この記事をまとめると
■初代スープラ(A70型)は1986年にセリカXXがモデルチェンジして誕生した■複数のボディタイプ・エンジン構成で多彩なバリエーションをもっていた
■当時のトヨタらしさを体現するスポーツフラッグシップモデルといえる
スープラの初代モデルをいま振り返る
「スープラ」と聞いて、どんなカタチのクルマを思いつくだろうか。BMWと共同開発した現行型はもちろん、映画『ワイルドスピード』でファンを増やした先代A80型が頭のなかに浮かんでくるという人も多いだろう。
しかしながら、2024年の秋にもっとも注目度の高かったスープラといえば、1986年に発売開始された初代スープラではないだろうか。

高市議員の愛車だったというスープラは2.5リッター直列6気筒ターボを積む、最終型に近いグレードだったという。日本では初めて「スープラ」という名前を与えられた、このA70型は7年ほどのモデルライフにおいて、多彩なバリエーションを展開したジャパニーズ・スポーツカーとしても印象深い。そんな初代スープラの変遷を振り返ってみよう。

デビューは1986年2月。直列6気筒エンジンを縦置きにして、4輪ダブルウイッシュボーン・サスペンションを与えられたFRスポーツカーとして誕生している。車名としてはブランニューモデルとなるが、じつはそれまで「セリカXX」と呼ばれていたモデルがフルモデルチェンジにあわせて、グローバルネームを名乗ったというのが実態で、そのあたりは当時のユーザーも自然と受け入れていた。
報道によると高市議員も中古で買ったセリカXXから新車のスープラへの乗り換えだったというが、まさにスープラファンの典型例といえるだろう。

現在のスープラは、全グレードがターボエンジン(4気筒と6気筒)となっているが、70スープラのデビュー時に用意されたエンジンはすべて直列6気筒エンジン。2リッターSOHC NA(105馬力)、2リッターDOHC NA(140馬力)、2リッターDOHCツインターボ(185馬力)、3リッターDOHCターボ(230馬力)とじつに多彩だった。

その背景には税制の問題がある。1986年当時は5ナンバー(小型乗用車)と3ナンバー(普通乗用車)で自動車税の税額が大きく異なっていた。
そのため、初代スープラの2リッターエンジン車については全幅1695mmのナローボディとなっていた。そして、3リッターターボ車には1745mmのワイドボディを用意していた。

多彩なバリエーションが用意されていた
じつはスープラという名前は北米市場で以前から使われているものであり、すなわち同モデルの主戦場は北米であった。彼の地におけるスポーツカーへのニーズはストイックなものではなく、もっとカジュアルに楽しんでいるのはご存じのとおり。
その象徴といえるのがルーフパネルを取り外してオープンドライブが楽しめるタルガトップで、ポルシェ911やシボレー・コルベットなどでお馴染みだろう。初代NSXにもタルガ仕様は設定されていたほど、北米で販売するには必須アイテムだったといえる。

当然ながら初代スープラにも「エアロトップ」と呼ばれるタルガトップ仕様がラインアップされていた。いまであれば最上級グレードにしか設定がなくても不思議ではないが、当時はワイドボディだけでなく、ナローボディでもエアロトップが選べるようになっていた。前述したエンジンの豊富さと合わせて、本当にさまざまなスープラが街なかを走っていたのが1980年代だったのだ。
前述した3ナンバーの高額税制は、1989年(平成元年)より改正され、排気量によって決定されることになり、実質的にボディサイズによる自動車税への影響はなくなった。これにより2リッターエンジンとワイドボディの組み合わせも誕生している。
1990年には当時の自主規制である280馬力を発生した2.5リッターDOHCツインターボを搭載したグレードも誕生。スペック的には、これが初代スープラの最強グレードとなる。

しかしながら、初代スープラにおいて伝説的グレードとなっているのは、1988年に誕生した「ターボA」だろう。名前に使われた“A”はグループAのホモロゲーションモデルであることを示すものであり、全日本ツーリングカー選手権へ参戦するために500台限定で生産された特別なグレードだ。

エンジンは270馬力にパワーアップされた3リッターDOHCターボで、ハイパワー化に対応してフロントバンパー中央に3連ダクトが新設されたのが外観でのチャームポイント。この通称「ターボAダクト」を真似たカスタマイズが、スープラファンの間では定番となったのはいうまでもないだろう。なお、同タイミングでスタンダードな3リッターターボは240馬力となっている。

まとめると、初代スープラには、ナローとワイドのふたつのボディがあり、それぞれにタルガ仕様の「エアロトップ」が用意されていた。エンジンは、2リッターSOHC、2リッターDOHCのNAエンジンがあり、2リッターと2.5リッターのツインターボ、そして3リッターターボが最高峰に位置づけられていた。スペック違いで数えると10種類以上のエンジンが用意されていたほどだ。本当に選択肢が豊富で、当時のトヨタらしい“かゆいところに手が届く”グレード構成のスポーツフラッグシップモデルといえるだろう。