この記事をまとめると
■インド国内では三輪タクシー(リキシャ)の姿をよく見かける



■オートエキスポ2025ではBEV三輪タクシーの展示が多かった



■日本ではラストワンマイル・モビリティとして小型無人運転バスの導入を進めている



インドのリキシャ市場にヒョンデが進出?

韓国ヒョンデ自動車は、「第2回バーラト(ヒンディー語でインドの意味)・グローバル・モビリティ・エキスポ」関連イベントのひとつとして開催された「オートエキスポ2025(通称:デリーオートエキスポ2025)」での2回目のプレスカンファレンスにて、インド向けラストワンマイル輸送車両となる電動小型三輪及び四輪タクシー車両のコンセプトカーを発表した。



インド国内では街なかを三輪タクシー(リキシャと呼ばれている)が非常に多く走っている。料金が安く、そして小まわりもきくので、バス停や地下鉄駅などから自宅までなどの「ラストワンマイル移動車両」として地元の人には重宝されている。

ライドシェアアプリの「ウーバー」で呼ぶことができ、クレジットカード決済も可能なので、観光客でも気軽に利用することができる。



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筆者も利用したことがあるが、日本ではあまり体験できない面白さがある。とはいえ比較的新しい車両でもペラペラの鉄の扉がつくぐらいで天井は幌となっており、交通環境がかなり劣悪なインドで、ここで何か起きたらあらゆる意味でアウトだなという不安を強く感じた。



インド政府は2030年までに二輪車と三輪車の80%をBEV(バッテリー電気自動車)化するとしている。すでに市内には二輪車及び三輪車向けの充電ステーションが交換バッテリー方式向けなども含め、多種多彩なものが設置されている。そのためもあり、市内を走る二輪車や三輪車の結構な台数がすでにBEVとなっている。



アジア諸国でお馴染みの「三輪タクシー」! EV化モデルを見たら日本でも「ラストワンマイル」の足にアリかも!!
インド国内を走るリキシャ



オートエキスポ2025の会場でも、BEVリキシャの展示が目立っていた。ヒョンデはあくまで自分たちの構想を、地元スタートアップ企業の助けを借りて「概念化」したとしているが、そのコンセプトカーは、車いすのまま乗り込むことができるなど、先進国でも存在感を見せるグローバルメーカーらしい新しい発想が盛り込まれていた。本来、後部にあるエンジンをモーターとしたうえで位置を変更、リヤから車いすのまま乗り込むことを可能としていた。



大都市を訪れればわかることだが、インドではまさに数えきれないほどたくさんのリキシャが走る様子を見ることができる。ヒョンデはBEV化に合わせてラストワンマイル市場への進出を本気で検討しているのかもしれない。



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信号待ちしているリキシャ



ちなみに地元の報道では、仮に二輪車と三輪車のうち80%がBEV、つまりゼロエミッション化されると、インド国内全体で約8億5000万トンのCO2排出量削減と、価格換算で2070億アメリカドルの原油輸入量にかかるコスト削減につながるという試算も出ているとのことであった。

もちろん世界最悪ともいわれる大気汚染の改善にも大きな効果を発揮するのは間違いない。



ラストワンマイル・モビリティとしてリキシャは最適?

あるアジア通は、「ラストワンマイル・モビリティ対策はリキシャに限る」と語ってくれた。日本では三輪タクシーを「トゥクトゥク」と呼ぶが、これはタイでも俗称で、本来は「サムロー」、インドネシアでは「バジャイ」、そしてインドでは「リキシャ」と呼ばれるなど、地域によって呼び名はさまざま。アフリカあたりでも見かけるほど利用されている地域は広い。



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路肩に停車している複数台のリキシャ



新興国では「バリアフリー」という概念はまだまだ普及しておらず、歩道はあったとしても段差が激しいだけではなく、デコボコしていて歩きにくいのが大半となっている。



そんなこともあるのか、バス停や地下鉄の駅を降りたら、三輪(電動やICEのほかインドでは自転車タイプもある)や二輪(バイク)タクシーで自宅まで帰る。つまりラストワンマイル・モビリティがすでに普及している。



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交通手段としてのバスとリキシャ



日本では高齢化がさらに進むと、自宅最寄りのバス停へ歩いていくのも困難な人が増え、バスの利用客の減少を加速させてしまうのではないとの話もある。鉄道駅も同じで、鉄道会社が放っておいても鉄道に乗るために人が駅に集まるのを待つだけでは利用客の減少を加速させてしまう。つまり、日本でも本格的にラストワン・モビリティをどうするのかという議論が起こっている。



そんななかJR東日本の「明日のデザイン」という、女優の浜辺美波さんが出演しているテレビCMに、電動三輪タクシーらしきものが登場していた。JR東日本のホームページを見ると、「モビリティツーリズム」として、旅先で電動タクシーや電動アシスト自転車など、訪問先観光地めぐりなどに利用するという「明日のデザイン」の提案ということらしかった。



このイメージを拡大して、「ベッドタウン」などとかつていわれた新興住宅地域や高齢者の多く住む地域などでラストワン・モビリティとして電動三輪タクシーを稼働させてみるというは一考に値するのではなかろうか。ただし日本では新しい事業となるので、許認可をどうするのかという問題とともに、働き手をどう確保するかという問題もある。



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オートエキスポでのBEVリキシャの展示



日本では小型無人運転バスの導入が進められている。決まった路線や運行時刻にとらわれないように、「オンデマンド運行」の導入も進めるようだが、タクシーのような使い勝手ながら、安価で近距離移動に特化したBEV三輪タクシーは、日本でもラストワンマイル・モビリティにふさわしい乗りものなような気がする。



タクシーの稼働台数がコロナ禍前の8割ほどまで戻っている地域が目立ってきており、ここのところ日本型ライドシェアの存在が薄らいでいるようだが、ラストワン・モビリティとしてBEV三輪タクシーを運行させるというのも一考ではないだろうか。ドライバーは同じ地域に住む退職したばかりでまだまだ元気な高齢者に的を絞るなどすれば、「人生100年時代」なのでなんとかなるかもしれない。

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