この記事をまとめると
■日産の大衆車「サニー」をベースとしたトラックが存在した



■「サニートラック」は商業車として大ヒットした



■カスタムベースとしても人気が高く中古車相場が年々高値になりつつある



サニトラってなんだ?

時代の変化にともないその要求も目まぐるしく変化しています。その変化に馴染めなくなった旧い車名がひとつ、またひとつと消えてゆくなか、日産の「サニー」は今でもしぶとい生命力を見せて生き残っています。



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しかし2010年以降は、アジアなどの新興国向けだったり、中東で発表されたりと国内ではすっかりその名前を耳にすることはなくなってしまいました。

そんなサニーですが、じつはトラックボディのラインアップがあったことを知っている人はどれくらいいるでしょうか?



通称“サニトラ”と呼ばれるサニーのトラックバージョンは、日産でも最長クラスのロングセラーモデルでもあります。



ここではそんなサニートラックにスポットを当てて、ちょっと掘り下げて紹介していきましょう。



■110系サニー顔のトラック、それが「サニトラ」

「サニトラ」の正式名は「サニートラック」。つまりサニーがベースのトラックタイプの車輌です。



サニトラが生まれた背景は、まず当時の日産の最下層を受けもつ大衆車のサニーの誕生がその源泉になります。当時の日産のベーシッククラスが、経済成長にともなって徐々に排気量と車格が拡大していったため、もっとも手ごろな1000cc以下のポジションが空いてしまいました。



そこでそのポジションを埋めるべく、もっともコンパクトな車種として1000ccのエンジンを積むサニーが誕生しました。



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日産サニークーペ(B10)



そして商用車の界隈でも、中型のトラックと軽トラの間を埋めるちょうどいいサイズのトラックタイプの車両が求められていました。



そんな市場の需要を受けて生み出されたのが、サニーのシャシーを活用したピックアップ仕様の「サニートラック」というわけです。



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日産サニートラック(初代)



初代のB20型は、先に発売されたB10型サニーのバンを基本として、ホイールベースや外寸が同じに作られました。



乱暴にいうと、セダンの後席から後ろを荷室にしたのがサニトラです。しかし、トラックという名称ですが、荷台の横面は固定で開かないので、ピックアップと呼ぶほうがしっくり来るかもしれません。



■サニトラは超ロングセラーモデル

初代のB20型サニトラがリリースされたのは1967年。サニーのクーペ/セダン/バンの発売より1年が経過したタイミングでした。



ちなみにその当時は日産の小排気量車用ブランド「ダットサン」の末席にラインアップされていました。そのころはライバルのトヨタやマツダ、ダイハツ、ホンダなど各社からこの1000cc以下クラスの商用車が発売されるという盛況を見せていて、商店の配達やサービスカーとして広く普及しました。



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マツダB1500トラック



そのなかでサニトラも好調な販売をみせ、ベースのサニーのフルモデルチェンジに合わせて、1971年に2代目となるB120型サニートラックが発売されます。



この2代目モデルも初代と同様にサニーと前まわりを共用する設計で作られたため、コンパクトカーらしい丸目2灯の愛嬌のある顔つきが好評を得ていたようです。



そしてこの代から、もうちょっと荷室の奥行きがほしいという要望に応えて、ボディタイプがショートとロングの2タイプが用意されました。



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日産サニートラック(ロング)



ショートはホイールベースがセダンより15mm長い2300mmで、ロングはそこからさらに230mm長い2530mmとなっています。



なおこの2代目は、そこから31年間(国内市場は1994年で終了。その後南アフリカで製造・販売を継続)もの長い期間、ほぼ同じボディとシャシーとエンジンの構成で販売され続けました。



その後、1989年にマイナーチェンジを実施。主な改良点は、厳しくなる排ガス規制に対応させるための環境対応デバイスの装着をメインとして、前輪のディスクブレーキ化や、ヘッドライトが角形になるなど多岐にわたります。



カスタムベースとしても大人気

■サニトラのスペックとラインアップ

超ロングセラーとなった2代目サニトラ(後期)のスペックを見てみましょう。



ボディタイプ:トラック
ドア数:2ドア
乗員定員:2名
全長×全幅×全高(mm):3845(4140)×1495×1390
ホイールベース:2300(2530)mm
車両重量:720(730)kg
エンジン:A12型 直列4気筒OHV
総排気量:1171cc
燃料供給装置:電子制御式キャブレター(ECC)
最高出力:52馬力/5400rpm
最大トルク:8.5kgm/2800rpm
サスペンション形式:F・ストラット式
R・半楕円リーフスプリング式



※()内の数字はロングタイプ



搭載されるA型エンジンは1966年に誕生した旧い設計にもかかわらず、その素性のよさやタフネスさでモデル期間のすべてに渡って採用され続けました。



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日産サニートラックのエンジン



今は絶滅のキャブレター仕様で多少のクセはあるものの、どんな地域でも故障知らずでタフに活躍しています。

シャーシや足まわりの設計も旧いものですが、商用車としてはそのシンプルさが功を奏して永く愛され続けました。



■サニトラの使い方、遊び方はいろいろ

サニトラは、その長い販売期間によって広い世代に知られているということも大きな要因ですが、そのちょうどいいサイズ感や国内では希少なピックアップスタイル、タフなエンジン、軽量な車体などの要因が相まって、いろいろな仕事や遊びに活用されているという点も特徴です。



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日産サニートラック(2代目)



・仕事や趣味の運搬用として



仕事用の活用で印象に残っているのは、灯油やガソリンの移動販売用車輌でしょう。昭和の時代はガソリンスタンドに行くと必ずといっていいほど見掛けたものです。今でも郊外の小さなスタンドでは現役で稼働しているサニトラを見掛けることがあります。



ただの灯油を運ぶ商用トラックだったのに中古高騰! 趣味人にもカスタム派からも熱視線を浴びる旧車「サニトラ」とは
トラック積載用灯油タンクのイメージ



また、自転車やオートバイを運送する用途でもよく見かけました。ショートボディでもアオリを開けば250ccくらいまで搭載できますし、ロングなら大排気量の車輌も積めます。



・サーファー御用達の時代もあった



アメリカではエル・カミーノやハイラックスなどの大柄なピックアップがサーファーに好まれていましたが、日本ではそのサイズはもて余すため、サイズ的にちょうどいいサニトラがもてはやされていた時代がありました。



ファッション性もおろそかにしないサーファーには、乗用車顔のピックアップはベストマッチだったようで、砂浜のある海岸では、荷台にサーフボードを斜めに積んだサニトラをよく見かけました。



・カスタムも楽しめる



サニトラのカスタムが活発になったのは、そのサーファーたちが遊び始めたというのが一端にあるでしょう。



ただの灯油を運ぶ商用トラックだったのに中古高騰! 趣味人にもカスタム派からも熱視線を浴びる旧車「サニトラ」とは
日産サニートラックのカスタム車両



カリフォルニアのテイストを日本にもち込んだ「ムーンアイズ」などのカスタムパーツを使って、商用車っぽくないカジュアルな仕上げにするスタイルが流行しました。



またその一方で、ベースのサニーはツーリングカーレースで活躍していたという背景もあり、搭載されているA12型エンジンのチューニングが、競技志向の界隈で活発におこなわれていました。



チューニングカーブームが盛り上がった1980年代中盤あたりでは、チューニングでパワーを上げたエンジンを軽量なサニトラのボディに搭載して、ゼロヨンや峠道を攻めるなど、走り系の遊びにもよく使われていました。



ちなみに2代目のサニトラは、ワークスチームからラリーに参戦していたこともあったようです。



■そんなサニトラはリーズナブルに入手できる、ハズでしたが……

サニトラが遊びグルマとして人気が高かった時代は、商用車として使われていた車輌が中古市場に多く流れてきたこともあって、かなりお安く入手できました。



そのため、予算をドレスアップにまわしたり、チューニングで速さを求めたりとカスタムを楽しむベースとしてもってこいという扱いでした。



ただの灯油を運ぶ商用トラックだったのに中古高騰! 趣味人にもカスタム派からも熱視線を浴びる旧車「サニトラ」とは
日産サニートラックのカスタム車両



しかし今の旧車ブームの影響は、とうとうサニトラにまでそのスポットを当てるに至ってしまったようです。それでも100万円台からと、ほかの人気の車種に比べたらリーズナブルな相場で留まっている部分もあります。



しかし、走行距離が少なかったり、キレイに仕上げられた車輌では、300万円以上のプライスが付いている個体もあるようで、そうなると気軽なカスタムの対象ではなくなってしまいます。



そんな風にだんだんと購入予算が上がっているサニトラですが、今でも国産車としては希少な乗用車ベースのピックアップスタイルをもつ車種なので、まだまだ刺さる人はいるでしょう。



ほかとは違う車種に乗りたいという人は、改めて注目してみるのもいいんじゃないでしょうか。



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日産サニートラックのカスタム車両

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