この記事をまとめると
■軽ハイトワゴンにSUV的要素を加えたモデルを各社が用意している



■デリカミニとスペーシアギアはヒットモデルとなっている



■クロスオーバーSUV風派生モデルによって軽自動車の車名別販売ランキングはさらに熾烈になる



スペーシアギアのモデルチェンジとN-BOX JOY登場で競争激化

スズキから新型スペーシアギアが発売された。リヤスライドドアを採用するハイトワゴンタイプに大きな丸目ヘッドライトを採用するなど、SUV的要素を加えたのがスペーシアギアで、初代モデルは2018年12月末に発売となっている。



いま軽の販売バトルは「クロスオーバーSUV」に託された! ス...の画像はこちら >>



筆者も仕事で新車ディーラーを訪れ、実際にハイトワゴン系軽自動車の見積りをとろうとすると、標準仕様にするか、ギラギラとしたカスタム系を選ぶかで相当迷うことになる。

いい歳をしたオジサンがそのような趣向もないなか、カスタム仕様のハイト系軽自動車に乗るのはなかなか勇気のいることと個人的には感じている。



それにも増して勇気がいるのが標準仕様を選ぶこと。「ママのクルマ」的なアピールを強くしてくる標準仕様のハイトワゴン系軽自動車は、カスタム系にも増して選ぶことには勇気がいると感じている。先代までのホンダN-BOXの標準車が強めに中性的なオーラを醸しだし、シルバーメタリックなど地味な色も似あっていると感じていたのだが、現行モデルではややライバル車の標準モデルに近いキャラクターとなってしまったのは、販売戦略上はやむを得なかったのかもしれない。



いま軽の販売バトルは「クロスオーバーSUV」に託された! スペーシアギア&N-BOX JOY途上で風雲急を告げるハイト軽市場!!
ホンダN-BOX(3代目)のフロントまわり



そのなかで、スペーシアギアは、標準車でもなければ、カスタム系でもなく、さらに人気の高いSUV的雰囲気をもっているということで、ハイトワゴン系軽自動車の購入を躊躇しているような人の囲い込みに成功している。



2023年5月に三菱自動車から「デリカミニ」が発売となっている。一見するとスペーシアギアと同ジャンルにも見えるが、デリカと名乗ることもあるのかこだわった部分もあり、スペーシアギア(初代)より割高な価格設定だが、デリカミニはいまでは三菱軽自動車の稼ぎ頭となっている。ただ、今後は新型スペーシアだけではなく、ホンダからもクロスオーバーSUV色をもったN-BOX派生モデル「JOY」が登場したから、いまのような好調な販売を維持するのは難しいとの見方もある。



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三菱デリカミニのフロントまわり



「『デリカ』という車名にシンパシーを感じる人は、デリカD:5ユーザーといってデリカファンなど一部に限られるでしょう。デリカミニのヒットは、CMに登場する『デリ丸』というキャラクターの存在が大きいともいわれています」とは事情通。



新規顧客の開拓が期待されるクロスオーバーSUV風派生モデル

また、単に「それっぽく」見せているスペーシアギアなのだが……、「スズキには唯一無二のジムニーがあります。メーカーが声高に叫ばなくても消費者のなかには『ジムニーの血筋をひいている』などといったイメージをもち、それが販売促進のための『隠れた効果』にもなっているでしょうね。

また、セールスマンのなかにはセールストークに何気なくジムニーという車名を出したりしているのではないでしょうか。ハスラーはそれなりのメカニズムも採用しているので、まさに『手軽なジムニー』としてヒットしました。スペーシアギアはそれ以上にイメージ優先で考える人を惹きつけたともいえ、新型でも十分それは期待することができます」(事情通)



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スズキ・スペーシア ギア(3代目)のリヤまわり



デリカミニにはデリカがあり、スペーシアギアにはジムニーがあると考えると、N-BOX JOYには後ろ盾がないともいえる。ただ、ホンダはすでにフィットやフリードなどでのクロスターシリーズ(クロスオーバーSUVっぽいシリーズ)で成功を収めているので、ホンダなりの「見せ方」で勝負するだろう。



ダイハツには「タントファンクロス」というモデルがラインアップされているのだが、このモデルはライバル車に比べるとSUVっぽさが抑え気味になっており、市場の反応もいまひとつのように見える。しかし、それでもタントの標準車かカスタム系かで悩むひとの受け皿としての効果は十分に発揮しているようである。



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ダイハツ・タント ファンクロス(4代目)のフロントまわり



スペーシアには商用仕様となるが「スペーシア ベース」というモデルもある。あえて商用仕様とすることで、リヤスペースの使い勝手を多様化し、移動販売車、アウトドアだけではなく、移動オフィスとしても使えるとしている。「お父さんの隠れ家」のようにも見え、筆者も仕事でディーラーに見にいったが、単純にいいなあと思ってしまった。



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スズキ・スペーシア ベースのフロントまわり



軽自動車なので価格面でもシビアに見られてしまう。そのなかでは「いかに変えずに変わっているように見せるか」という部分も大切となってくる。直接ジムニーの何かがフィードバックされているわけではないだろうが、ジムニーという存在もあって、スペーシアギアは多くの人を惹きつけるようである。



スペーシアギア、タントファンクロス、そしてN-BOXJOYはいずれも派生車種となっているところにも注目してもらいたい。つまり、販売メインとなるハイトワゴン系軽自動車の販売台数積み増しになるのである。ちなみに現行スペーシアギアの月販目標台数は2000台なので、スペーシアシリーズに2000台が上乗せされることを想定してる。



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スズキ・スペーシア(3代目)の2台並び



派生車種の人気、そしてそれによる販売台数の上積みも、今後の軽自動車の車名(通称名)別販売ランキングトップ争いを熾烈なものとさせていきそうである。単純にそれまで同名車の標準仕様やカスタム系モデルから乗り換えてもらうのでは存在意味はない。新規に買ってもらうひとをどれだけ引き込んでくるかが、ハイトワゴン系軽自動車のクロスオーバーSUV風派生モデルには使命として課されているのである。

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