この記事をまとめると
■デビュー当時から数十年に渡って変わらぬ雰囲気を守り続けるクルマが存在する■長寿モデルはユーザーの愛着やメーカーのこだわりが背景にある
■進化しながらも伝統を守るデザインが根強い人気の要因となることもある
もはや変えるに変えられない!?
モデルライフが長いクルマであっても、フルモデルチェンジするたびにガラリをデザインを変えてくるモデルがあるいっぽうで、代を重ねてもデビュー時の雰囲気を色濃く残しているケースもあります。
メーカー側がデビュー当時のデザインを大切にしてかたくなに守っているケースもあれば、ユーザー側が「変えたら乗るのをやめる!」と、盲目的に愛してしまっている場合もあります。そんなデビュー当時とフォルムがほぼ同じ5つのモデルをピックアップしてみました。
●ポルシェ911
・デビュー年:1964年
・現行モデル:8代目
・現行モデルデビュー年:2018年
次から次へとニューモデルが発売されても、ポルシェを象徴、代表するモデルといえば、いまも昔も911です。8代目にあたる992型は2018年にデビュー。2024年には後期モデル、通称「992.2型」へとアップデートして、モデルバリエーションを増やしつつあるところです。そのなかには、ついにハイブリッド仕様の911も追加。今後の動向に注目しているファンも多いはず。

ボディサイズを比較すると……
・初代:全長×全幅×全高:4135×1600×1273mm
・現行(カレラ):全長×全幅×全高:4542×1852×1300mm
デビュー当時と比較して親子といえるくらい大柄になったことが分かります。それでもあらゆる角度から見回しても、ひと目見て911とわかるデザインは見事としかいいようがありません。911のレーシングモデルのエンジンレイアウトはMRになったのに、911はRRのまま。ユーザーが「911特有のデザイン・RR・水平対向6気筒エンジン」以外のパッケージは911として受け入れられないということをメーカーも理解しているのでしょう。
●メルセデス・ベンツ Gクラス

・デビュー年:1979年
・現行モデル:3代目
・現行モデルデビュー年:2018年
軍用車としてのルーツを持ちながら、1979年に市販車としてデビューしたのがゲレンデヴァーゲン。古くからこのモデルを知る人は、いまでも「ゲレンデ」と呼びます。1990年に2代目(W463型)にフルモデルチェンジしたあたりから、少しずつモダン路線に。日本では5ドアがメジャーですが、3ドアやカブリオレ仕様もわずかながら実在します。そして2018年に3代目(W463A型)にアップデート。

ボディサイズを比較すると……
・初代(5ドア):全長×全幅×全高:4480×1800×1950mm
・現行(5ドア):全長×全幅×全高:4817×1931×1966mm
デビュー時から無骨な箱型であるため、基本的なデザインはほぼ変わらず。というより、ポルシェ911と同様に「変えるに変えられない」というべきでしょうか。かつてはGクラスが生産終了といった噂もありましたが、あまりの人気ぶりにモデルの販売を継続。ついにはEVモデル「G 580 with EQ Technology」まで発売されています。大柄なボディながら見切りがよく、実は運転しやすいクルマだったりします。
●BMW MINI

・デビュー年:2001年
・現行モデル:4代目
・現行モデルデビュー年:2024年
通称「クラシックミニ」と呼ばれるモデルのデビューは1959年、そしてBMWが受け継ぎ「BMW MINI」として新たなスタートを切ったのが2001年のことでした(日本での販売開始は2002年から)。2007年に2代目へとフルモデルチェンジされ、2014年に3代目、そして現行モデルにあたる4代目は2024年に発売されたばかり。往年の3ドアだけでなく、いまやコンバーチブルや5ドアをはじめ、クロスオーバーやカントリーマンなどさまざまなボディバリエーションを展開中。

ボディサイズを比較すると……
・初代(3ドア):全長×全幅×全高:3625×1690×1425mm
・現行(3ドア):全長×全幅×全高:3880×1750×1460mm
最近のモデルは体格も立派になり、もはやミニではないという声もちらほら聞こえてきます。しかし、意外にも数値上ではひとまわり大きくなった程度です。もっともベーシックな3ドアのミニは往年のミニらしさを感じさせるデザインを残していますし、BMWが携わる限り、この路線を貫いてくれるのではないかと期待したいところです。
日本を代表する超長寿モデルは伝統を崩さない!
●トヨタ・センチュリー(セダン)

・デビュー年:1967年
・現行モデル:3代目
・現行モデルデビュー年:2018年
初代センチュリーは1967年デビュー、そして2代目は1997年デビューと、ひとつのモデルライフが極めて長いセンチュリー。現行モデルにあたる3代目は2018年デビューなので、初代が30年、2代目は21年と続いたことを考えると、一部改良を重ねつつも優にあと10年くらいは生産されることが考えられます。

ボディサイズを比較すると……
・初代:全長×全幅×全高:4980×1890×1450mm
・現行:全長×全幅×全高:5335×1930×1505mm
1967年の時点で全長5メートル級と、とてつもなく大きなクルマだったことが伺い知れます。現行モデルは全長約5.4メートル、全幅もほぼ2メートル。日本が誇る屈指の高級車だけに格の違いを実感します。また、2023年に発売されたSUV仕様のセンチュリーにも驚かされた人が多いのではないでしょうか。センチュリーSUVは、購入時に審査があるとされるモデル。まさに選ばれた人でなければ所有することが許されない、特別なクルマです。
●スズキ・ジムニー

・デビュー年:1970年
・現行モデル:4代目
・現行モデルデビュー年:2018年
デビューから55年でまだ4代目と、センチュリーと同様にモデルライフが非常に長いジムニー。フルモデルチェンジを繰り返すよりも、一部改良やマイナーチェンジを繰り返すことで熟成を重ねていく方式といえます。現行モデルは2018年にデビューして以来、納車まで1年ほど待つ状況が続いており、先日ついに追加された5ドア仕様の「ノマド」は、発表からわずか5日で受注停止に。指名買いのユーザーが多いモデルだけに、この人気高騰はしばらく続きそうな気配が濃厚です。

ボディサイズを比較すると……
・初代(LJ20型):全長×全幅×全高:2955×1295×1670mm
・現行(JB64型):全長×全幅×全高:3395×1475×1725mm
初代モデルから約50年後にデビューした現行モデルにあたる4代目ジムニー。
●まとめ:長く愛されるモデルはブレない?
2014年に開催されたマツダ ロードスター(ND型)のデビューイベントに、仕事抜きでいちクルマ好きとして参加したときのことです。メディアだけでなく、多くのロードスターファンが見守るなか、現行モデルのロードスターが姿を現したとき、会場から自然と「オー!」というどよめきと拍手が湧き起こったのです。
作り手であるメーカーが「イメージを保った」と世に送り出しても、評価するのはあくまでもユーザーです。一瞬で「コレじゃない」といった評価を下されてしまう可能性もあるなか、筆者を含めて好意的なリアクションだったと記憶しています。そして、いま、多くの現行ロードスターが街なかを走っています。10年選手とは思えないほど古さを感じさせない魅力的なデザインです。

長く愛されるモデルはそれだけユーザーの期待値が高く、開発陣のプレッシャーも相当なものであることが容易に想像できます。と同時に、ある種の極限状態に追い込まれたからこそ、長く愛されるモデルが生み出されるのかもしれません。