この記事をまとめると
■減衰力とはサスペンション内のピストンバルブが上下動する際に発生する抵抗を指す■減衰力の強弱によってサスペンションの伸び縮みの速度を調整することができる
■走り方や走る場所に応じて減衰力を調整することでクルマの動きも調整したい
減衰力の強弱でクルマの乗り心地が変わる!
車高調の減衰力調整ダイヤルはクリックをまわすだけで乗り心地やハンドリングを変えられる。では、この減衰力とはなんなのか。
まず、サスペンションはスプリングとダンパーに分かれる。
スプリングだけでも理論上はクルマは走れるのだが、上下の振動が収まらなくなってしまうことがある。そこでその動きを弱めるためにダンパーが付けられている。ダンパーの内部は簡単にいうとオイルが入っていて、そのなかを穴空いたピストンバルブが入れられ、サスペンションが動くとピストンバルブがオイルのなかを上下するようになっている。
オイルのなかをレンコンのような穴の空いたピストンバルブが上下することでそこに抵抗が生まれる。これが上下動を弱める=減衰させていく役割をもつ。これを減衰力と呼んでいるのだ。

このピストンバルブの穴にはシムという薄い金属で蓋がされていれ、減衰力を強めている。このシムを押して蓋を開けることでオイルが流れる。このときには強い減衰力が発生する仕組みだ。
減衰力が強ければサスペンションはジワッと動く。

サスペンションが伸びる側も減衰力が動きを抑えている。減衰力が効いているとブレーキを踏んでからスッとペダルを抜いたときにクルマのノーズはジワッともち上がる。落ち着きがある動きになる。減衰力が強すぎるとなかなかフロントサスが伸びてくれず、軽快な切り返しがしにくかったりする。

そういった力が減衰力。サスペンションを硬くしたり柔らかくしたりするものではなく、沈むときと伸びるときのスピードを変えるものが減衰力なのだ。
クルマの動きに合ったところを探しながら調整することが大事
減衰力調整ダイヤルはこのピストンバルブのついているシャフトの中心に穴が開けられていて、そこからもオイルが行き来するようになっているが、その穴をニードルと呼ばれる棒で締めたり開けたりすることで減衰力の一部を変えることができる。減衰力すべてが変わるわけではなく、バイパスしている部分の調整。

また、機構的に減衰力調整がひとつのモデルだと、伸び側の減衰力が主に変わり、縮み側の減衰力は少しだけ変わることが多い。これはそういった機構に設計されているから。
調整ダイヤルがふたつついていて、縮み側と伸び側を別々に調整できるが2ウェイと呼ばれるもの。さらに3ウェイだと縮み側が素早く縮むとき(高速側)とゆっくり縮むとき(低速側)の調整と、伸び側の調整がある。

伸び側と縮み側のどちらも低速側と高速側の減衰力がいじれる4ウェイという構造もある。
減衰力調整はサスペンションの伸び縮みの速度を変えるものなので、サーキットに行ったからイコール減衰力を強めるというのは正解ではない。むしろサーキットでは素早くブレーキをして姿勢を変化させ、そこから素早く旋回姿勢にして曲がりたい。そうなると減衰力が強いと姿勢が変わるまでに時間がかかってしまう。
だが、速度が上がってクルマの姿勢変化が大きくなり、それを抑えるために減衰力を強めたいこともある。なので、どちらもありえるということ。サーキット=減衰力を強めるという図式ではないのだ。

減衰力はクルマの動きを調整するためのもので、タイヤやホイール、ボディとサスペンションが動くときの速さをバランスさせるためにある。調整機構があるなら普段乗りから調整して、クルマに合ったところを探してもらいたい。
サスペンションメーカー側では前後同じ段数でバランスが取れるように設計、調整はしているが、必ずフロントが10段戻しだったらリヤも同じにすればバランスが取れるわけではないので、フラットな気もちでクルマの動きに合わせて調整してもらいたい。