドレスト。Head Restraintは「頭を拘束する」という意味があり、 Rest=「休息」=枕という意味ではない。
交通事故全体の3分の1が追突事故で、追突事故が起きると、追突された方の多くがいわゆる鞭打ち症になることがわかっていて、ヘッドレストはその鞭打ち症の発生を低減するのに非常に効果的であることがわかっている。
ただし、それはヘッドレストの位置が適正だった場合に限られる。
ヘッドレストには、大きくわけてふたつのタイプがあり、ひとつはモータースポーツでおなじみのバケットシートなどのようにシートと一体になっているタイプ。もうひとつは高さの調整が可能で、取り外しも可能な差し込み式のヘッドレスト。
安全性に関しては、「正しく」使用すればどちらも大きな違いは見られないが、コストや使い勝手には違いがあるのは事実。
一体式は、スポーツシートでは定番だが、商業車や低価格帯のクルマにも多いタイプ。部品点数が少ないのでコスト的に有利である反面、後部座席からの前方視界は悪いし、ヘッドレストが外せないので、フルフラットシートにはできないなどのデメリットが……。

一方、差し込み式のヘッドレストは乗用車ではメジャーなタイプ。差し込み式にすることで、シートアレンジや意匠的な自由度が増えるのが特徴。
また、安全面を考えると、ヘッドレストは大きいほうが望ましいが、ヘッドレストの大きさは後席からの視界確保とはトレードオフになり、リヤシートのヘッドレストは、後方視界の妨げにもなるので、可倒式を採用しているクルマもある。
反面、コスト的には不利なのと、ヘッドレストの高さをきちんと調整しないと効果が半減するのが大きな欠点。

しっかり調整しないと事故時の怪我率が大きく異なる!
ヘッドレストが適正位置に設定されていないと、追突事故時の頸部無傷率が2分の1になってしまうというデータもある。
差し込み式のヘッドレストのクルマは、ヘッドレストの中心が両耳の一番上のあたりになるよう、確実に調整したい(頭を後ろに傾けたときにヘッドレストの上部に乗り上げてしまうような高さはキケンだ)。

そうした安全面でいえば、アクティブヘッドレストだとさらに効果的。
アクティブヘッドレストは、後方から衝突された際、乗員の腰がシートバックを押すことで、内蔵された機構が作動し、ヘッドレストが斜め上方に移動する機構。こうした仕組みで、衝突時の首を曲げようとする力(モーメント)が約45%も低減するとされる。

まとめると、ヘッドレストは、一体式、差し込み式を問わず、適正な高さ(ヘッドレストの中心が両耳の一番上のあたり)で、車両前方=できるだけ後頭部とのクリアランスを狭く設定するのがベスト。

ちなみに、運転席・助手席のヘッドレストを外して走行するのは、保安基準違反になるので要注意。
ヘッドレストの役割をよく考えて、もう一度愛車のヘッドレストの位置を確認してみよう。