この記事をまとめると
■東京オートサロンの「Rotary Exhibition 2025」ブースで注目の2台を紹介■1台はキャブ化したロータリーエンジンを搭載したNAロードスター
■もう1台はあの「雨宮シャンテ」のパロディである「ロータリーキャロル」だ
ロータリーエンジンを搭載した異色のチューニングカーたち
今年も1/11~13の期間で「東京オートサロン2025」が開催されました。カスタムに興味がある人はもちろん、いまは自動車メーカーのブースもあることで、一般のクルマ好きの人も来場して華やかな車両やブースの展示を楽しむ姿が見られます。
今年も850台を超える出展車両が並んでいましたが、みなさんのお目当てはどの車両だったでしょうか? 筆者は数ある展示車両のなかで、小さいコマの単体展示のゾーンに並ぶ車両たちを密かに狙って楽しませてもらっています。
そのなかからここでピックアップするのは、「Rotary Exhibition 2025」のブースに展示されていた車両たちです。
■一見車種不明な雰囲気の“RE”ロードスター
この「Rotary Exhibition 2025」というのは、ロータリーエンジン搭載車のカスタムを得意とするショップが集まって2020年に結成されたユニット名だそうで、ロータリーエンジン・チューニング界隈では生ける伝説となっている「雨サン」こと「RE雨宮」代表の「雨宮」氏が発起人となり、オートサロンの会場をロータリー好きの魂で盛り上げようという意義があるそうです。
毎度「RE雨宮」ブースに隣接して展示がおこなわれていますが、今回は7つのショップによる意欲的なカスタム車両が並べられていました。そのなかから、旧車のテイストを感じた「Garage-I ロータリーロードスターNA22C」にフォーカスを当てさせてもらいます。
出展車両名から概略は想像することはできますが、会場をまわっているときにこの車両を見つけた際、「RX-7? いや、なんか違う……」という感想でした。
この車両を手がけたのは長野のロードスター専門ショップ「ガレージI」です。本来、ロードスターにロータリーエンジンを搭載している車種はありませんが、同じマツダということや、代表の駒場氏がロータリー好きということからREへの換装をおこなうようになり、いまではその筋では知る人ぞ知る存在となっています。
今回ベースに選ばれたのは初代の「NA型」ロードスターです。過去には、部品の調達など維持面のことも考慮して「ND型」をベースに「RX-8」の13Bエンジンを搭載していましたが、今回のテーマは「キャブ仕様のRE」ということで、まだ法規が厳しくない年代の「NA型」が選ばれました。

キャブレター仕様はエンジンルームが旧車っぽくなって雰囲気がアガりますし、インジェクションでは味わえない官能的な吸気音が味わえます。
しかしその反面、無駄な燃料を送り込んでしまうため、燃費がよくなく、排ガスの値もよくありません。REはレシプロに比べてもともと排ガス特性が不利な方式です。つまり、キャブ仕様にすると車検をとおすのが難しい組み合わせになるのです。

エンジンは「RX-8」用の「13B-MSP型」です。「13B-MSP型」は2種類あって、高出力版は吸気ポートが6つで、通常版は4つとなっています。この車両には通常版を選ぶことで、REとしては異例のキャブレター配置を実現しているのです。REのチューニングを知る人が見たら、この筒が水平に並ぶタイプのキャブレターは見慣れない姿に映るでしょう。
REのキャブといえば、筒が垂直に配される“ダウンドラフト”タイプを使うのがセオリーで、エンジンとキャブを繋ぐインテークマニホールドも、市販のほとんどがダウンドラフトタイプ用です。
しかし、「ショーの展示をするなら面白く感じてもらわないと」ということで、通常はレシプロエンジンと組み合わせられる“ホリゾンタル”タイプの「ウエーバー製40φキャブ」をチョイスしました。インマニはこのために作られたワンオフ品です。排気側のエキマニも同様にワンオフ品。この通常版を選んだことは、排ガス対策を見越してのこと。また、点火系も古い方式の“デスビ”仕様にしてあるので、ECUなしでエンジンを稼働させることができるようになっている、という点もポイントでしょう。

■外観はIMSA仕様のSA22C風仕上げ
赤い“レーシングライン”が入れられた昔のレーサー風に仕上げられた外観も見どころです。イメージは「IMSA」という北米でおこなわれていたレースに参戦していた「サバンナRX-7(SA22C)」がモチーフとなっています。
「NA型」ロードスターもリトラクタブル式ヘッドライトで共通なので、そのイメージのまま、「IMSA仕様」風にするために「ジェットストリーム」製のワイドボディキットを装着しています。

そのワイドフェンダーに収まるホイールは、「RSワタナベ・エイトスポーク」で、前が9.5J、後ろが10Jというワイドサイズです。ハードトップは純正ベースの軽量版で、内装は取っ払いドンガラにしています。
雨宮シャンテが平成の軽で蘇る
■あの「雨宮シャンテ」を彷彿とさせる「モンスター・キャロル」も
上の「REロードスター」の隣に展示されていた「ロータリーキャロル with RE雨宮」も紹介しないわけにはいかないでしょう。会場ではむしろこちらが目立っていたかもしれません。
こちらの超ワイドフェンダーを装着した迫力の佇まいを感じる「キャロル(AA5PA型)」を見て、「RE雨宮」のファンであれば思わず「ニヤリ」としてしまうでしょう。このコンパクトな可愛らしい車体に片側200mmを超えそうなほどワイドな“ワークスフェンダー”を装着したスタイルは、とあるマシンが代名詞的存在だといっていいでしょう。そのマシンというのは、「RE雨宮」代表の「雨サン」が若いころに製作したという「雨宮シャンテ」です。

じつは、この「ロータリーキャロル」を製作した長野の「郷田鈑金(代表・駒場氏)」は、2024年にその伝説の「雨宮シャンテ」を再現して製作しています。今年はそのパロディ版という意味を込めて、まだ誰も手がけていない平成車の「キャロル」をベースに、「雨宮シャンテ」仕様を作り上げました。
外観のポイントになるのはやはりワイドすぎるフェンダーでしょう。
その方法というのは、「ロードスター(NA型)」の骨格からごっそり流用するというものです。キャロルのボディとモノコックフレームをベースに、ロードスターの足まわりなどの下まわりをごっそり移植してワイド化を果たしています。なので、ホイールベースもロードスターの寸法になっています。搭載されるエンジンは「RE雨宮」謹製の13Bペリフェラルポート仕様です。
ここまでの情報だけでも十分に驚くレベルですが、真に驚かされたのはその製作期間です。なんと製作に取りかかったのは2024年の11月だそうで、たった2カ月しかないところに年末体調不良になってしまい、緊急で会社のスタッフ総出で仕上げたとのこと。それにしたって異常に早いペースです。いかに“デキる”職人が揃っているということでしょう。