この記事をまとめると
■中国の通販サイトにAE86レビンのフルモノコックが出品されている■コピー技術の進化と中国の人件費等の安さによりわずか9000ドルで販売されている
■日本の技術流出の現実を反映している一例でもあるといえる
「中華コピー」はついにモノコックシャシーにまで
中国の通販サイトは見ているだけでも楽しいものですが、なかには目を丸くするような品物もチラホラ。とりわけ、明らかなコピー商品にはもはや苦笑いしか浮かべられませんが、こちらの商品には度肝を抜かれてしまいました。なんと、トヨタの名車、AE86レビンのモノコックシャシーが売られているのです! 驚き、二度見、そして「これ買っていいの?」という疑問まで、とにかくクルマ好きなら興味を抱くこと間違いありません。
中国の大手通販サイト「アリババ」に出品されていたのは、商品名もそのものずばり「AE86のフルボディモノコック」。はじめて目にした際はわが目を疑うもので、もしかして24分の1スケールのよくできたモデルカーか? と思ったくらい。ですが、値段は9000ドル(約135万円)と、ミニチュアにしては異様な設定。

どうやら、中国の工場が独自に作り上げた1分の1モノコックで、商品説明には「高強度鋼」や「スポット溶接」あるいは「亜鉛メッキ」といったそれらしい言葉が散りばめられているのです。無論、スタイルは86そっくり、というよりそのものに見えますから、コピー技術もここまで進化しているのかと、感心すら覚える始末。

そもそも、シャシーの製造技術は工業技術の粋を集めたもの。板金から切断、そして接合といったプロセスにはメーカーが、というよりその国のもてる技術が総動員されているはず。こういっては失礼かもしれませんが、中国本土でたかだか20年ほど工場をやったくらいでおいそれと追いつけるものではないはずです。
技術流出によって安価にコピー製品が出まわる
もっとも、何年も前から日本のテクノロジーや優秀な技術者、あるいはノウハウ、パテントといったものが合法非合法にかかわらず中国に渡っているのは周知の事実。一説によれば、日本国内で使われなくなったボディの金型が中国に輸出されているとか、定年で引退したエンジニアが高額なサラリーでリクルートされたとか、技術の流出はもはや歯止めが利かない状態とされています。

すると、現役から退いて数十年たったクルマの金型、あるいはそのレプリカが中国の工場でちゃっかり使われていたとしても不思議ではありません。現にこちらの工場は86だけでなく40系ランドクルーザーやディフェンダー110のフルボディなどなど、いくつもの商品をラインアップしており、声高に技術の高さを売りにしているのですから。

しかしながら、金型や接合に関するノウハウがあったとて、それらを活かす工業機械やソフトが貧弱ならば仕上がりもペラっペラのフニャフニャになりかねないはず。ですが、いまや工業機械そのものを作る技術や工場も引退した日本の技術者などによって「万全の態勢」。むしろ、日本製より能力はいくらか劣るとしても値段は10分の1なんてことだってざらにあります。
安くてそこそこ能力のある機械でもって、これまた安く仕入れたそこそこの高張力鋼板を、人件費の安い地方でバンバン作る、となったらフルモノコック9000ドルというのも悔しいけれど納得です。

無論、コピー商品を購入するのはご法度ではありますが、この点だけクリアできれば「ほしい」と思う方も少なくないでしょう。一般道はともかく、サーキットなど限定的な使い方であればおそらく不満が生じるものでもないはず。
当然、溶接の仕上がりや寸法などきめ細かくチェックすべきでしょうが、それは中古の86を手に入れたとしても同様かと。むしろ、ベアシャシーになっているぶんだけ、作業がしやすくもなるというもの。あとは、トヨタの法務部あたりが「ちょっとお話が」と近寄ってこないことを祈るのみ(笑)。
ともあれ、すべては日本の技術や知恵が流出した末の笑えない話にほかなりません。単なるコピー商品かと、口を歪めているだけでは我が国の未来は絶望が待つのみです。どげんかせんとならん! とは、まさにこういうことをいうのではないでしょうか。