この記事をまとめると
■マイナーチェンジでバッテリーセルとその冷却方法を進化させた三菱アウトランダーPHEV■EV航続距離だけでなく加速性能もアップ
■バッテリー出力の向上により中高速域での車速の伸びも増した
マイナーチェンジで大幅進化を果たしたアウトランダーPHEV
日本が世界に誇るプラグインハイブリッドSUV、三菱アウトランダーPHEVが大幅改良を実施した。
外観的には、バンパーやグリルの意匠を変えた程度で、ちょっとした化粧直し程度に見えるし、エンジンや駆動モーターについても改良についてアナウンスされていない。そのため、「よくある3年目のマイナーチェンジ」と誤解している向きが多いかもしれない。
しかし、搭載されるリチウムイオンバッテリーを刷新するなど、プラグインハイブリッドの根本にかかわる部分は大きく進化している。いうまでもなく駆動用バッテリーというのは電動領域における心臓部といえる重要アイテムだ。
具体的にバッテリーはどのように変わったのだろうか。
公式発表では『バッテリー容量を約10%増の22.7kWh(※)』として、エンジンを使わないEV航続距離については、エントリーグレードで『従来の87kmから106km、そのほかグレードで83kmから102kmと約20km伸長しています』となっている。
※注:マイナーチェンジ前は20.0kWh

これだけであれば、「ああバッテリー搭載量を増やしたんだな」と感じるだろう。驚くべきは次の一文であろう。『急速充電では、80%までの充電時間を6分短縮の約32分』にしたと発表されているのだ。普通に考えれば、バッテリー搭載量を増やせば充電時間は長くなりそうなものだが、新型アウトランダーPHEVはその常識を打ち破った。バッテリー搭載量を増やしながら充電時間を短くすることに成功したのだ。
そのポイントこそ、駆動用バッテリーの刷新にある。マイナーチェンジ前はパウチタイプのバッテリーセルを使っていたが、新型で角型セルとまったく異なるものに変更した。さらにポイントとなるのは温度管理の方式を変えたことで、従来は冷却プレートを使っていたのに対して新型では伝熱シートによる床冷房のような仕組みになっている。
駆動用バッテリーの刷新で走りも変わった
バッテリーセルの進化により内部抵抗は約30%減、冷却方式の変更により冷却性能は約50%向上したという。ご存知のように、リチウムイオンバッテリーを急速充電する際のネックは温度上昇である。内部抵抗減と冷却性能アップにより温度が上がりづらくなったことで、容量アップと充電時間短縮という相反する性能を実現することができたわけだ。

バッテリーを刷新した効果は、それだけではない。単位時間あたり出力を約60%アップ、トータルシステム出力は約20%も増やしている。これも冷却性能を高めたことで実現した成果といえる。
結果として、モーター駆動らしい発進加速の鋭さが感じられる速度域が広がり、中高速域での車速の伸びも増している。
ノーマルモードでの0-100km/h加速が約2秒短縮されたという発表もあるが、そうした全開加速シーンでなくとも進化は実感できる。街なかをドライブしてみても、50km/hまでの加速がスムースかつシャープになっており、アクセルペダル操作とリニアな感触には思わず笑みがこぼれてしまうほどだ。

ハイブリッドの制御ロジックが改良されたことで、エンジンがかかりづらくなっているのもポイント。日常的にEV的フィーリングを味わえる領域が拡大しているのだ。ハイブリッド燃費性能が従来の16.2km/Lから17.2km/Lへと向上しているのも見逃せない。
プラグインハイブリッドに限らず、電動車においてはバッテリースペックが非常に重要であることを、アウトランダーPHEVの進化は教えてくれる。マイナーチェンジではあるが、駆動用バッテリーが一新されているのだから、電動車としてはフルモデルチェンジに近いと理解すべきだろう。