この記事をまとめると
■DAFとMANは欧州で人気のトラックブランドだ■現状日本には導入されていない
■日本市場への参入にはいくつかのハードルがある
想像以上にハードルが高いトラックの輸入
日本に正規輸入されていないクルマを並行輸入で仕入れて販売している業者も存在するが、それらは日本に現地法人など正規輸入業者が存在して、日本にはないグレードや仕様を輸入するケースが多い。
日本未入荷となる乗用車ブランドの並行輸入車は極端に少ない。それは、正規ディーラーがあれば、日本には導入されていないモデルでも、パーツの手配やメンテナンスを受けられる場合がある(海外メーカーの現地法人では対応してもらえる場合がある)からだ。
一方で、乗用車よりもさらにシビアなのがトラックの世界。週末しか乗らないユーザーも多い乗用車と違って、毎日何かを運ぶトラックは走行距離が多いだけでなく、使われている時間も長い。
コンビニなどの配送用に使われている小型トラックは、3人のドライバーによって24時間休みなしで走り、商品を配送してまわるような使われ方をしているケースもある。それゆえ、トラックはタフな作りをしているだけでなく、メンテナンス性も十分に確保されている必要があるのだ。ここでいうメンテナンス性とは、トラック自体の整備のしやすさだけでなく、部品の入手のしやすさや整備拠点の配置など、車両をメンテナンスするために必要な要素の充実ぶりを示す。
乗用車であれば、他メーカーの車両も整備することは可能だが、大型トラックは専用の整備拠点が必要だ。それだけの投資をするなら、ある程度の販売台数が確保できなければ、工場の稼働率も上昇せずに業績は悪化してしまう。
日本という島国で大型トラックを販売するというのは、想像以上にハードルが高いのである。スカニアやボルボが日本で販売体制を維持しているのは、どれだけ凄いことなのかわかるだろう。
購入後のサポートについても考える必要がある
オランダのDAFやドイツのMANというトラックメーカーは、どちらも欧州では支持されているトラックブランドだが、ボルボやスカニアほどの独創性はもち合わせていない。日本にも優れたトラックメーカーがある以上、独創性がなければ高いだけの輸入トラックに甘んじる可能性もある。
さらに、日本市場に進出するためには、単に新車のトラックを輸出して日本に上陸させるたけでなく、メンテナンスなどのサポート体制も十分に敷かなければならない。投資しても採算が取れるようになるには、長期的に考える必要があり、リスクを考えると欧州から遠い日本の市場でビジネスを展開するのは難しいのだ。

日本に近い中国メーカーのトラックも日本市場には上陸していないが、これも価格は安いものの、輸入コストを考えると価格面のアドバンテージは薄くなるから。それに、環境性能などで日本市場向けに対応するのは根本からパワートレインを見直さなければならなくなる。中国製のEVは日本市場に投入されたが、売れ行きはいまひとつのようだから、普通のトラックを持ち込んでも成功する可能性は低いだろう。
日本のトラック市場に参入するのは、かなりハードルの高いビジネスなのである。逆にいえばそんななかで、スカニアとボルボは健闘しているといえるだろう。少数派とはいえ、日本国内にしっかりとファンを増やしている。
たとえ価格が高くても、日本のトラックより故障が多くても、運転が快適であったり機能が充実していれば満足感は高くなる。スカニアやボルボの戦略は、まさにそれがあるからこそ、なのだろう。