この記事をまとめると
■東日本大震災が発生して災害時のクルマの防災・備蓄の重要性が見直された■車中泊がしやすい車種や電源供給ができる電動モデルへの乗り換えも防災対策のひとつ
■クルマの燃費に影響しない程度で車中泊が快適にできる装備選びも重要
災害時にはクルマが緊急避難場所になりうる
東日本大震災から14年。その日、お台場で新車の試乗会に参加していた筆者は、芝浦のヤナセ前あたりで車体に尋常じゃない大きな揺れを感じた。クルマを道路脇に寄せてハザードランプを点灯させ、ラジオを付けると大地震のニュースが流れていた。
当時、乗っていたミニバンのガソリンはほぼ空に近い状態。近所のガソリンスタンドはどこも被災して休業か、開いていてもガソリンスタンドには長蛇の列ができている、というありさまだった。
たまたま仕事の試乗のためにその日の朝に借りていたガソリン満タンのトヨタ・プリウスがあったため、しばらくはプリウスに近所のガソリン難民の人たちを乗せては、銭湯を往復したものだ。以来、万が一家が倒壊してもクルマが無事であったときのことを考え、防災・備蓄についても準備を怠らないようにしてきたのである。
改めて、クルマが災害時にどう役立つかだが、車内にいれば雨風を防げるとともに、停電時でもラジオやテレビから情報収集をすることができるし、もちろん、エアコンも利く。災害時の命綱、情報源になりうるスマートフォンの充電だって可能だ。
そして車内は、シートアレンジによって、多くの車種でフラットアレンジが可能。車内をお座敷化、ベッドルーム化することができれば身体を休めることができる。とくに愛犬や愛猫と暮らしている家族は、避難所に行けても、動物は一緒に避難所のなかに入れないことがほとんど(国が推奨している同行避難と同伴避難では意味が異なる)。
シートアレンジで車内をお座敷化、ベッドルーム化しやすいのはミニバン……という先入観があるかも知れないが、SUV、ハッチバック、ワゴン、軽自動車でも可能。愛車がフラットアレンジできるかどうかを改めて確認しておくといいだろう。下の画像のスズキ・ハスラーの場合、純正アクセサリーとしてロール状でコンパクトに畳めるリラックスクッション=ベッドマットも用意されている。

ハイブリッド、PHEV、BEV(電気自動車)にAC100V/1500Wコンセントが付いているなら、車内外で湯沸かしポットや簡易電子レンジ、照明、充電式湯たんぽなどの家電品を使うことも可能になり、ノートPCの充電も可能だ。

さらにいえば、災害は自宅にいるとき、家の近所にいるときに起こるとは限らない。ドライブ先で災害に合い、被災することだってありうる。その際、クルマから離れる必要がある場合は、クルマを安全かつ緊急自動車の通行の妨げにならない場所に止め、キーは付けたまま(置いたまま)ドアはロックせずに安全な場所に避難……という流れになるのだが、車内に最小限の車内防災グッズを積載しておけば、それをもち出すなどして最悪の状況から免れることができるかも知れない。
最小限の災害対策グッズの常備で安心
そこで3.11以来、筆者は車内に防災グッズを積んでいるのだが、あちこちにバラバラに積んでいても意味なし。コンパクトなリュックにミネラルウォーター、LEDライト、救急用品、タオル、ウエットティッシュ、ホイッスル、ノート&ペン、マジックペン、白のガムテープ(文字が書けるもの)などを入れ、ラゲッジルームに置いてある。
ただし、これらの防災グッズはリュックの容量の3分の2ぐらいに抑えておくことがポイント。理由はクルマから離れる際、車内に積んである貴重品、車検証なども併せて詰め込みたいからだ(常に大きなバッグを携帯してドライブに出かけるわけではないだろう)。

ちなみに、車内に置いておきたい防災リュックとその中身は、自身で用意してもいいし、それが面倒というなら、ボルボではリュックに収められた「防災セット」が販売されているので、ボルボユーザーでなくても利用するといい(実際、筆者もボルボユーザーではないが、利用している)。
北欧、スウェーデンらしいデザインの、夜間の避難にも適したリフレクター付きのリュックで、なかには「不織布マスク8枚」、保温や防水性に優れた「簡易ブランケット1枚」、「軍手1組」、「簡易トイレ2回分」、「絆創膏1箱」、「マウスウォッシュ3回分」、「ホイッスル」、「カイロ1個」、「圧縮タオル」、「クッキー」、「クリアボトル」、「洗い流し不要シャンプー」、「ウエットティッシュ」、「厚手ウエットティッシュ」、クルマを離れる際にフロントウインドウ内側に貼っておく「緊急連絡先用紙」、「ラジオライト」、「飲料水2本」、「畳めるヘルメット」、「防水ブルーシート」が入っている。

筆者がそのほかに車内に用意しているのは、スマホのUSB充電ケーブルはもちろん、PD対応のUSB充電プラグ(クルマに装備されるUSB-A、USB-Cソケットより急速な充電が可能)、追加のミネラルウォーター500mlボトル数本、簡易トイレ、ティッシュボックス、そして車内でUSB充電+単四電池で点灯するLEDランタン、防寒アルミシート&ポンチョ、バスタオルなどである。

さらに、車内のプライバシーを守る全周カーテン、春から秋にかけては、クルマのウインドウを開けて車内に避難しているときの蚊などの害虫侵入対策として防虫カーテンも用意している(不使用時はコンパクトに畳める)。
これらを揃えておけば、ミニバンやハッチバック車のバックドアを全開にして通気、換気しても、害虫侵入対策になるから快適・安心だ。

愛犬・愛猫と暮らしているなら、その避難用品も最小限、積んでおくといい。実際、愛犬と暮らしているわが家でもそうしているし、ペット用の防災バッグも販売されているから参考にしてほしい。

ここで「そうした車内に備蓄する防災グッズを車内に積みっぱなしにしていると、燃費が悪化するはずだから考えものだ……」という意見が出てくるかも知れない。が、国土交通省が公表している「エコドライブ10のすすめ」によれば、ガソリン車が100kgの荷物を積んで走った場合の燃費悪化は3%程度とされ、5~10kgぐらいの防災グッズの常時積載であれば、燃費の悪化はほぼ無視できるといっていい。
それよりも、いざというときのために、車内に最小限の災害対策グッズを常備しておいたほうが安心だと、3.11で被災した経験のある筆者は考えている。
さらに、備えあれば憂いなしで、コンパクトに車載できる組み立て式簡易トイレ(着替え用テント併用)やUSB充電式シャワー、ミニバン用の寝袋なども、常時、車載こそしていないものの、用意している。

大地震、大災害はいつ起こるかわからない。日々、ガソリン車、HV車はできるだけガソリン満タンを心がけ、EVやPHEVであれば充電を怠らないように心がけておくことも重要だろう。