この記事をまとめると
■中古車売買のルールでは「修復歴」の表示を義務化している■修復歴は「車体骨格部位」を修正あるいは交換した場合が該当する
■「時価」よりも修理費用が高いと保険会社は「全損=廃車」と判定する
修復歴とはそもそも何を指す?
中古車を購入するとき、できれば避けたい「修復歴あり」のクルマ。
自動車公正取引協議会などのルールでは、中古車を売買するとき、修復歴の告知が義務づけられているので、知らずに「修復歴あり」のクルマを掴まされる事例は最近だと少なくなったが、オークション会場に出品するクルマの2~3割は「修復歴あり」のクルマだといわれている。
「修復歴あり」のクルマは、修復歴のないクルマに比べ、車体価格が修復の程度が軽微なものでも 10~20%、 重度なものだと 40~60%も下落するので、修復歴のある・なしは非常に重要な要素だ。
では、その修復歴とはどんな内容で決まるのか?
日本自動車査定協会によると、修復歴車とは、「交通事故その他災害により車体骨格部位を損傷し、修正あるいは部品交換により修復した車両」と定義付けされている。

ここで出てくる「車体骨格部位」とは、具体的には下記のこと。
・フレーム(サイドメンバー)
・フロントインサイドパネル(エンジンルームの左右に設置されたパネル)
・ルームフロアパネル
・フロントクロスメンバー
・トランクフロアパネル
・ピラー
・ダッシュパネル
・ルーフパネル
これらを交換したり、修正したりして「修復」したクルマは、「修復歴あり」のクルマ。
そうでないクルマ、たとえばバンパーを交換したり、フェンダーを交換したり、ドアの凹みを直したりするのは、「修復歴あり」には当たらない。

大雑把にいえば、外板部品は板金しようが、交換しようが、パテを盛ろうが、塗装しようが、「修復歴」扱いにはならないと思っていい。
大事故で修復が高額になる場合は廃車扱いに
なお、前述のように「修復歴あり」のクルマは相場よりも安く購入できるメリットがあるが、購入後、およそ4割のクルマに何らかのトラブルが発生しているとされるデータもあるので、クルマに詳しくない人や、長く乗りたいという人は、「修復歴あり」のクルマを避けるのが賢明だ。
ちなみに事故を起こしたクルマが、償却率や中古車相場などに基づいて決められる「時価」よりも修理費用が高いとジャッジされると、保険会社は「全損=廃車」と判定する。
というのも、保険会社が支払う修理代金の上限は、通常そのクルマの「時価」と同額だからだ。

しかし、保険会社に「全損」といわれても、そのクルマが無価値になるわけではない。修理すればまだまだ乗れたり、古いクルマでもマニアには人気のあるクルマだったりすれば、保険代の折り合いがつかなくても十分価値がある。
経済学では、モノの価値について「使用価値」と「交換価値」のふたつにわけて考えるのが一般的で、別途「象徴価値」(物語性=ブランド)も加わるので、これらの3つの価値がすべてなくなるまでは、価値あるクルマと考えていい。

たとえば、壊れて不動車になったとしても、展示しているだけで価値があるクルマもあるし、機械的には問題がないのに、不人気車で買い取り価格が二束三文なら、交換価値はほとんどゼロ。
保険会社の被害算出は、なかなかこうしたことまで加味できないので、ときとして示談交渉が難航することがあるが、この手のトラブルを避けるために、対物超過修理費用特約を付帯する自動車保険も増えてきている。