もともとは日本でいう軽トラックのようなイメージ
アメリカ本土に行くと、街中やフリーウェイでピックアップトラックを目にする機会が多い。とくに、テキサス州、ルイジアナ州、アラバマ州、ジョージア州などアメリカ中西部から南部にかけての地域ではピックアップトラックがウジャウジャと走っているように感じるくらい普及している。こうした状況になったのは比較的に最近で、90年代に入ってからだ。
そもそも、ピックアップトラックは商用車である。農家や牧場など、広い敷地で作業するためのクルマとして、庭の手入れをするガーディナー用として、建築・土木などの作業車として、また酒屋など個人商店の運送用などとして使われるのである。日本でならば、軽トラックのようなイメージだ。
それが80年代後半から90年代初頭にかけて、まずはSUV人気が上昇。ジープチェロキーが火付け役で、フォードエクスプローラーが爆売れした。こうしたSUVブームの背景には、SUVの利便性に加えて、「タフネス(力強さ)」という商品イメージが、ブルーカラーだけではなく、ホワイトカラーにもウケたことが挙げられる。それが女性層にも飛び火。こうした「タフネス」イメージという点で、ピックアップトラック人気も上昇した形だ。
人気のあまりレースまで行われるほどに!
ピックアップトラックといえば、フォードFシリーズがいまも昔も定番である。そこに「タフネス」イメージを全面に押し出した、シボレーC/Kシリーズが対抗。そしてクライスラー(当時)がダッジラムをフルモデルチェンジ。旧ビック3による三つ巴の戦いへと発展した。

ピックアップトラック人気を受けて、全米ストックカーレース団体のNASCARは1994年にスーパートラックシリーズ(現:ガンダー・アウトドア・トラックシリーズ)を試験的に導入し、翌1995年から正式シリーズとして全米規模で開催するに至る。
こうしてアメリカにおけるピックアップトラックの普及がどんどん進むなか、それまではボディサイズが小さいミッドサイズピックアップトラックをメインマーケットとしていた日系メーカーも旧ビック3と同様に排気量5~6リッター級のV8エンジン搭載のフルサイズピックアップトラック市場に参入。トヨタはタンドラ、日産はタイタンを量産した。ホンダも一時、フルサイズピックアップへの参画を検討したが、最終的にはSUVとピックアップを融合したSUTカテゴリーにV6エンジン搭載のリッジラインを投入した。

2019年時点でも、アメリカのピックアップトラックは不動の地位にあり、老若男女にとってのプライベートから仕事まで、普段使いクルマとして重宝されている。