この記事をまとめると
■ノスタルジック2デイズでフルノーマルなハチマル車を探索した■ディーラーや専門業者によるレストア車など3台を紹介
■維持に手間暇かかったクルマばかりで希少なノーマル車の価値を再認識する機会となった
「ノスタルジック2デイズ」でフルノーマルな1980年代車を探す
今年で16回目を迎えた、日本最大級のクラシックカーイベント「Nostalgic 2days」。スポーティなカスタマイズカーが目立つ会場ですが、“どノーマル”なハチマルを愛車にする筆者としては、あえて自分の心の琴線に触れるクルマを探索。今回はそんな3台を紹介したいと思います。
●メーカー系ディーラーが手がけた逸品
最初に紹介するのは、茨城トヨペットが展示した5代目のトヨタ・マークII(X70型)です。黒基調の上品なブースに展示された「GT TWIN turbo」はまるで新車のように輝くボディが目を引きます。
「数年前からレストア事業の計画を開始、弊社の創立70周年に合わせて第1号は70系のマークIIにしようと。まあ、偶然に程度のいい個体が見つかったこともあるのですが(笑)[茨城トヨペット株式会社 管理部人財創造課 係長 島田敏久さん]」。
トヨタ系ディーラーによるレストア事業はネッツトヨタ富山や奈良トヨタが有名ですが、それに次ぐ格好でのスタート。旧いクルマに乗り続けたいというお客さんをディーラーとして見捨てないという趣旨はあっぱれです。
「新品パーツは出ないので、今回はパワーウインドウのレギュレーターパーツを新規で製作したり、内装はすべて分解、熱を加えて歪みを修正するなどをしています」とのこと。

2日間の会期中にはなんと10件以上の「引き合い」があったそうですが、このマークIIは記念すべき第1号として販売の予定はなく、今回のようなイベントなどで展示の予定。

「あくまでも個人的な希望ですが、今後は初代のMR2などを扱ってみたいですね。ディーラーによるレストアとしての信頼に応えられるよう、お客さまとのコミュニケーションを図ってゆきたいと思います」。
手間暇たっぷりかかった純正状態の維持やレストア
●フルノーマルにこだわったレストア事業
次に紹介するのは、北九州市のM:CRAFTが手がけたスズキの初代カルタスです。「オレ・タチ、カルタス」のCMが有名なコンパクトカーですが、展示車はのちに追加されたスポーティグレードのGT-iで、とにかくピカピカのボディが印象的。
「もともとは半導体のメッキなどを手がけていましたが、会長がクルマ好きだったこともあり、7年ほど前からレストア事業を始めたんです」と話してくれたのは、トータルリペア エム:クラフト代表の冨岡正浩さん。

その会長の主義に伴い、同社はノーマル車としてのレストアが基本。
「もともとボディ色は白だったのを当時純正の別色に再塗装。痛んだモール類は他社の軽自動車用などを流用、シートは生地店で近い柄を見つけて張り替えました。ウインカーなどレンズ類は裏から塗装することで再生しています」。

機関パーツでは、ガスケットなど一部は海外から取り寄せたほか、止め金具類はメッキ会社らしく新品同様に再生。徹底したレストアは1年に及んだといいます。
「じつは今日オーナーさんが来ていて、イベントが終わったらこのまま乗って帰ることになっているんですよ(笑)」。

●大切に保管された奇跡の1台
最後に紹介するのは、珍しくメーカーとして出展しているマツダブースから、2代目RX-7(FC3S型)です。同社のレストア事業としてはロードスターが有名なので、「なぜFCが?」と思われた方も多いのではないでしょうか。

「車庫保管、走行1万7000キロという個体を入手したオーナーさんが手放すという話があったんです」と話をしてくれたのは、同社国内商品マーケティング部 商品広報チーム シニアエキスパートの田中秀昭さん。
奇跡的な個体を手に入れたものの、オーナーがアメリカ在住時に憧れていたマーキュリー・コメットを新たに入手。4年間、自身のカフェに飾っていたFCを手放すことに。

「広島のミュージアムには後期型のカブリオレはあるのですが、前期型のクーペはなく、ずっと探していたんです」と快く譲り受けたマツダ。車体の裏側までピカピカで、会場近くの同社研究所からの自走も避けたというから驚き。おそらく、ミュージアムにもこのままの状態で展示されるだろうとのことです。

さて、今回は派手な展示車のなかであえてフルノーマルなハチマルを選んでみました。同時期のクルマは「手を入れる」ことが前提のような風潮もありますが、こういう希少なクルマも大切にしたいものです。