この記事をまとめると
■1998年登場の初代キューブは画期的なボクシーコンパクト■広い室内空間を確保しながらも当初は4人乗りだった
■2代目以降は5人乗り化し独自のデザインで人気を確立した
現在人気のトール系コンパクトの先駆者的存在
いまではスーパーハイト系軽自動車やスズキ・ソリオ、トヨタ・ルーミーに代表されるボクシーなスタイルと高い車高をもつコンパクトカーが、空間効率のよさで多くのユーザーに愛されているが、ボクシーでトールボーイなコンパクトカーは、1990年代にすでに存在していた。
その1台が、1998年2月に「アソブ、ハコブ、キューブ」のキャッチコピーとともに発売された、2代目日産マーチの1.3リッターモデルをベースに仕立てられた初代日産キューブだ。キューブ=立方体の車名のとおり、2ボックス×5ドアのスクエアなエクステリアデザインを採用。
そのため、車内は解放感あるもので、リヤのガラスハッチを設けるなど、使い勝手の面でも革新的だったのだ。当時の国内コンパクトカー市場に類似のクルマはなかったので、ライバル不在の大ヒットを獲得したのである。
とはいえ、近いライバル車がいなかったわけでもない。例を挙げれば、マツダ・デミオやスズキ・ワゴンRワイドあたりになったのだが、キューブはとくに頭上空間のゆとりで圧倒していたことが思い出される。

もっとも、初代キューブのデビューから2カ月後の1998年4月にはホンダから同様のコンセプトを持つJ・ムーバーの第1弾、スペースフルな使い勝手を特徴とするハイルーフコンパクトワゴンのキャパが登場している。
つまり、1998年4月以降のこの新ジャンルのコンパクトカーとしてはキューブとキャパが揃い踏みすることになったのだ。その相乗効果だろうか、半年後の1998年10月の時点で、すでに生産台数10万台を突破した人気ぶりであった。

さて、初代キューブであるが、その広々としたインテリアはクリーンでシンプル、かつ収納をたっぷり用意したかなり実用的なもので、シート地もリビング感覚のファブリックが使われていた。なお、シフターはステアリングコラムから生えた、長いコラムシフトであった。

「頭上空間のゆとり」があると説明したが、前方見通し性のよさなどを考慮し、後席のヒップポイントを高めつつ、後席シート位置をニースペース確保のため後方移動させたため、後席の両端がリヤホイールアーチの位置となった。
搭載されたパワーユニットは、ベースのマーチにも使われているCG13DE型、1.3リッター直4エンジン+ローエミッションのCVTまたは4速AT。駆動方式はFFのみ。サスペンションもまたマーチと共通で、フロントがストラット、リヤが5リンク式だった。

改良を重ね2代目以降も人気モデルに
1999年4月には、オーテックジャパンによる特別仕様車「プレミアム」が加わった。エクステリアではライトゴールド色をあしらい、なんと本革シートを採用していたのが特徴だ。

しかし、早くも1999年11月にマーチと揃ってマイナーチェンジ。エンジンは前モデルより74cc拡大した1348ccとなるCGA3DE型に換装。CVTはクリープ機能をもつハイパーCVTへと進化している。ステアマチック完備のハイパーCVT-M6が加わったのもこのタイミングである。
2000年9月のマイナーチェンジでは、エクステリアデザイン、ヘッドライトが手直しされ、後席にスライド機構を追加するなどの改良が行われている。

そして、初代の役割を終えたキューブは2002年、初代のコンセプトと人気を引き継ぎながらさらにキュービックなデザインを纏い、「Cube MY room」をキャッチコピーとした2代目へとバトンタッチ。

もちろん、最初から5人乗りであったのだが、当時のミニバンブームに乗った3列シートモデルのキューブ・キュービックを名乗る3列シートモデルも2003年9月に登場している。
キュービックではホイールベースを2600mmに延長しているが、さすがに3列目席は緊急席そのものだった。なにしろ身長172cmの筆者が座ると、シート幅980mm、頭上に120mmはともかく、膝まわりスペースは0mm以下。そして、ラゲッジスペースは奥行き165mmという狭さだった。それでもコンパクトな3列シートモデルはミニバンブームの最中、欠かせない企画だったようだ。

それはともかく、初代キューブは時代を先駆けたコンパクトハイトワゴン、コンパクトユーティリティカーとして、いま思い返しても画期的なクルマだったといっていい。ただし、いま乗ってもおかしくない、いや、まったく古さを感じさせず、目立って乗れるキューブは2代目になるかもしれないが……。