この記事をまとめると
■新車ではすっかりおなじみになった「先進運転支援システム」■スバルのアイサイトの登場により一気に普及と進化が進んだ
■海外メーカーも追従したことで技術の差は少なくなった
アイサイトが運転支援技術を大幅に進化させた
「トヨタセーフティーセンス」、「ホンダセンシング」、「日産プロパイロット」、「スバル アイサイト」など、日本のユーザーにはすっかりお馴染みとなった名称だろう。
これらは、先進運転支援システム(アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム)で、頭文字をとってADAS(エイダス)と呼ばれる。
こうした先進運転支援システムは海外メーカーの最新モデルでも採用されているが、日本の技術は海外と比べて進んでいるのだろうか?
そうした点を考える上で、少しだけ時計の針を戻す。
日本で先進運転支援システムに対する注目が集まったのは、2000年代後半の「スバル アイサイト」の量産化が大きなきっかけだ。アイサイト登場までの経緯は、直近ではNHK「新プロジェクトX~挑戦者たち~」などで詳しい。
筆者は2000年代からこれまで、アイサイトの進化をスバル関係者との定常的な意見交換によって詳しくみてきた。
その上で、2000年代後半時点では、日系メーカーではスバルが明らかに先進運転支援システムの開発で他社を先行していたことを思い出す。
テレビCMの効果もあり、アイサイトの市場での認知度が徐々に上がり、「うちのユーザーが最近、アイサイトによってスバルに流れている」(トヨタ販売店関係者)といった声があがり始め、トヨタ本社としても先進運転支援システムの多モデル対応を急いだ。
海外メーカーも運転支援技術の採用が相次ぎ技術革新が進んだ
こうした技術領域の技術者が集まる各種会合に参加してきたが、2010年代前半時点で国内メーカー各社関係者は「アイサイトの成功が、国内市場での先進運転支援システムの進化を後押しした」という共通認識があった。
一方、海外での先進運転支援システムのブレークスルーは、イスラエルのベンチャー企業「モービルアイ」だ。アイサイトが複眼のカメラ(ステレオカメラ)を用いるのに対して、単眼カメラによる画像認識技術がモービルアイのウリだった。
同社のエルサレム本社を単独取材したことがあるが、同社創業者らは最初、日本各地を巡り自動車メーカー各社に技術支援を求めたが実現せず、唯一興味をもってくれた日本の大手部品メーカーの支援によって初号機を開発したという。
その後、モービルアイは独自開発技術を確立し、ボルボやGMなど欧米企業が先進運転支援システムとして採用して一気に需要に火がついた。
2010年代半ばになると、欧州の新車アセスメントであるユーロNCAPで、歩行者保護の観点で予防安全技術が試験項目に加わったことをきっかけに、日本を含めたグローバルでのNCAPで予防安全技術が重視されたことで、日米欧韓中を主体としたメーカー各社の先進運転支援システムの進化が早まり、技術的にも以前に比べてメーカー間の技術の差が少なくなっていく。
さらに、国連の欧州委員会における自動車基準世界フォーラム(通称WP29)で、先進運転支援システムを含む広義での自動運転技術に関する国際基準や標準化の議論が高まっており、日本と海外での同分野の技術の差は以前より少なくなったといえる。
それでも、いまだに先進運転支援システムでは、メーカー間の技術差は存在し、ユーザーはその効き味の差を実感することができることも事実だ。