正しい姿勢を取りやすくする工夫は各メーカーとも行なっている
クルマを運転する上で非常に大切なもの、それがドライビングポジションだ。しっかりしたドライビングポジションが取れればいざというときも適切な操作が可能となるし、長時間の運転でも疲れにくくなるため、いいこと尽くしというワケだ。
それだけに各メーカーともドライビングポジションの適正化には力を入れており、メーカーによっては開発段階からそれを意識して、タイヤハウスの張り出しを抑えたり、正しい姿勢を取りやすくするためにペダル配置を見直したりしている。
高級車などになるとシートの前後調整やリフター機構はもちろん、ステアリングもチルトとテレスコピックが備わり、さらに電動調整式ともなればミリ単位の調整も可能となっている。さらにそのポジションを何パターンかメモリーすることもでき、ドライバーが変わっても常に最適なドライビングポジションを取れる工夫がなされている。

細かく調整できたほうがいいがコストの壁が立ちはだかる
しかし、残念ながら一部のコンパクトカーや軽自動車、商用車になるとその調整幅は大幅に小さくなってしまうのが現実だ。軽トラックなどではスペースの問題もあり、シートの前後方向の調整程度しかできない車種も少なくない。また、ファミリー層が使うようなスライドドアを備えたハイト系軽自動車であっても、シートリフターやチルトステアリングがオプションという車種もある。

本来であればこういったさまざまな体型のユーザーが乗るような大衆車こそ幅広い調整幅が必要となるのだが、ここに立ちはだかるのがコストの問題だ。クルマにある程度知識がある人であれば、適正なドライビングポジションを取ることの重要性はお分かりかと思うが、そこまでクルマに興味のないユーザーからしてみれば、重要なのは価格の安さ。同じようなスライドドアを備えたハイト系軽自動車であれば、少しでも安い方に目がいってしまうのだ。

たとえオプションでシートリフターなどを付けた結果、そちらの車種のほうが総額で高くなるとしても、最初の価格の印象だけで選んでしまうユーザーがまだまだ少なくない。そのため、少しでもライバル車よりも安く見せるためにこういったものをオプション化するメーカーが出てきてしまうのである。
また、当然ながら広い調整幅を持たせることによって車両コストも上がってしまうので、そういった点でも価格に敏感なユーザーの多い大衆車ではそこまで費用をかけられないというのが実情なのだ。