この記事をまとめると
■スズキやダイハツはメーカー系正規ディーラー以外に業販店ネットワークが構成されている■町のクルマ屋のような小さな店舗で新車を販売していることも珍しくない
■オピニオンリーダー的な存在である業販店では社長がオススメしたクルマが売れやすい
地方ではオピニオンリーダーの存在が鍵を握る
ここ最近は諸問題もあり元気のないダイハツであるが、軽自動車販売ではスズキとともにブランド別販売台数で激しくトップ争いを日夜展開している。ただし、メーカー系正規ディーラーとしての店舗はそれほど多くない。
「でも、街なかにはスズキやダイハツの看板を掲げた店舗はよく見かけるけど……」と、感じる人もいるだろうが、スズキとダイハツでは新車販売について協力関係を結んでいる「業販店」ネットワークが緻密に構成されており、とくに軽自動車販売においては業販比率が非常に高くなっている。
ダイハツあたりではほとんど正規ディーラーに近い規模を有するダイハツ車専売業販店もあるが、多くは町の自動車整備工場や中古車専売店が業販店を兼ねていることが多い。
聞くところによると、スズキやダイハツに限らず、ほかのメーカー系ディーラーでも「業販売り」というものは存在しているそうだ。
ちなみに、かつてのバブル経済のころまでは各セールスマンが自分の足で整備工場などへ出向き、自分専用の窓口として業販店を開拓していったとも聞いている。スズキやダイハツの正規ディーラーでは、店頭にやってくるような一般小売担当以外に、業販店を束ねる部署も存在するとのこと。
業販店を訪れたお客が新車をほしがっているとする。そこでディーラーの担当者へそのお客を紹介し、1台ごとに紹介料を受け取るというのが「紹介販売」となる。間に入る整備工場などはあくまで仲介業者となるので、契約はメーカー系新車ディーラーと購入客となる。

一方の業販店では、協力している新車ディーラーから当該車両をいったん業販店が「業販価格」で購入し、これをエンドユーザーに販売することもあるので、このケースでは契約主体は業販店とエンドユーザーとなり、メーカー系新車ディーラーは介在せず、注文書書式も業販店オリジナルのモノとなる。よって、納車後のメンテナンスは車両購入した業販店で原則受けることになる。
業販店としては新車販売で得られる利益はたかがしれている。ただ、自分のところで車両整備だけではなく自動車保険などの面倒までみることにより、利益を期待しているのである。

業販に新たなブランドも参入中
近所に正規ディーラーがないという物理的事情もあるが、やはり業販店の多くでは、そこの社長など経営者を中心にクルマに関する知識も豊富で「オピニオンリーダー」として頼ってくる人も多い。
実際によくある例では、「社長から新車を買いたい」という話も出てくる。正規ディーラーから見ればまさに「労せずして新車が売れる」といった感じで、メリットが大きいのである。
ただし、業販店はたいてい複数のメーカーの業販店を兼ねていることが多い。たとえばスズキとダイハツの業販店を兼ねているところも珍しくない。そこは経営者判断でスズキ車を勧めるか、ダイハツ車を勧めるか顧客の様子を見て判断しているようである。
惜しくも2024年に亡くなられた、スズキの鈴木 修会長は存命中、業販店を非常に大切にし、業販店もそれに恩義を感じていたとも聞いている。そのため、月末でスズキとダイハツが販売台数で激しく競っているときなどには、「オヤジさん(スズキ会長)の顔はつぶせない」として、スズキ車を積極的に勧めるところもあったとか。

そしていま、輸入ブランドのなかには、一部がいままでの業販的な売り方を率先しているところがある。具体的には、地方のカーライフに関して地域のオピニオンリーダーになっている人に、輸入ブランドの正規ディーラーを開業してもらっているというのである。
そんなオピニオンリーダーを慕ってディーラーに集まってくる人たちに、太鼓判を押して勧めるとなれば、予算や使い勝手さえあえば、そのブランド車に乗り換える人も出てくるだろう。なので、輸入車に抵抗のある地方部で、そういったブランドがよく展開されているとも聞いている。東京では支持する人も目立つ趣味性の高いブランドは、地方部の販売でもそれなりに効果を発揮しているようである。
トヨタやホンダ、日産並みに店舗数を増やすことができないなかでは、業販店ではなくとも、地域のオピニオンリーダーとして厚い信頼を地域の人から得る人が、ディーラーのオーナーになったりすることは、販売促進に効果的なようである。