この記事をまとめると
■2025年早々に軽自動車の2024年の年間新車販売台数と車名別新車販売台数が発表される■出荷停止などの影響もあり2024年のダイハツは販売台数が伸び悩んだ
■2025年はスズキvsホンダの戦いになる可能性が高い
2024年の軽自動車市場を振り返る
年が明け、仕事始めとなって間もなく、自販連(日本自動車販売協会連合会)や、全軽自協(全国軽自動車協会連合会)から、12月単月(2025年なら2024年12月単月)締めとなる、登録車、軽自動車それぞれの新車販売台数が発表され、同時に暦年(1~12月)締めでの年間新車販売台数も発表されることになる。
その新車販売台数発表から少し時間をおいて、2024年12月単月締めでの通称名(車名)別新車販売台数が追って発表される流れだ。
例年、年末ギリギリまでデッドヒートの続く軽自動車に関する暦年締め年間新車販売台数結果についてのメーカー同士やモデル同士の販売台数バトルの結果はわからなかったのだが、2024暦年締めに限っていえば、早々に結果はほぼ確定していた。
原因としては、認証問題による出荷停止が解除されて以降も、ダイハツ全体の販売台数がなかなか元に戻らなかったことが挙げられる。そもそも、全車種出荷停止期間中でも街なかに出まわる、とくに軽自動車の届け出済み未使用中古車の流通台数がハンパなく多い。
なので、出荷再開直後でも未使用中古車の流通に歯止めがきかず、「認証問題を起こしたから」として新車販売が低迷しているのではなく、豊富に存在する未使用中古車にかなり流れてしまっていることのほうが影響を大きくしているように考えている。
つまり、ダイハツがなかなか調子を戻せないなか、ダイハツからスズキへお客が流れてしまっている状況が2024年では恒常的に続いた。
そして、2024年1月から11月のブランド別累計販売台数をみると、スズキの54万6757台に対し、ダイハツが31万8611台、ホンダ26万7524台となっており、スズキがダイハツに約23万台差をつけてトップとなっているので、11月の時点で、2024暦年締めブランド別年間新車販売台数でのスズキのトップは完全に揺るぎないものとなっていたのである。

軽四輪総台数ベースでは、ホンダに約5.1万台差をつけ2位となっているダイハツだが、軽四輪乗用車のみではその差4万3961台となり、今度はホンダが2位となっている。軽自動車販売は最後まで予断を許さないと前述したとおり、11月時点で断言はできないものの、12月だけでダイハツがこの差を埋め、さらに上積みをするのはほぼ不可能といえるので、軽四輪乗用車のみでは、ホンダがスズキに次いで2位になることがほぼ決定しているといえよう。
そんなホンダが軽四輪乗用車でダイハツを抜き去る最大にして唯一の要因は、ホンダN-BOXの存在である。
2025年はN-BOXの動きに注目
N-BOXの2024年1月から11月の累計販売台数は19万1423台(月販平均約1.7万台)なのに対し、2位スズキ・スペーシアは15万3136台(月販平均約1.4万台)となっているので、車名(通称名)別2024暦年締め年間新車販売台数トップはN-BOXでほぼ決まっているといえる。

「常勝N-BOX」はいまに始まったことではないが、ここのところは販売台数に以前ほどその勢いが感じられない。さらに、パワーダウンしているだけならまだしも、2024年はそれまでに比べて、明らかにN-BOXの届け出済み未使用中古車の流通台数が増えていることのほうに筆者は不安を覚えている。
軽自動車は、そもそも車種を問わず再販価値がいいことで知られている。

そのような軽自動車のなかでN-BOXの再販価値はまさに軽自動車のトップといえるほど、いままでは高かった。中古車専売店で聞くと、「スペーシアとタントの上、つまり頂点にN-BOXがいる」と説明してくれた。ホンダカーズ(ホンダ系正規新車ディーラー)で聞いても、「再販価値が安定して高いので、初回車検など短いサイクルで乗り換えてくれるお客も多い」とのことであった。
もちろん、これは中古車でも同じであり、中古車として買った人も乗り換えるときにはN-BOXの再販価値の高さの恩恵を受けることができたのである。しかし、この状況を一変させるフェーズに入ったのが2024年である。すでに「再販価値ではスペーシアのほうが上まわっている」との情報も入っている。
N-BOXの人気の理由のすべてが再販価値というわけではないが、経済合理性を最大限追求する人もユーザーに多い軽自動車なので、2025年は車種別販売ランキングでも何らかの変動が出てくるかもしれない。

すでに未使用中古車が多いということは、新車での販売台数稼ぎのために、ディーラー名義などで新車にナンバープレートだけをつける「自社届け出」が盛んに行われており、そのため未使用中古車も市場に大量に出まわっている。2025年もこの傾向が続けば、新車ではなく未使用中古車としてN-BOXを購入する人も増えてくるので、新車販売への影響も避けられなくなるのではないかと考えている。
スズキでもスペーシア系の未使用中古車は見かけるが、N-BOXよりは抑制的に見える。ダイハツではそもそもタントよりも、ムーヴキャンバスの未使用中古車が多い状況が続いている。

2025年における軽自動車の展望としては、ダイハツの勢いに復調傾向が見られない、あるいは復調に時間がかかるようならば、ブランド別ではスズキの独走が予測でき、軽四輪乗用車に限っていえば、ホンダの2位も常態化していくことになるかもしれない。
ただし、それにはN-BOXの自社届け出が2024年並みかそれ以上必要となる。N-BOXが事業年度別(4月から翌年3月)、暦年締めでの年間販売台数や事業年度締めでの上半期や下半期などのタイミングでの新車販売台数ナンバー1維持を自社届け出に頼って続ければ、それだけN-BOX自体の新車販売を苦しめることとなる。

N-BOXの現状はかなり気になるレベルとなっている。このような状況にスズキがスペーシアでガチンコ勝負を挑むことはさまざまなリスクもあり、「1番ではなくていいから2番でいい」ではないが、無理はしてこないだろう。
N-BOXは今後どのような動きを見せるのか、それがますます気になるのが2025年となるだろう。