燃料代を安く抑えられるのが最大のメリット!

タクシー車両はガソリンでも軽油でもなく「LPG(液化石油ガス)」を燃料に使っているクルマが多い。最新のタクシー専用車であるトヨタJPN TAXI(ジャパンタクシー)も、LPGを使う1.5リッターハイブリッドをパワートレインとしている。そのほか自動車学校の教習車でもLPG仕様のエンジンを積んでいるケースもあったりする。



では、LPGを使うメリットは何であろうか。環境にやさしいという面もあるが、業務用車両にLPGエンジンが多いのは、はっきり言って燃料代が安く抑えられるからだ。税制の関係からLPGはガソリンよりも絶対的に安いのだ。石油情報センターの統計データをみると、自動車用LPG(オートガス)の店頭価格全国平均値はリッターあたり86円。地域によっては60円台となっている。つまり、ガソリンに対して6~7割の価格感といえる。



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タクシーなどの業務用車両においては、ランニングコストの低減はダイレクトに利益につながるのはいうまでもない。また、自動車用のLPGはブタンやプロパンなどを混合したものだが、原油のほか天然ガスからも作られているため、燃料の安定供給にもつながるのもメリットだ。災害時にも強い燃料といえる。



さて、かつてタクシー用のLPGエンジンはパワーに劣るという見方もあったが、それはクルマの素性も影響している話であって、前述したJPN TAXIについていえば、システム最高出力は73kW(100馬力)。



ガソリンや軽油よりも安いのになぜ? タクシーに採用されるLPガス車が乗用車に広まらないワケ



同じ1.5リッターのガソリン・ハイブリッドシステムを積む同社のアクアと比べて、スペックはほぼ同一となっている。安くて、パフォーマンス面でも不満がないのだから業務用のクルマにはメリットしかないように思える。



デメリットはメンテナンスにかかるコストやインフラ面

では、デメリットはないのか? 個人ユースで考えるとLPGを充填する燃料タンク(LPGガス容器)に6年ごとの定期点検が必要というのはメンテナンスコストとして気になるところ。ボンベとバルブの検査を受けて、それをクリアしていないとLPGを充填することができなくなる。



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また、タクシーのトランクに荷物を積むときに大きなタンクが確認できるだろうが、ラゲッジスペースなどパッケージングへの悪影響は無視できない。とくに軽自動車などコンパクトなクルマではLPG化というのは現実的ではないだろう。



さらに課題なのは燃料インフラだ。LPGを充填できるLPGガススタンドの数は、全国で1500か所ほどしかない。いわゆるガソリンスタンドは減ったとはいえ3万店舗以上なので、LPGガススタンドはかなり少ない。



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もっともタクシーが使っているので都市部であれば見つけることは容易なのだが、一般ユーザーが日常的にLPG車を使うには不便に感じることも少なくないだろう。そのためLPGエンジンのクルマは一般向きではないというのが日本での状況だ。



なお、お隣の韓国では環境保護の観点からLPGの普及を進める政策が取られている。それまでは一般ユーザーに規制されていたLPG車が2019年3月から解禁された。これはディーゼルに対して、PM(粒子状物質)などの面でLPGが有利という部分を評価したからだという。

グローバルには電動化によるエミッション対策が増えているが、LPGには環境面でもメリットがあるというわけだ。

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