この記事をまとめると
■ホンダと日産が経営統合に向けた協議を正式に開始した



■三菱もホンダと日産の統合に加わるかどうかを検討している



■2026年8月にホンダと日産による共同持株会社の設立を目指す



ホンダと日産が経営統合に向けて協議を開始

日産とホンダが経営統合に向けた“協議を正式に開始”することについて基本合意書を締結。三菱自動車は、その経営統合へ参画・関与するか3社協業形態の検討に関する覚書を締結したことが、2024年12月23日夕刻に発表された。



内々の話になるが、メディア向けに記者会見の案内が届いたメールのヘッダーでは「日産自動車、HONDA、三菱自動車」という3社の並びとなっていた。

そのため、日産がリーダーシップを取るかのような第一印象もあった。



ホンダと日産が経営統合を検討! あくまで立場は同等も「ホンダ...の画像はこちら >>



しかしながら、記者会見が始まると、その印象はガラリと変わった。日産・内田社長、HONDA・三部社長、三菱自動車・加藤社長と案内どおりの並びで登壇すると、中央の三部社長が目指すべき経営統合の具体的な姿を示すなど、現時点では圧倒的にHONDAがリーダーシップを取っていることは明らかだった。ちなみに、記者会見の司会は本田技研工業の広報部が担当していた。これもHONDA主導なっていることを感じさせた。



ホンダと日産が経営統合を検討! あくまで立場は同等も「ホンダ主導」が見える会見
ホンダの三部社長



気をつけたいのは、今回のニュースについて、報道の見出しだけを見ていると、「ホンダと日産が経営統合を発表した!」と思ってしまうかもしれないが、そうではないということだ。あくまで2024年12月23日に、経営統合に向けた基本合意書を締結、協議していることを明らかにしたという段階である。



ご存じのように、すでにホンダと日産は、電動化やSDVといった領域での協業を進めている。さらに仕向け地によってはラインアップの相互補完を検討することを発表している。その発展としての経営統合の検討であって、日産の経営的危機をホンダが救済するわけではない、というスタンスでホンダは臨んでいるという。



ホンダと日産が経営統合を検討! あくまで立場は同等も「ホンダ主導」が見える会見
2024年3月・8月に発表されたホンダと日産の協業



現実的に、これだけの大企業がシナジー効果を実現するために、経営統合を検討するとなれば、サプライヤーを含めた検討が必要であって、ヘンなところから話が漏れてはいけないし、秘匿したままでは検討のスピードが上がらないということで、今回の発表になったといえる。



なお、現時点で発表されているスケジュールは以下のとおり。



最終契約書(株式移転計画含む)締結日 2025年6月(予定)
両社臨時株主総会開催日(本株式移転の承認決議)2026年4月(予定)
東京証券取引所上場廃止日2026年7月末~8月(予定)
本株式移転の効力発生日2026年8月(予定)



ホンダと日産が経営統合を検討! あくまで立場は同等も「ホンダ主導」が見える会見
2026年8月に共同持株会社による経営統合を目指すホンダと日産



経営統合してもホンダ・日産それぞれのブランドは存続

ところで、SNSなどでは「日産とホンダでは被るラインアップが多く、シナジー効果が期待できない」といった批判もあるようだ。たしかに両社とも北米が主要市場であるし、日本では三菱を含めて軽自動車がライバル関係となっている。



だが、いまラインアップが重なっているから効率が悪い……という判断をするのもミスリードになる。経営統合の検討というのは、そうした効率の悪い部分をどうやって解決できるかを検討することであり、そこにシナジー効果の目途が立たなければ、経営統合は進んでいかないだろう。なにしろ、あくまで検討段階であって、上で示したスケジュールもすべて予定となっている。統合してもうまくいかないと結論づけられれば、このプロジェクトがポシャってもおかしくない。



ホンダと日産が経営統合を検討! あくまで立場は同等も「ホンダ主導」が見える会見
ホンダと日産による経営統合が実現した場合に見込めるシナジー効果



冒頭で、三菱自動車がホンダと日産の経営統合検討へ参画・関与することの覚書も締結したことを記した。すでに日産と三菱自動車は幅広い領域で協業している仲であって、同じ日本の自動車メーカーとして、蚊帳の外というわけにはいかないというのは、多くのユーザーが感じていることだろう。



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ホンダと日産が協業した際の企業体系



しかしながら、各社のアライアンスや協業というのはほかにも広がっている。長年の関係もあり、日産はルノーとさまざまな領域で協同プロジェクトを進めている。ホンダにしてもGMとの協業を続けており、CR-V e-FCEVの燃料電池ユニットは、GMと共同開発したものであるのはご存じのとおりだ。



もし、ホンダと日産が経営統合したとき、ルノーやGMとの関係はどうなるのか。

記者会見において三部社長が説明した内容を整理すると、経営統合した場合でもルノーやGMとの関係を断ち切るわけではなく、緩やかなアライアンスを拡大していくという。



自動運転や、そこに大きくかかわるSDVといった領域においてはスケールメリットを活かしてデファクトスタンダードを取ることは有利に働く。あくまで仮の話ではあるが、ルノー・日産・三菱自動車・ホンダ・GMにおいて、ユーザー利便性が共通するようなことになれば、世界的な自動車メーカーの勢力図は一気に書き換わるかもしれない。



ホンダと日産が経営統合を検討! あくまで立場は同等も「ホンダ主導」が見える会見
ホンダと日産の経営統合の目的



ところで、記者会見においてホンダと日産の共同持株会社についてはホンダ側が取締役の過半数を占め、トップもホンダが指名すると発表された。これは現時点での上場株式の時価総額(ホンダ:約6.74兆円、日産:約1.67兆円)の差を考えれば、資本主義においては当たり前の話である。



ひとまずは、各社のブランドは維持するとされているので、ホンダが日産を吸収合併するような話ではないことも再確認しておきたい。

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