この記事をまとめると
■BYDはGIIAS2024でMPVスタイルのBEV「M6」の正式発売をアナウンスした■「e6」と呼ばれるモデルも存在し「M6」の廉価モデルという位置付けだ
■BEVでありながら安価ということもありトヨタなどをライバル視しているとみられる
BYDが発表した新モデルに違和感あり!?
中国BYDオート(比亜迪汽車)は、7月18日から28日の会期にて、インドネシアの首都ジャカルタ近郊で開催されたGIIAS(ガイキンド・インドネシア国際オートショー)2024の開幕日前日に会場内で行われたプレスカンファレンスにおいて、多人数乗車が可能なMPV(多目的車)スタイルのBEV(バッテリー電気自動車)となる「M6」の正式発売を発表した。車両価格は3億7900万ルピア(約368万円)からとなっている。
M6は筆者が海外各地の街角で見てきた限りでは、同じBYDの「e6」というモデルによく似ている。
2021年に生産終了となり現行2代目へと引き継がれている。初代e6の流れを受け継ぎ2代目もフリート販売専用モデルのような存在となり、筆者が見てきた限り、e6はタイやインドネシア(筆者が確認した限りではまだ初代のみのようだ)ではタクシー車両として採用されている。
現行2代目は2021年にデビューしている。中国国内におけるBYDの宋ブランドの「宋マックス」の海外向け仕様と考えてもらえばわかりやすいだろう。そして、調べてみるとe6は、右ハンドル市場でのみラインアップされているということである。タイではすでにタクシー車両として、2代目もバンコク市内では多く見かけることができる。それではこのe6とM6の関係はというと、じつはBYDにはかつてM6というモデルが存在していたので、まずそこから紹介していこう。
2010年から2017年の期間でラインアップされていたM6は、丁寧な表現を使えば、トヨタの3代目エスティマにインスパイアされたモデル。つまり、わかりやすくいえばコピー車といってもいいモデルであった。いまでこそBYDはBEVの世界的トップブランドとなっているが、現在のBYDは、BYDオートの親会社であるBYD(比亜迪股份有限公司)の子会社であった「西安泰川汽車有限公司」が倒産し、BYDオートと社名変更。
当初は主にトヨタ・カローラセダンのコピー車「F3」など、「どこかで見たような」といいたくなるようなICE(内燃機関)車ばかりで、そのなかにM6もあった。初代M6は1.5リッターと2リッターエンジンを搭載するICE車であった。

BYD M6はBEVでありながらトヨタのHEVよりも安い!
e6とM6の関係については、あくまで筆者の見方となるが、e6がタクシーなどフリート販売にも対応したシンプルなモデルなのに対し、M6は一般ユーザーや企業幹部用車両としてe6の豪華版として存在するのかもしれない。
すでにインドネシア最大手のタクシー事業者である、「ブルーバードグループ」は2024年4月にe6の導入を発表している。

e6であろうがM6であろうが、タクシー以外の法人需要が目立つモデルのような印象も受けるが、会場内BYDブース壇上に展示してあったM6の実車にはいつも人が集まっていた。核家族化が進むものの、いまでも多世代同居が目立つインドネシアでは、3列シートをもつMPVニーズは高い。その意味ではBEV専用MPVというのは多くのインドネシアの人の注目を集めていたのかもしれない。
地元メディアでは、3列シートを採用するMPVで絶大な人気とステイタスを誇る、トヨタ・イノーバ ゼニクスと比較する報道も目立っていた。

2リッター新世代ダイナミックフォースエンジンベースのハイブリッドエンジンを搭載するイノーバ ゼニクスの価格は4億7760万ルピア(約450万円)からとなっている。
M6はイノーバ ゼニクスとボディ寸法はそんなに変わらない。それでいてBEVでありながらM6は安価だ。
最大手のタクシー事業者「ブルーバードグループ」では、トヨタのコンパクトMPV(アバンツァ)ベースの営業車両「トランスムーバー」の最新型車両を2024年に入って導入をはじめたばかり。もしかして、e6がトランスムーバーにとって代わってしまうのか? とも思ったが、トランスムーバーは価格が2億ルピア近辺(約195万円近辺)ということなので、e6であってもトランスムーバーの存在を揺るがすような価格にはならないだろうから、あくまで「BEVタクシー」というカテゴリーで、いま導入されている初代e6タクシーを現行e6へ入れ替えることになるようである。

ただし、価格をメインにM6のキャラクター分析をすると、アバンツァとイノーバ ゼニクスの中間に位置し、しかもBEVとなるので、なかなか微妙なポジションとなり隙間的なニーズをつかむことができるかもしれない。さらに、インドネシアでニーズの高いMPVスタイルとなるので、ジャカルタ首都圏など都市部以外でのBYD製BEV車の旗頭として販売促進にもつながるかもしれない。タクシーやライドシェアニーズを狙ったe6とセットで攻めてくるあたりは、BYDらしい周到な販売戦略というものを感じる。