エンジンのピストンには限界速度がある
エンジン回転数の限界は、ピストンが往復運動をする際の速度と関係する。その速度はどのように導き出されるかというと、ピストンストロークによる。
エンジンのピストンは、上死点と下死点で速度がゼロになり、ストロークの中間で最高速になる。
ところで、そのピストン速度は25m/秒(時速90km)が限界といわれている。スーパーカーやレース用エンジンではそれを上まわる例がないわけではないが、ここが一つの基準といえる。25m/秒をストロークから換算すると、上記のスクエアストロークの86mmを例に導き出すと、290mm/秒で、1分に換算すると60を掛けるので、17400mm/分になる。そしてエンジン回転は、ピストンが往復して1回転となるので、2で割り算すると8720回転/分という数字が導き出せる。これが、排気量2000ccで直列4気筒エンジンの、スクエアストロークでの計算上の限界回転数だ。
ボア×ストロークが違えばピストンの速度が同じでも回転数が異なる
そのうえで、ショートストロークの設計を選べば、ピストンの往復距離が短くなるので、同じピストン速度の限界であっても回転をより高くすることができる。そこで、スポーツカーやレーシングカーなどのエンジンはショートストロークを選ぶ場合が多い。逆にロングストロークの設計では、ピストンの往復距離が長くなるため最高回転数は低くならざるを得ない。

ほかに、同じ排気量2000ccでも6気筒エンジンであれば、1気筒の排気量が約333ccと小さくなるので、ボアもストロークもより小さな数値になるから、エンジン回転数を高くすることができる。
以上はしかし、計算上の話であり、シリンダー内を往復するピストンによる摩擦損失や、エンジンを稼働させるうえでのバルブ駆動、クランクでの回転に際しての摩擦抵抗も生じる。それら周辺の機構による部品点数の違いなどを含め、耐久性なども考慮しつつエンジン回転数は定まってくるので、単に数字上の計算だけで回るエンジンと回らないエンジンを語るのは難しい。

とはいえ、エンジン回転のよく回るとか回らないに対する一つの指標として、ピストン速度の限界が関係していることは興味深いことではないだろうか。