この記事をまとめると
■自動車メーカーによってV型エンジンのシリンダー間の角度(バンク角)が異なる■V型6気筒エンジンはエンジン全長が短くて車高も低くできる60度が多い
■バンク角を広くするとエンジン振動の問題や搭載する際の問題が生じやすい
多気筒エンジンの理想的なバンク角は気筒数で違う
6気筒以上の多気筒エンジンになると、直列ではなくV型の配置になる場合がある。そのV字となる両側シリンダー間の角度を、バンク角と呼ぶ。これはエンジンを正面から見て、シリンダーが何度で左右へ開いているかを指す。
多くは、60度、90度、なかには72度というような端数があったり、120度という場合があったりする。ちなみに、かつてはバンク角180度のV型エンジンも存在した。
自動車メーカーや車種、あるいは時代背景などによって、採用されるバンク角の選び方が変わる。
そもそも、なぜV型にするかという理由だが、これはエンジンの寸法を小さく収めたいという、車載上の都合がある。
たとえば、直列6気筒は、気筒ごとの燃焼時期の調和がとれ、振動の懸念がなく、「完全バランスをとれるエンジン」として有名だが、エンジン寸法が長くなる。それでも、1990年代前半までは上級車種を中心に人気があった。ところが、衝突安全性能が強く求められる90年代後半になると、V型6気筒へ変更するメーカーが相次いだ。

その際、多くのV6エンジンが採用したのはバンク角60度だ。エンジン全長が短くなるのに加え、V型としたことで全高も低くなり、全体的に小型のエンジン形態になる。
バンク角を広げすぎると振動の問題が生じる
なかには、バンク角90度という例もあった。ただし、クランクシャフトとの関係で、90度にすると、振動が増え、快適性に欠ける可能性が出る。もちろん、6気筒でもV型にすれば、振動の問題が出るが、90度に比べ60度のほうがバランスウェイトなどで軽減できる道がある。
初代ホンダNSXは、90度バンク角のV型6気筒だった。90度へ広げることで、左右シリンダーの間に隙間を余分に確保でき、ここに吸気制御を行う機能を収めることができた。また、60度に比べ、さらにエンジン全高を低く抑えられ、ミッドシップに搭載するうえでの都合もよかったのだろう。そしてスポーツカーなので、ある程度の振動や音は、エンジンの醍醐味として理解される可能性もある。

V6で、バンク角を120度にすると、等間隔での燃焼になり調和がとれる。ただそれではエンジンの幅が広がり過ぎ、何のためのV型採用か、車体への搭載面で課題が出る。
8気筒になると、V型が前提といっていいだろう。この場合のバンク角は90度が一般的だ。独特の振動がV8エンジンの特徴で、その振動はそれほど不快ではなく、力強いV8らしさと好意的に捉えられる傾向にある。クランクシャフトの仕様次第では各気筒が等間隔での燃焼時期になるので、二次振動と呼ばれる揺れはあっても、不快に感じにくいといえそうだ。

ちなみに、バンク角180度となる水平対向エンジンは、スバルやポルシェで今日も目にする角度だ。

水平対向は、エンジンが低くなり、低重心になる利点がある。一方、エンジンの下側になる排気は配管の制約を受ける。また、エンジン全幅が広がるので、車体のフレーム幅による横幅の制約が生じ、ショートストロークとなって燃費悪化の懸念が残る。