注意すべき点が可視化されるのはプラス
自動車教習所や自動車学校(以下、教習所)に入校すると、最初に運転適性検査を受けることを覚えているでしょうか。運転免許を取得することを制限するものではありませんが、文字どおり適性について可視化してくれるものです。とはいえ、ふるい落としに使っているわけではないので、無意味という印象もあるかもしれません。
はたして、運転適性検査に意味はあるのか? 運転免許保持者が、適性検査を受けた感想をお伝えしましょう。
いま全国の教習所で使われている運転適性検査には警視庁式とOD式があります。どちらが優れているということもありません。それぞれが運転に必要な能力をわかりやすく数値化・指標化するものです。いずれも30分程度のマークシート式の検査ですから、ある程度のパターンにはめ込むものですが、それにより明確な結果が出るのも特徴です。基本的には、自分自身の特性を可視化するものですから見栄をはったり、偽りの回答をするのではなく、素直に思ったとおりに答えることが重要です。
今回受けたのはOD式安全性テストでしたが、その結果は大きく「運動機能」、「健康度・成熟度」、「性格特性」と3つのカテゴリーにわかれています。さらに細かくいえば「注意力」、「判断力」、「柔軟性」、「決断力」、「緻密性」、「動作の安定性」、「適応性」、「身体的健康度」、「精神的健康度」、「社会的成熟度」、「情緒不安定性」、「衝迫性・暴発性」、「自己中心性」、「神経質・過敏性」、「虚飾性」、「運転マナー」といった項目においてそれぞれ3段階、もしくは5段階で評価されるという内容になっています。
自分の弱点を意識することで安全運転につなげるための検査
全体の印象としてはIQテストのような問題と心理テストで見かけるような内容が混ざったもの。注意力や判断力といった運動機能については同じような形や数字の中から一定の条件を満たすものや同じグループをピックアップするといった試験をイメージしてもらうと想像できるかもしれません。また、試験項目ごとに制限時間があるのですが、ゆっくりやっていると最後まで回答できないことになるくらい短いものです。素早く答える必要があります。
結果としてすべてがA判定であれば文句なしに運転適性があるといえるのでしょうが、誰もがそうはいかないでしょう。だからといってD判定やE判定があるから運転するな、というものではありません。あくまでも、自分の弱点を意識することで、安全運転につなげるための検査です。

今回、齢50にして運転適性検査を受けたのですが、おそらく10代であろう一緒に受けた若者はマークシート式の試験慣れをしているのか、スラスラと回答用紙に書き込んでいる様子がうかがえます。一方、こちらは久しぶりのマークシートを目の前に、最初はドギマギしているうちに制限時間が終わってしまい、ある項目については最後まで回答できないということもありました。慣れの問題もあるでしょうが、老化もあるでしょう。正直、検査結果がどうこうという以前の問題として、10代の若者と机を並べて、試験を受けたときのスピードの違いに、年齢によるパフォーマンスダウンを実感させられました。
運転適性の結果に加え、老化を実感することでも安全運転につなげることができれば、この検査を受けた意味があるというものです。現実的に、安全運転というのは運転技術が生み出すものではなく、ドライバーの心構えによる部分が大きく影響します。その基本となる自分自身の特性を理解することが重要というのが、運転適性検査の目的です。意味がないと思うのではなく、意味があるように活用すべきものといえるでしょう。