この記事をまとめると
■観光バスでさまざまな業務をこなすバスガイド



■かつて路線バスには車掌がいた時代もあった



■バスガイドと車掌の業務内容の違いを解説



貸切バスからは姿を消したバスガイド

観光バスに乗車したとき、運転手(交代運転手を含む)以外にバスガイドが乗務していることがある。彼女ら(一般的に女性が多い)は乗客に対して、誘導、点呼(乗車確認)といった業務を行う。ほかにも、観光案内、娯楽機器(カラオケ、マイク、ビデオデッキなど)操作などのサービスや、車内整頓、ドアの開閉、運転手の補助(ナビゲーション、後方誘導など)も行っている。



バスガイドは乗客にとっては頼もしい存在で、以前は観光バスだけではなく貸切バスでも乗務していたが、近年はあまり見かけなくなったようだ。これは、2000年に規制緩和が行われたことに一因があるといわれている。それまで貸切バスは、バス料金とバスガイド料金を合わせて見積り、請求を行う、いわゆる「コミコミ料金」だった。しかし、同年に道路運送法が改正されて、料金をわけて示さなければならなくなったのである。もっとも、規制緩和の狙いはバス事業に対する参入障壁を下げることにあったので、料金の問題は枝葉末節の部分であった。



昔は路線バスに「女性乗務員」が乗っていた! 「バスガイド」と...の画像はこちら >>



このころはバブル経済が崩壊した影響で、ユーザーが貸切バス料金に対してシビアになっていた時期だ。近距離であったり観光目的ではなかったりした貸切バスを中心に、バスガイドの乗務は行われなくなっていったのである。これには、乗り合いバスのワンマン化が進んで、運転手がさまざまな業務をひとりで行うための装置、仕組みが、ハード、ソフトの両面で充実してきていたことも無関係ではない。



路線バスに車掌がいた時代も

バスガイドの活躍場所は観光バスが中心だが、じつは路線バスにも運転手以外の乗務員がいた。それが、鉄道ではおなじみの車掌である。業務は鉄道と似ており、ドア扱い、出発の合図、安全確認に加えて、切符の販売、改札、車内放送といった乗客対応と、車両誘導などの運転補助が主なものだ。一概にはいえないが、出発の合図を出すことから運行のマネージメントをしていると考えられ、ここがバスガイドとの立場の違いになるという解釈もある。



昔は路線バスに「女性乗務員」が乗っていた! 「バスガイド」とは違う「車掌」の役割とは?
車掌のイメージ



路線バスの登場したころから車掌が乗務していたのは、停留所ごとに客の乗降があるためで、その対応の必要性からである。しかし、乗客が多いと業務のすべてに手がまわらなくなる。ドア扱いや狭い道での車両誘導は必須であるから、停留所間距離が短いと切符の販売もままならない。路線によっては、非常に多忙な業務であったといえよう。



料金収受、切符の販売を行うために、車掌には専用の首掛け鞄を持っていた。なかには、金銭(乗客が払った料金とつり銭)、切符、はさみ(切符入鋏用)、時刻表などが入っている。定位置は乗降ドアの後方のスペースで、マイク、合図用ブザーボタン、ドアスイッチ(手動ドアの場合はない)などが装備されていた。走行中は切符販売などのために、車内を巡回する。女性が多かったとされるが、男性も少なからず存在した。



昔は路線バスに「女性乗務員」が乗っていた! 「バスガイド」とは違う「車掌」の役割とは?
車掌が使用していたはさみのイメージ



車掌が廃止されたのは、ひとえに経費(人件費)の問題である。路線バスは収支状態がよくない事業者がほとんどで、公共交通であることから赤字路線であっても運行を余儀なくされることが多い。料金箱、自動ドア、安全確認可能な大型ミラー、自動音声案内、料金均一化、整理券発行装置などが投入され、車掌の乗務は多くの事業者で1970年ごろには、ほとんど行われなくなっていった。



いまでは、高性能料金箱・カメラなどによる安全確認装置・電子マネーなどといった、新たなシステムの開発、導入が進められており、バスの車掌は完全に過去のものになってしまった。この先、自動運転技術が進むことでいずれ運転手もいなくなるだろう。バスガイドも、ロボット化するかもしれない。バスが乗客だけを乗せた移動する箱になる日も、そう遠くないということだ。

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