この記事をまとめると
■フォルクスワーゲンのラインアップは質実剛健で完璧主義なクルマが多い



■真面目なイメージのVWであるが技術が突っ走って尖った車種を生み出すことがある



■EVに傾倒気味な現在もVWのクルマ作りの根底は変わっていない印象を受ける



創立当初からマジメひと筋なフォルクスワーゲン

長年フランス車やイタリア車を乗り継いできた人間から見ると、フォルクスワーゲン(VW)は質実剛健で完璧主義なクルマが多いと感じている。逆にいえば変わり種がほとんどない。



とりわけ実用的なハッチバックやセダンやワゴンは、遊び心を入れる隙間さえないようなクルマづくりだ。でもそれは、このブランドの成り立ちを見れば理解できる。



第1号車のビートル(正式名称タイプ1)が、ヒトラーの国民車構想に応えて、ポルシェ博士が設計したことは、多くのクルマ好きが知っているだろう。



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すぐに第2次世界大戦を自らが引き起こしたために、軍用車のキューベルワーゲンやシュビムワーゲンに姿を変え、ビートルが大衆の手に渡るようになったのは戦後になってからというヒストリーも、よく知られるところだ。



しかし、当初はドイツが連合国の占領下にあったこともあり、工場は国営。1960年に民営化を定めたVW法が制定され株式会社へ組織変更するが、国と会社が位置するニーダーザクセン州がそれぞれ株式の20%ずつを保有することとなった。



なんでそんなに「マジメ」なの? フォルクスワーゲンの完璧主義っぷりを歴史から探ってみた
フォルクスワーゲンの本社工場の全景



こうした流れのなかでは、ドイツ語で国民車を意味するブランド名のとおり、国民のためのクルマを地道に送り出していくのが当然の任務に思える。



加えて国民性もある。この時期はルノーも国営だったけれど、ふたつのブランドのクルマづくりが大きく違うのは、独創性を大事にするフランス人と、論理的なドイツ人の違いが現れているからだろう。



その後ルノーも民営化したが、スピダーや僕が所有するアヴァンタイムなどを送り出してきた。VWにこれに相当する車種がないのは、ドイツ車だからだと理解している。



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ルノー・アヴァンタイムのフロントまわり



もうひとつ、ポルシェとの関係も忘れてはいけない。

ポルシェは戦前にビートルを設計し、戦後量産が始まると1台ごとにライセンス料を受け取るとともに、すでに生産が始まっていたポルシェの第1号車356などのためにパーツを供給してもらうという契約を結んだ。



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ポルシェ356の第一号車



この時点でVWは実用車、ポルシェはスポーツカーという棲みわけができていた。もっとも、ポルシェも他国のスポーツカーに比べれば真面目ではあるけれど。



そんなVWではあるが、たまに技術が突っ走って尖った車種を生み出すときがある。その結果生まれたのが、ポストビートルとして開発されたミッドシップの2ボックスEA266や、リッター100kmを実現したディーゼルプラグインハイブリッドの2シーターXL1などだ。



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フォルクスワーゲンXL1のフロントまわり



ただし、前者は経営陣がゴルフを選択したことで市販されず、後者は価格が10万ユーロ以上ということもあり250台の限定販売だった。主流にしないところがVWらしい。



EVに傾倒気味ないまも、外野から見る限りそれに近い感じを受けるので、早く冷静な経営に戻ることを期待したい。

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