この記事をまとめると
■クアラルンプール市内で「クルマ観察」をしていると自国量販ブランド車が多い■とくにダイハツと提携しているプロドゥアブランドのクルマが日本車のように見えた
■中国系ブランドではBYD・ATTO3を見かけたが国民車ブランドのほうが圧倒的に多い
自国ブランドを持つマレーシアのクルマ事情
2024年12月3日より1週間ほど、「クアラルンプール国際モビリティショー2024」取材のため、初めてマレーシア、そして首都のクアラルンプールを訪れた。飛行機から降りて入国審査コーナーへ行くが、日本人で短期旅行者ならば事前にウェブサイトで情報入力しておけば、全自動レーンにパスポートスキャンなどするだけでものの数秒で入国審査が終了してしまうことに驚かされた。
空港から中心市街地までの距離感はおおむね成田空港と東京都心との距離感に近い。
自称「くるまオタク」の筆者としては、街なかをどんなクルマが走っているのだろうかというのも気になったので、郊外の幹線道路と市街地中心部で定点観測を行った。
マレーシアは産油国であり、そして自国量販車ブランドをもっている。そのため、ほかの東南アジア諸国ではトヨタとホンダをメインとした日本車を圧倒的に多く見かけるのだが、クアラルンプールでは「プロトン」と「プロドゥア」というふたつの「国民車」と呼ばれる自国量販ブランド車を圧倒的に多く見かけた。このふたつのブランドだけでマレーシア国内での新車販売の6割強を占めている。
そのふたつのうちで圧倒的に販売台数が多いのが、ダイハツと提携しているプロドゥアとなる。ダイハツ車をベースとし、独自のフロントマスクなどにして生産及び販売しているのだが、日本で販売されている車種としてはロッキーやトヨタ・ライズ(インドネシアでもこの2車は販売されている)をベースとした、「アティーバ」がラインアップされ、とくにこれをクアラルンプール市内で多く見かけることができた。

また、歴代モデルでは日本国内では終売となっているダイハツ・ブーン、トヨタ・パッソをベースにしてきた 「マイビィ」もかなり多く走っている。現行3代目のエクステリアはオリジナル色の強いものとなっているのだが、初代や2代目はそれぞれ初代や2代目ブーン&パッソをベースとしており、クアラルンプールの街なかを見ると、ロッキー&ライズや2代目ブーン&パッソがたくさん走っているような錯覚に襲われる。
もうひとつの国民車ブランドとなる「プロトン」は、2017年に中国・吉利(ジーリー)傘下となっており、ジーリー車ベースのモデルがほとんどとなっている。なかでもよく見かけたのが「X50」というコンパクトクロスオーバーSUV。ジーリーとボルボが共同開発したBMAというプラットフォームを採用している。

マレーシアでは日本車も高級車として認知される
また、国民車を中心にクアラルンプールではセダンを数多く見かけるというのも印象的であった。1985年に初代が国民車第一号として発売となり、現在は3代目となっているプロトン・サガは、ジーリー車由来ではなく、ジーリー傘下前のプロトン車として生き残り、いまも販売中核車種となっている。
プロドゥアにはベッツァというコンパクトセダンがある。コンパクトハッチバックの「アジア」のセダン版ともいえるのだが、メカニカルコンポーネントをダイハツのものとしているが、内外装はかなりオリジナル色の強いものとなっている。

日本車ではトヨタ車が圧倒的に多く、東南アジアではお馴染みの風景となっている、アルファード&ヴェルファイアはクアラルンプールでも日本並みかそれ以上に見かけることができた。
また、タイなどでも人気が高いカローラ・クロスも通りを頻繁に走っていた。ホンダではHR-V(日本でのヴェゼル)や新興国向けコンパクトセダンとなる「シティ」あたりを多く見かけた。

さらに特徴的なのはマツダ車の人気が高いこと。セダンの元気がまだあるというクアラルンプールだが、それでもSUVのラインアップが多く人気も高まりを見せている。

中国系中心となるが、BEV(バッテリー電気自動車)はまだまだ少数派となっているものの、そのなかではBYDオート(比亜迪汽車)のATTO3を多く見かけることができた。

コンパクトで廉価な国民車ブランドという存在があるため、日系ブランドもそことガチンコで競り合うモデルはラインアップしていない。となると、車両価格も高めで国民車ブランドより上級車をメインに販売することになるので、結果的に街には国民車ブランドが溢れることになっているものと考えている。それでも中産階級以上と思われる所得に余裕のある人にとっては日本車が注目の的になっているということもよくわかった。