この記事をまとめると
■インドでは大気汚染対策のひとつとして交通機関へのBEVの導入が進んでいる■霧状の水を空中に散水して大気汚染を対策するトラックが出動していた
■ガソリン車だけでなく「焚き火」などの行為も大気汚染の深刻化を助長している
インドの大気汚染が半端じゃない
日本でもたびたびニュースで取り上げられるのが、インドの深刻な大気汚染。
インドでは路線バス、ライドシェア車両(一般的なインドのタクシーは乗り合いになるので、日本のような個々に利用するパーソナルタクシー代わりに使われている)、三輪タクシー、二輪車を中心にBEV(バッテリー電気自動車)の導入が盛んに行われているが、その背景には深刻な大気汚染対策というものも大きくあるようだ。
筆者は2025年1月中旬から下旬にかけ、インドの首都デリーを訪れた。
到着してすぐに日が沈んだのだが、翌朝目が覚めてホテルの部屋のカーテンを開けると青空がかすかに見え、太陽の光りがさしていた。2023年の同じ時期に訪れたときには、平日はスモッグがたちこめ、青空を拝めるのは週末ぐらいだったので、これには結構驚いた。これもBEVの導入をはじめ、政府の大気汚染対策が若干とはいえ功を奏しているのかと思った。
しかし、その翌々日は、街じゅうがガスっていた。スマホの天気予報をみると「濃霧」となっていた。そして、お昼前には霧が晴れるとしていたのだが、霧が晴れる気配はなかった。そこで「これは霧ではないな」と筆者は考えた次第だ。
大気汚染の原因はクルマ以外にもあり
筆者のスマホは中国シャオミ製なせいかもしれないが、天気予報アプリを開くと 「大気汚染指数(AQI)」というものが表示される。これは「大気質指標」とも呼ばれるもので、PM2.5や一酸化炭素など6つの空気中の大気汚染物質を指数式で測定し、それに基づいた健康リスクを指標で表示するものである。筆者が日本で住んでいる地域はおおむねこの指標は60弱となっている。

そこで霧(?)の深い日にこの大気汚染指数をみると、日本の約6倍となる299が表示されていた。
ちなみに本稿執筆段階では、東南アジア諸国で大気汚染が深刻となって大騒ぎとなっていた。報道をみると大気汚染指数164ぐらいで学校を休校にするなど、まさに大騒ぎとなっているが、デリーで164あたりの数値は滞在中一般的に表示された数値なので、インドの大気汚染問題の深刻さをよく理解することができた。

この日、デリー市内各地では霧状にした水を空中に散水するトラックが出動していた。これは霧状に放水した水が大気中の汚染物質とともに地上に落ちることで、大気汚染を少しでも改善しようとして行われているとのことであった。

確かにデリー市内にはクルマがあふれ、あちこちでヘビーな渋滞が発生しているのだが、クルマが大気汚染の主原因というわけでもなさそうだ。より深刻な影響を与えているように見えたのが、デリーのあちこちで見かけた「たき火」である。

前述した大気汚染指数が299となった日の前夜は気温の低下が激しく、寒さから街のあちこちでひとが集まっているところの多くでは、地面で直接火を起こして暖をとっていた。しかもそのたき火の煙りの臭いには、プラスチック系のものを燃やしたような、やや有害と感じる臭いがしていた。とにかく街じゅうにヤバそうなたき火の煙りの臭いが充満していた。さらに、デリー市近隣都市の農作地帯では「野焼き」もいまだに行われているようで、これも大気汚染問題を深刻化させているとの報道も見たことがある。
調べてみると、インドで大気汚染が酷いときは大気汚染指数が500近くまでになるとのことであった。
「クルマだけが大気汚染の原因」というわけでもないが、ICE(内燃機関)車を放っておくわけにもいかないだろう。今度デリーを訪れたときにはさらに大気汚染が改善されていることを願っているし、おそらくそれは実現しているだろう。